« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »

2006年7月31日 (月)

ミッドランドとの距離

 ミッドランドがドイツGP決勝で,禁止されている「フレキシブルウイング」を使用していたとして失格処分を受けた。リアウイングが過度のフレキシブル構造になっていると,レース終了後の車両車検で判定されたためである。これによりミッドランドのクリスチャン・アルバースとティアゴ・モンテイロは,それぞれ13位・14位のポジションを失うこととなった。ちなみに今シーズン,フレキシブルウイング使用に関して,レースリザルトの除外を言い渡されたのは今回が初めてのケースとなるが,ミッドランドはこの裁定に対して控訴しないことを発表している。

 フレキシブルウイングについては,シーズン序盤戦にフェラーリやBMWザウバーの使用していたものについて「高速走行時にたわみを発生させ最高速度を上げている」と他チームからクレームが出たにより,その存在がクローズアップされた。実際にどこまでが許容範囲でどこからがフレキシブルなのかの判定は微妙だが,レギュレーションのグレーゾーンをついて使用していたチームは少なくなかった。そのためFIAはこのウイングについての規定を厳密にし,レース後の車両車検を行っていた。これに今回ミッドランドが引っかかってしまったわけである。

 以前からたびたび言われてきたことだが,ミッドランドの周辺からはレースに対する情熱のようなものが感じられない。オーナーのアレックス・シュナイダー氏がチームを投資目的として所有しているのは明らかであるし,コリン・コレスチーム代表の運営もお世辞にも上手とは言えない。若手育成プログラムとして昨シーズンはユーロF3に参戦するもテールエンダーの常連。挙げ句の果てに今シーズンはDTMに2年落ちのアウディで参戦するなど,F1以外のカテゴリーでも怪しげな雰囲気を十二分に発揮している。SAF1が純然たるF1プライベーターとして,パドックで温かく見守られていることとは対照的である。

 そのSAF1はドイツGPからニューマシンSA06を新規投入したことで,ライバルチームであるミッドランドとの距離を着実に縮めてきている。ミッドランドとしてもサスペンションテストを繰り返すなどパフォーマンスアップには余念がなかったが,今回の失格騒動はミッドランドの焦りが現れたものとして受け止められてしまうだろう。とはいえ予選はともかく,レースペースではまだミッドランドの方が一枚上手。信頼性については言わずもがなである。ミッドランドとの距離をどれだけ早く縮められるか。どん底から這い上がるSAF1を見守っていきたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月30日 (日)

王者アロンソの焦り

 普段ならタイムチェックだけして予選をリアルタイムで見ることはないが,SA06の初戦ということもあり,久しぶりに予選をじっくりと見た。しかも地上波で・・・。PPは今季初となるマクラーレンのキミ・ライコネン。2-3番手にフェラーリのミハエル・シューマッハとフェリペ・マッサの2台が続いた。ライコネンはQ2までのタイムを考えると,燃料搭載量がフェラーリに比べ少なめと思われる。そう考えるとトップ3の順位は妥当なのだが,驚いたのは4-6番手にホンダの2台がつけていることだ。フリー走行からのタイムも安定しており,いよいよ最新鋭の風洞から生み出された空力パッケージが効果を発揮し始めたと考えられる。

 好調なホンダとは対照的に,いまひとつ速さが見られないのがルノーである。ジャンカルロ・フィジケラは5番手,フェルナンド・アロンソに至っては今季最悪の7番手に沈んだ。シューマッハに連勝を許しているルノーにとっては,「敵地」ドイツでその勢いを止めたいところだが,逆に自分たちが失速を始めている。ミシュランの持ち込んだタイヤのスペックが,今ひとつマッチしないことも影響しているだろうが,同じミシュラン勢のホンダが好調なことを考えると言い訳にはならない。むしろ,今回から禁止されたマス・ダンパーの影響が大きいと考えるほうが自然だろう。

 Q3中盤,ピットアウトしたアロンソの前にシューマッハのマシンが前に割って入る,レースさながらのシーンが国際映像に映し出された。コックピットで拳を振り上げ,シューマッハに対して怒りをあらわにするアロンソ。とは言えピットアウトのタイミングはシューマッハ自身が決めたのではなく,ロリーポップマンの指示に従っただけである。アロンソは抗議すると息巻いていたようだが,そうしたところでレーススチュワードは問題にもしないだろう。それよりも気になるのが,端で見ていてもはっきりとわかるアロンソの焦りだ。前半戦に見せた余裕はなく,追われる者の苦しさがひしひしと感じられる。

 最後に注目のSAF1だが,佐藤琢磨がミッドランドの間に割って入る17番手。午前中のフリー走行でコースアウトを喫しマシンを大破させた山本左近は,SA05に乗り換え21番手となっている。SA05の使用は不測の事態であったが,チームにとっては思わぬ「比較テスト」となったようで,チーム首脳陣は05と06の差に興味津々。2台の差は約3秒強となっており,SA06のポテンシャルアップが確認された。一方その原因を作った左近だが,コースアウトについても「限界を試したら飛び出しちゃった」と涼しい顔。経験の少なさから今回のようなミスもあるだろうが,スムーズな走りは今後の可能性を期待させる。ミッドランドに追いついてご機嫌の琢磨もうかうかしてはいられない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月29日 (土)

スーパーアグリの技術力

 ドイツGPに待望の新車SA06を投入したSAF1について,思わぬニュースが話題となった。FIAが赤外線を使ったタイヤウォーマーを禁止する措置をとったのだが,これを使用しているのが全チーム中SAF1のみということなのだ。タイヤの温度管理は走り始めのグリップを得るためにも重要課題のひとつであり,各チームとも様々な工夫を施している。走行直前までタイヤの温度を高めるために使用されるタイヤウォーマーは,通常電気式のものが主流であるが,SAF1が使用していたものは電動ローラーと赤外線ライトを組み合わせたもので,これがレギュレーション違反となったようだ。

 今回のタイヤウォーマーの一件は,SAF1の技術力を物語るエピソードとして取り上げられている。SAF1の技術陣はチーフテクニカルオフィサーのマーク・プレストンを筆頭に,旧アロウズのスタッフが大多数を占めている。開幕まで時間のない中でアロウズのA23を大改造し,SA05をバーレーンのグリッドに並べたのは彼らの技術力の高さを証明していた。F1経験者が少なく開幕戦ではぎこちなかったメカニックの動きも,今では急なトラブルにも迅速に対処できるまでになっている。そういった意味では,急増の寄せ集めチームと見られていたSAF1であるが,現在は高い技術力と情熱を併せ持った「クラブマン・チーム」として成長している。

 その技術陣の意欲作SA06であるが,いきなり上位チームと渡り合うだけの実力はまだない。SA05の発展型とは言え,車体バランスも空力性能も大きく異なるSA06のセットアップは容易ではない。今回登場した「SA06A」は,リアサスペンションは新設計されたものの,フロントサスペンションは従来のものの改良型である。前後のサスペンションの世代が大きく異なる特異なマシンあれば,そのセットアップも必然的に難しいものとなる。フルコンプリートカーである「SA06B」が登場するトルコGPまでは,予選・決勝を通してミッドランドと対等の走りが出来るようになるのが現実的な目標となるだろう。

 昨日行われたフリー走行では多少のトラブルも出たものの,ミッドランドのティアゴ・モンテイロから0.5秒落ちのペースで周回を重ねていた。チームとしてもシステムチェックしただけのSA06の慣らしを行っている状態であり,まずは順調な滑り出しと言っていいだろう。鈴木亜久里代表が「真の開幕戦」と語ったドイツGPの舞台であるホッケンハイムリンクは,亜久里代表が'95年にリジェ・無限で最後の入賞(6位)を果たしたサーキットでもある。その地で待望のグランプリデビューを果たした山本左近も,フリー走行1回目では安定感のある走りを見せている。この後行われるフリー走行3回目,そして公式予選でSA06の現在位置が確かめられるであろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月28日 (金)

ウィリアムズ・トヨタの不安

 トヨタが来シーズンからウィリアムズにエンジンを供給することが発表された。供給期間は3年間,トヨタワークスと同一スペックのエンジンが供給される。お金には厳しいウィリアムズのこと,一時はレクサスのバッジネームをつけることで無償供給を勝ち取ったとも噂されていたが,結局のところ年間1000万ユーロ程度の有償供給に落ち着いたようである。これにより今シーズントヨタエンジンを使用していたミッドランドは,コスワースエンジンを使用することになると考えられている。

 エンジンの性能は,成績を左右する大きなファクターであることは言うまでもない。ドライバー・シャシー・エンジンがバランスよくかみ合ったとき,好成績を上げられるチャンスがやってくる。ご多分に漏れず,ウィリアムズもエンジンにより成績の浮き沈みがはっきりとしていたチームである。ホンダ・ルノー・BMWなどのワークスエンジンを獲得したときは高い戦闘力を発揮しているが,ワークスを失うとジャッド・メカクローム(スーパーテック)・コスワースなどのカスタマーエンジンでしのぎ,上位浮上のチャンスをうかがってきた。

 そして今回のトヨタエンジン獲得である。自動車メーカーがすべて自チーム(メルセデスはマクラーレンに資本提携)を所有している現在,ワークス供給のエンジンが期待できるわけもない。今回ウィリアムズに供給されるエンジンもワークスと同性能とは言え,カスタマーエンジンであることは変わりない。今シーズンフェラーリエンジンを使用しているレッドブルが,性能調整をされたコスワースV10を搭載するトロ・ロッソとたいして変わらないのもある意味当然である。レッドブルは最新スペックを供給しないフェラーリエンジンを捨て,ルノーエンジンを獲得しようとしているのは周知の事実である。

 ここで不安なのが,来シーズンのウィリアムズ・トヨタで,同じことが起きないかということである。ウィリアムズは高い技術力と抜群のチームワークで長くF1界をリードしてきたトップチームであった。フランク・ウィリアムズ&パトリック・ヘッド&エイドリアン・ニューウィーががっちりとスクラムを組んでいた「常勝」ウィリアムズであれば問題ないが,ここ最近のウィリアムズはチームの成績不振を責任転嫁する傾向がはっきりと見られ,技術力だけでなく統率力の低下も目立っている。BMWと決別したことも,そのチーム力低下を認められない責任転嫁の体質が生み出してしまったものである。もう一度その体質を「カイゼン」し,来シーズンは持ち前の技術力でトヨタワークスを喰ってくれることを期待したい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月26日 (水)

サードドライバーの明暗

 今週末のドイツGPにSAF1のセカンドドライバーとして山本左近がデビューする。イギリスGPから4戦に渡ってサードドライバーを務めてきた左近が,いよいよ満を持して新車「SA06」と共にグランプリデビューを果たす。もちろん我々日本人ファンにとってはうれしい話だが,井出有治降板以降セカンドドライバーを務めてきたフランク・モンタニーはグランプリの表舞台から姿を消すことになった。

 モンタニーがSAF1に与えた影響は計り知れない。F1経験の少ないSAF1のスタッフにとって,ルノーで豊富なテスト経験を持つモンタニーはドライバー以上の存在だった。「老兵」SA05の引退とともにレギュラーの座を明け渡すことになったが,今後は再びサードドライバーとしてチームに残留することになる。豊富な経験を持つ佐藤琢磨は問題ないとしても,左近は開発ドライバーとしての経験はほとんどない。チームとして今後SA06の開発継続を考えれば,モンタニーの残留は当然の結論である。

 サードドライバーのポジションは大きく分けて二つに分かれる。レギュラードライバー昇格を目指し,F1マシンとコースに慣れることを主たる目的としている者と,開発ドライバーとして様々な裏方の役割を担うことを主たる目的としている者である。前者はルノーのヘイッキ・コバライネンやBMWザウバーのロバート・クビカなどであり,後者にはフェラーリのルカ・バドエルやトヨタのオリビエ・パニスなどが挙げられるであろう。この中で,後者としてF1人生を閉じるのではないかと危惧されていたペドロ・デ・ラ・ロサは,フランスGPからレギュラードライバーに昇格。ドイツGP以降も継続参戦する見込みである。一方でウィリアムズのアレクサンダー・ブルツは,その能力の高さを認められながらもレギュラー昇格の道は未だ拓けていない。

 来シーズンから金曜日のサードカー走行が廃止される。サードドライバーにとってはその存在をアピールする絶好のチャンスであったが,それも今シーズン限りとなってしまった。これによりサード&テストドライバーにとっては,レギュラードライバーへの道は一層厳しくなったと言える。実力だけでは手に入れられないのがF1のシート。速さはあるもののチャンスに恵まれず涙を飲んだドライバーは数知れない。その中で前回のデ・ラ・ロサの復帰や今回の左近の昇格などは,イレギュラーな要素が多分に関わって実現したものである。「運も実力のうち」という言葉があるが,数少ないチャンスを確実にとらえられるかどうかもドライバーの技量なのだ。日本での魅力的なポジションを捨て,F1の世界に身を投じた左近のデビュー戦をじっくりと見つめてみたい。    

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月25日 (火)

ディレクシブはどこへ行く

 マクラーレンのジュニアチームとしてF1参戦が噂されていたディレクシブがスポンサートラブルを起こしているらしい。昨シーズンからともにGP2に参戦してきたDPR(デイビット・プライス・レーシング)への支援を打ち切ったという。ディレクシブは昨シーズン後半からBCNコンペティションから参戦する吉本大樹への支援も行っていた。しかし,今月13日にマネージメント体制の変更がリリースされ,吉本はフランスGPからマネージメントをディレクシブからEMSマネージメントに変更していた。

 レースクイーン出身で語学も堪能,才色兼備の芳賀美里代表が率いるディレクシブは,その若さとバイタリティーを武器に事業を拡大してきた。2005年1月に設立されたディレクシブ・モータースポーツはGP2を皮切りに次々と勢力を拡大,マネージメントドライバーを増やしてきた。今シーズンからは日本国内にもその手を広げ,フォーミュラ・ニッポン,スーパーGTとその勢いはとどまることを知らなかった。特に12番目の参戦枠をめぐる争いには,マクラーレンとジョイントするなど積極的な姿勢を見せた。

 しかし,モータースポーツに対しての経験の浅いディレクシブは,デビット・リチャーズ率いるプロドライブに参戦枠を奪われてしまう。これによりF1参戦を最終目標にしてきたディレクシブは,ヨーロッパでの活動意義を見いだせなくなっていた。これが今回のGP2撤退の引き金になったことは容易に想像できる。先日の吉本のマネージメント契約は「双方合意の上で」とのことだったが,今回のDPRとのジョイント解消は,どうやらそうスムーズは話ではなさそうである。DPRとのジョイント体制が終了するということは,国内の活動にも影響を及ぼすのではないだろうか。ディレクシブは今シーズンからフォーミュラニッポンにも密山祥吾を擁し参戦しているが,ここでもGP2と同様にDPRとジョイントしている。今シーズンの継続参戦は問題ないであろうが,これについても今後何らかの発表がなされるだろう。

 ディレクシブがモータースポーツの世界に現れてからまだ1年半,謎の多い企業としてその実態が幾度となく話題となっていたが,今回の騒動でひとまずヨーロッパからは撤退することになるだろう。幸い国内カテゴリーではスーパーGTで順調な成績を収めており,今後は国内中心に活動を展開していくことになると考えられる。最大の目標であったF1進出の夢が途絶えた今,ディレクシブの行方がどうなるのかしばらく目が離せない。いっそのことSAF1のスポンサーにでもなってくれれば,ディレクシブのF1進出とSAF1のスポンサーの獲得という両者の課題が双方円満に解決するのだが・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月21日 (金)

SA06発進!!

 待ちに待ったSAF1のニューマシン「SA06」が走り出した。場所はチームのファクトリーから30分と近い,シルバーストーンの1.2km南コース。遅れに遅れた開発の裏側には,想像以上のストレスがあったことは言うまでもない。姿を現したそのマシンを見てみると,フロントセクションはまだ開発途中ということもあり,従来通りのフロントノーズが装着されているため第一印象は「SA05」とさほど変わらないように見える。しかし,リアセクションは大きく印象を変え,現代的なマシンとして生まれ変わっている。サイドポットはえぐられ,ラジエーターインテークもより小型化されている。ギアボックスの新造に伴いエンジンマウント位置も低下,サイドポット後方は大きく絞り込まれた。チムニーダクト,タイヤフェアリング,リアウイング翼端板も大きく形を変え,長い時間風洞実験を行ったことを物語っている。

 その一方で,時間的・資金的に妥協をせざるを得なかった部分も多く見て取れる。モノコックがSA05のデザインを引き継いでいるのはもちろん,インダクションポットやサイドプロテクターのデザインもほぼ同じものとなっている。注目されていたフロントサスペンションの取り付け方法も,マーク・プレストン/チーフテクニカルオフィサーが語っていたゼロキールではなく(ルノーと同じVキールになるとの話もあったが)従来通りのツインキールとなっている。わずかにキールが短くなったことと,アッパーアームの形状が変化した点がフロントセクションでは外観上の変更点となっている。

 フロントセクションの投入はトルコGPになる予定なので,その時点で若干の変更があるかもしれない。とは言えサスペンションのマウント方法が大きく変更されるとは考えにくく,結局のところ「SA05改」のフロント部分と最新構造を持つリア部分の「SA06」で構成されるハイブリットカーという位置づけである。現在のマシンは「SA06A」と呼ばれるようで,トルコGPに登場するフルコンプリートパッケージのマシンが「SA06B」となる。ドイツ&ハンガリーGPではマシンバランスのとれない状態で戦うことになるが,それとて今までの苦しい戦いと比べれば格段に戦闘力が上がるはずである。

 ドイツGPですぐに結果を期待することは難しいだろうが,純粋な「速さ」の部分では期待が持てる。チーム首脳陣は,1周あたり約2秒のタイムアップが期待できるとのコメントしている。現在間近のライバルであるミッドランドとは1~1.5秒の差があるが,これは新車投入によって逆転できる差と考えられている。そのミッドランドも,へレステストに参加し,新構造のサスペンションテストを行うなど開発に余念がない。本来であればとっくに追いつかれているはずだったミッドランドにとっても,いよいよ尻に火がついたというところだろうか。

 それにしてもSAF1のスポンサー獲得は急務だ。カラーリングは赤主体の新デザインになっても,スポンサーステッカーは相変わらず小さく少ない。テールエンダーとして国際映像にも映らないようなチームに,多額の投資をする企業が現れるはずもないが,新車投入によって周囲の期待はふくらむばかりである。ミッドランドが伸び悩む中1ポイントを獲得することが出来れば,FOCA便による輸送費の負担もなくなり資金的にも大きく前進することになる。今シーズンはともかく,来シーズンの活動するだけの最低限の資金を調達するためにも,残り8戦で「結果」を出すことが求められる。チームの士気は依然高いと伝えられている。まずはドイツGPでの走りを期待したい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月19日 (水)

トヨタの躍進とホンダの苦悩

 フランスGPが終わり,各チームはへレステストを行っている。先日行われたフランスGPでは,ファン-パブロ・モントーヤの電撃交代劇で急遽マクラーレンのレギュラーシートに座ったペドロ・デ・ラ・ロサがいきなりの7位入賞。ファステストタイムもフェラーリ勢2台に次ぐ3位,ミシュラン勢の中では最速をマークしその存在を大いにアピールした。優勝はアメリカGPに続きM・シューマッハ,戦略を2ストップに変更しフェリペ・マッサを抜き去ったルノーのフェルナンド・アロンソが2位と,チャンピオンシップ争いもいよいよこの2人に絞られた感がある。コンストラクターズ争いも,ルノーとフェラーリの差が21ポイント差までつまっており,セカンドドライバーのポイントが勝敗に大きく関わってくるだろう。

 ここに来て速さの目立ってきているのがトヨタである。4-5位からスタートした決勝では,ヤルノ・トゥルーリが4位走行中トラブルで惜しくもリタイアしたものの,ラルフ・シューマッハがルノー1台,マクラーレン2台を押さえ込み4位入賞を果たした。一発の速さはあるもののレースラップが遅いかつてのトヨタの姿はそこにはなかった。今シーズン序盤を戦ったTF106が昨年度終盤に投入したTF105Bの改良型であったのに対し,モナコGPから投入したTF106Bは,フロントサスペンションの改良,センターキールを排除,ボディー剛性の向上を図ったことにより,ここにきてその本来の性能を発揮してきている。

 対照的だったのがホンダである。予選・決勝を通じてのスピード不足はもちろんだが,チームから明るい雰囲気が伝わってこない。ドライバーや首脳陣から出るコメントも歯切れの悪いものばかりで,オールホンダになったことによる一体感がまるで伝わってこない。トヨタが組織の大幅な改革を行い,テクニカル・ディレクターの.マイク・ガスコインを更迭したように,ホンダもジェフ・ウィリスの「自宅待機」を命じてはみたものの,もちろんそれで全て解決されるものでもない。アメリカでは速度記録挑戦『ボンネビル400』を行っているが,そんなことに使う資金と時間があったら,現行マシンを少しでも早くしろというのが大方の意見だろう。

 佐藤琢磨が1周リタイア,フランク・モンタニーが16位完走という結果に終わったSAF1ではあったが,いよいよ待望のニューマシン「SA06」がシェイクダウンを向かえる。チーム関係者の話からニューマシンのおおよその概要は伝えられているのだが,その姿は今まで公開されたことはなかった。ところが今週月曜日にフランスのあるサイトにSA06と思われる画像がアップされ話題を呼んだ。この「SA06」,カラーリングは大幅に変更されているものの,細身のノーズコーンに続くモノコックは明らかにSA05の流用と見て取れる。インダクションポットやサイドポット上部のなで肩もSA05とほぼ同様であり,ノーズコーンに至ってはA23のもののようにも見える。サイドポットのデザインはV8用に縮小されたようにも見えるが,真贋の程は定かではない。

 いずれにせよSA06は,今日明日中にもシルバーストーンの南コースでシェイクダウンされる予定である。ドイツGPまでにどれだけの距離を走行できるかは未定だが,SA05同様レース=テストでは新車を完成させた意味がない。ホンダから大幅な技術協力を得たとは言え,空力に関してはチーム独自のアプローチをしているとも伝えられている。速さを取り戻しつつあるトヨタと,泥沼にはまっているホンダ。ニューマシンを手にしたSAF1の未来はどちらになるのか,全ては2週間後,ドイツGPの舞台ホッケンハイムリンクで明らかになるであろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月16日 (日)

フランスGP予選!!

 北米2連戦を終えF1サーカスは,再びヨーロッパへと戻ってきた。公式予選を終え,ポールポジションはフェラーリのミハエル・シューマッハ。僅差で僚友フェリペ・マッサが続き,地元ルノーのフェルナンド・アロンソが3番手につけている。フリー走行3回目の終了間際,ピットでマシンから黒煙の上がったシューマッハだったが,メカニックの懸命の修復作業に答え,見事2戦連続のPP獲得となった。一方で3位に終わったアロンソは「3位は(5位だったアメリカGPより)悪くない」と強気のコメントを残してはいるが,ルノーのお膝元でPP獲得を逃したことには悔しさも残るだろう。

 この公式予選で最も驚きを禁じ得ないのが,ホンダの低迷でる。ルーベンス・バリチェロは何とかQ2に進出できたものの14番手。ジェンソン・バトンに至ってはミッドランド・トロロッソにも先行される19番手というさんざんなものである。彼の後ろには,ミッドランドのティアゴ・モンテイロとSAF1の2台がいるだけである。フリー走行では6番手と一見順調な仕上がりを見せていたホンダだったが,蓋を開けてみれば今季最悪のグリッドポジション。スポーティング・ディレクターのジル・ド・フェランも「上位と渡り合うだけの速さがない」とペースの遅さを認め,「何とかポイントを獲得したい」と弱気な発言をしている。

 一方のトヨタは上昇気流に乗っている。予選はヤルノ・トゥルーリが4番手,ラルフ・シューマッハが5番手とマクラーレンを上回り,今季ベストグリッドを得ている。今季序盤の低迷から組織の大幅な改革を断行したトヨタだったが,北米ラウンドでトゥルーリが連続入賞を果たすなど,ここに来て結果を出し始めてきている。タイヤに目を向けてみると,上位5台中BS勢が4台。カナダGPで通算100勝を達成したミシュランの地元で大暴れをしている。

 さてSAF1はSA05にとっても,フランク・モンタニーにとっても最後のGPということになる。2回目のフリー走行では佐藤琢磨がモンタニー・山本左近を大きく引き離し23番手と健闘したが,フリー走行3回目で琢磨のマシンにトラブルが起こったこともありモンタニーが琢磨のタイムをを上回った。そして向かえた公式予選,結果今シーズン初めて,モンタニーが琢磨を上回るタイムをたたき出し21番手を獲得している。一方の琢磨は,フリー走行のトラブルがたたったのか,モンタニーに遅れること0.2差の22番手に終わる。チームからの発表によると「異なる戦略をとった」と言うことなので,これが予選結果にも反映されているのかもしれない。

 フランスGPでのモンタニーの続投は正しい選択であったといえよう。いくらSAF1がジャパンマーケットを意識したチームであるとはいえ,F1は世界各地を転戦するグローバルなスポーツである。地元GPを前に唯一のフランス人ドライバーがシートを失うことになれば,内外からの反発は必至であっただろう。この決定にはバーニー・エクレストンの意向が多く含まれていたことは容易に想像できる。彼にとってしてみれば日本のメディアが作り上げてしまった「オールジャパン」を崩壊させることなど造作もないことである。ドイツGPから山本左近のレギュラードライバー昇格が決定してはいるが,左近が十分な速さを示せないと井出有治の二の舞になってしまう。フランスGP後にはSA06のシェイクダウンも行われるであろうから,SAF1には少しでも多くの時間をテストに費やしてもらいたいものである。とは言えそれを行うだけの十分な資金が残されているかどうか・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月11日 (火)

移籍のタイミング

 マクラーレンのファン-パブロ・モントーヤが,NASCARシリーズへ転向することとなった。来年度フェルナンド・アロンソがマクラーレンに移籍してくることを考えると,キミ・ライコネンはともかくモントーヤの居場所がないのは誰の目から見ても明らかだった。NASCARへの転向はBMWザウバーのジャック・ビルヌーブが噂さていたが,正直モントーヤの選択は意外だった。とは言え移籍先はCARTシリーズでチャンピオンをともに勝ち取ったチップ・ガナッシ,マシンはメルセデスとは姉妹関係にあるクライスラーと,なるほどと頷けるラインナップではある。レースと言うよりもよりエンターテイメント色の強いNASCARで,モントーヤ(あるいはビルヌーブ)がすぐに活躍できるかは不明瞭だが,アメリカでは最大の観客動員数と視聴率を誇るこのシリーズへの注目度が上がることは間違いないだろう。

 昔からチームの移籍やシリーズの転向は,ドライバー人生を左右する大きな分岐点となってきた。今をときめくチャンピオンであるアロンソも,フラビオ・ブリアトーレの目に留まらずルノーに移籍移籍することがなければ,今のポジションにたどり着けたかどうかはわからない。'91年ベルギーGPでジョーダン・フォードから衝撃的なデビューを果たしたミハエル・シューマッハも,ベネトン・フォード(現ルノー)に引き抜かれることがなければ,運命は変わっていたかもしれない。

 '90年のオフシーズン,日本GPでベネトン・フォードのネルソン・ピケ&ロベルト・モレノに続く3位表彰台を獲得した鈴木亜久里は人生の分岐点に立っていた。自分をサポートしてきてくれたエスポとともにラルースに残留するのか。それとも,モレノに代わりベネトンのセカンドドライバーとして契約するのか。その動向が注目されたが,結果的には亜久里はラルース残留を選択した。しかし,バブル崩壊によりエスポはスポンサーを撤退。ランボルギーニエンジンを失ったラルースは大幅な戦闘力の低下を余儀なくされ,翌91年シーズンは予選通過すれすれの苦しい戦いを強いられることになる。結果この年亜久里のポイントは開幕戦アメリカGPで獲得した1ポイントのみ。その後フットワーク・リジェを渡り歩くも,満足な成績を残せないまま'95年の日本GPで,そのF1ドライバー人生を終えることになる。

 '94年のオフシーズンにも,日本人ドライバーによる人生の分岐点があった。その年F1で3シーズン目の片山右京は,ティレル・ヤマハを駆り勢いのある走りを見せていた。この年の最高成績は5位だったが,ドイツGPでは一時3位を走行するなど,徐々にその才能を開花させつつあった。それに目を付けたのが,またもブリアトーレであった。ブリアトーレは右京の前に契約書とペンを置き,シューマッハの僚友としての契約を迫った。ベネトンは翌95年にルノーエンジンの搭載が決定しており,戦闘力アップは確実であった。現に翌年シューマッハは,2年連続のドライバーズタイトルを獲得している。しかし,右京がベネトン移籍を選ぶことはなかった。様々なしがらみよりその選択肢は封印されてしまったのだが,運命の分かれ道だったのは間違いない。

 今シーズンSAF1で苦戦を強いられている佐藤琢磨も,もしかしたら人生の分岐点のを通り過ぎたのかもしれない。とはいえ彼の場合は,ステップアップを望むべくもない新興チームへの移籍を決断したわけで,上記の2人とは条件が異なる。ここまで非力なマシンで時折光る走りをしてはいるが,もう一度F1の表舞台に立つには周囲をあっと驚かせる走りをする必要があるだろう。全ては新車SA06の出来にかかっている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月10日 (月)

モンタニー続投の意味

 SAF1は第11戦フランスGPで,引き続きフランク・モンタニーを起用するようだ。まだチームからの正式発表はないものの,すでに決定事項のようである。何しろモンタニーは,2004年にトヨタで走ったオリビエ・パニス以来のフランス人ドライバーでもあるし,ルノーテストドライバーからの下積みを重ねた苦労人でもある。そのモンタニーの地元GP起用は,本人にとってもフランス人ファンにとってもグッドニュースだろう。

 モンタニーをSAF1に推薦したのは,マネージング・ディレクターのダニエレ・オーデットである。オーデットはルノー時代にモンタニーと知り合い,その縁で彼を新興SAF1に紹介。バーレーン&マレーシアGPにはサードドライバーとしてチームに帯同させていた。オーストラリア&サンマリノGPでは一時的にチームを離れるが,井出有治の降板もあってヨーロッパGPで念願のF1デビューを果たした。井出の降板劇があまりにも政治的だったことは今更言うまでもないが,その裏にF1で唯一のフランス人ドライバーであるモンタニーを走らせたいバーニー・エクレストンの意図があったのは間違いないだろう。

  ルノーというトップチームでの豊富なテスト経験が買われ,セカンドドライバーの座を射止めたモンタニー。彼のSA05に対する的確なフィードバックは,まだ駆け出しのエンジニアやメカニックにとっても有益なものであった。残念ながらマシントラブルやアクシデントの影響で,レースでは実力通りの走りはできていないがその能力を疑う者は少ない。それでも尚モンタニーが「代役」として数戦ごとの契約を結んでいるのは,SAF1の「チームコンセプト」に対する鈴木亜久里代表と周囲の見方がずれているからに他ならない。

 そもそもSAF1は「オールジャパン」をコンセプトに誕生したチームではない。昨年11月1日のF1参戦記者会見で亜久里代表が口にした,「チームとしてもう一度表彰台に日の丸を揚げたい」という言葉が一人歩きしたものである。2人のドライバーを日本人にしたのも結果であって,最初からそのつもりであったわけではないと,亜久里代表も語っている。しかし,周囲はそうは見なかった。チーム・エンジン・タイヤ・ドライバー。全てが日本製の「オールジャパン」チームが生まれたと,新聞やテレビ等各メディアがあちらこちらで騒ぎたてた。いくら代表が否定しようが,一度できあがってしまったイメージはなかなか壊せるものではない。事実,先日のアメリカGP直前にフジTV系列で放送されたSAF1の特番でも,「チームのコンセプトはオールジャパン」と,堂々とナレーションがなされていた・・・。

 なぜモンタニーの契約が数戦ごとなのか?なぜその契約がなかなか発表されないのか?その理由は明らかである。「オールジャパン」を望む日本サイドのスポンサーと,フランス人ドライバーを起用し続けてほしいF1界。その二つの狭間で亜久里代表が苦悩しているからである。新車SA06が1戦遅れてドイツGPからの投入となることが発表されたアメリカGPの時点で,亜久里代表は「ドライバーは決まっている。でも言わない。」と語っていた。大方の予想は「フランスGPまでモンタニーを起用,新車投入に合わせて山本左近をレギュラードライバーに昇格させる。」というものである。奇しくも,金曜のサードカーが来シーズンから廃止されるというニュースもある。ドイツGP以降数戦はサードカーを走らせないことが決定しているSAF1にとっては,全てのタイミングがそろうのがドイツGPということになるのだろう。しかし,メディアの存在は諸刃の剣である。うまく利用しないことには,そこに明るい未来など待っていないのだから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 7日 (金)

井出有治の将来は?

 今シーズン序盤4戦をSAF1からエントリーしていた井出有治のフォーミュラ・ニッポン復帰が決まった。チームは一昨年度のチャンピオンチーム「ドコモダンディライアン」。平中克幸にかわって第4戦からの復帰となる。井出はサンマリノの一件でスーパーライセンスを剥奪されており,レギュラードライバーはもちろん,第3ドライバーとして金曜日に出走することも許されていない。プライベートテストであればF1マシンをドライブすることもできるであろうが,資金不足のSAF1ではそのテストもほとんど行われていない。

 こういった状況の中,井出がF1以外のカテゴリーで走ることは必然とされていた。井出本人も「とにかく走りたい」という思いを何度も口にしている。当初の井出は,F1の最終ステップアップカテゴリーとして不動の地位を築きあげつつある,GP2シリーズへの参集を目ざしていた。マシン特性はもちろんシリーズのレベル,何よりそのほとんどのレースがF1のサポートイベントとして同時開催されている。サーキットを事前に把握することができることは,F1復帰を考えた際最良の選択であることは間違いなかった。しかし,実際に井出が選んだのはフォーミュラ・ニッポンだった。いや,正確に言えば,それしか選択肢は残されていなかったのだ。

 チームとしてシーズン途中でドライバーを変更するということがいかに大変なことであるかは簡単に想像できる。レーシングドライバーは「マシンをいかに速く走らせるか?」という課題を,おのおのが独自の方法で解決している。セッティングの好みやタイヤの使い方,果ては周囲とのコミュニケーションまで。チームの大きなパーツであるドライバーが変更となれば,それだけでシーズンの行方を変えてしまうことになりかねない。いかに交渉相手が「元F1ドライバー」とはいえ,GP2の各チームが井出をようこそと歓迎することはなかったであろう。

 結果,井出はフォーミュラ・ニッポンに復帰することになったのだが,結論から言えば,これで井出のF1復帰は完全になくなったと見ていいだろう。もちろんSAF1とのつながりは残されているし,鈴木亜久里代表も今後もサポートしていくと明言している。しかし,F1復帰のための最低条件はフォーミュラ・ニッポンで他を圧倒する走りを見せ,チャンピオンを獲得することである。しかも,その最低条件ですら,井出にとってはとんでもなく高いハードルである。現在のフォーミュラ・ニッポンには,井出よりも若く勢いあるドライバーはごまんといる。その連中と正面切ってぶつかったところで,中途半端な井出のポジションでは出せる結果も出すことはできない。そしてそれでも一度貼られた「危険なドライバー」のレッテルは,なかなか剥がれないだろう。

 イギリスGPから第3ドライバーを務めている山本左近の走りを見ていると,いかに井出がその力量を発揮できなかったかが伺える。左近は初めてのコースにもかかわらず,レギュラードライバーである佐藤琢磨のコンマ数秒落ちのタイムを刻んでいる。もちろん井出と左近では条件が異なるのは言うまでもない。もともと井出はスロースターターであり,努力を重ねて経験をため込み,じわりじわりとステップアップを果たしてきた。それは今までの経歴を見れば明らかなことであろう。しかし,それは言い訳にしかならない。F1の世界にはスロースターターは必要とされない。F1はドライバーが「育つ」場所ではないのだ。そもそも,亜久里代表が井出をセカンドドライバーに選出したときから,この運命は決まっていたのかも知れない。情に流されず始めから左近を起用していれば・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 3日 (月)

チームリーダーに求められるもの

 大波乱のうちにミハエル・シューマッハの優勝で幕を閉じたアメリカGP。今シーズン最上位の18番手からスタートしたSAF1の佐藤琢磨にとっては,悔しさの残るレースとなってしまった。レースはスタートから混乱した。1・2コーナーで発生した多重クラッシュにより,7台ものマシンが一瞬にしてリタイヤに追いやられた。その中には琢磨のチームメイトであるフランク・モンタニーも含まれていた。モンタニーはこれで2戦連続1週目でのリタイア。アメリカGPまでのドライバー契約になってるモンタニーにとって,北米2連戦は非常に重要な戦いだったが,パフォーマンスを示す前に幕を閉じてしまった。

 多重クラッシュによりセーフティカーか入っていたレースは,7周目に再開となった。その直後,SAF1にとって思わず目を覆いたくなるような光景が待ち受けていた。1コーナーでミッドランドのティアゴ・モンテイロに並びかけた琢磨であったが,直後2台は接触。琢磨はそのまま1コーナー先のグラベルにマシンを止めリタイヤとなる。一方のモンテイロはパーツをまき散らしながら何とかレースを続行しようと試みるも,結局今シーズン2度目となるリタイアを喫している。レースはその後もサバイバルの様相を呈し,結局完走9台の荒れた展開となった。レースにタラレバは禁物だが,完走していればトップ10,あわよくばポイントも夢ではなかっただけに,琢磨の接触は悔やまれてならない。

 セーフティカー明けの接触というと,昨年のベルギーGPが記憶に新しい。レインコンディションの難しい状況の中,1コーナー「ラ・ソース」に飛び込みシューマッハと接触,両者その場でリタイアとなった。マシンを止めたシューマッハは琢磨に詰めより一言二言もの申した後,琢磨のヘルメットをポカリのはたいた姿が国際映像で映され物議を醸した。昨年の琢磨はこの接触だけでなく,レース序盤に多くの接触を引き起こしレースを棒に振っている。シーズン序盤に多くの不運に見舞われ,その遅れを取り返そうとプッシュしすぎた結果は,B・A・R解雇という最悪の形で結末を向かえることとなる。

 今回の接触も,昨年度同様「レーシングアクシデント」と片づけることができるだろう。しかし,昨年度と決定的に異なるのは,琢磨の置かれているポジションである。B・A・Rのセカンドドライバーとして,ちぐはぐの戦いを強いられていた昨年とは違い,現在は新興SAF1を牽引するファーストドライバー,いやそれ以上の精神的支柱とも言うべき存在である。だとすれば,あの場面でモンテイロに仕掛けることが果たして本当に適切な判断だったのか?

 琢磨のファイティングスピリッツあふれる走りは,多くのファンを魅了する。事実,マレーシアGPで一度追い抜かれたトロ・ロッソのビダントニオ・リウッツィを再びオーバーテイクしたシーンには,多くのファンを魅了した。今シーズンの琢磨は攻撃的なレースを随所で見せつつも,引くところは引いてチームに多くのデータをもたらしていた。しかし,今回の接触はチームリーダーとしての走りではない。以前の「カミカゼ琢磨」に戻ってしまったような走りであった。レースは結果が全てである。完走しなければ,次へとつながるものはない。それについては外野がとやかく言うまでもなく,琢磨自身が一番感じ取っているはずである。それでもなお今回のようなアクシデントを起こしてしまうのは,ドライバーとしての血が騒ぐのであろうか。それとも早く「レース」をしたい気持ちの表れなのか。いずれにせよ,このままではせっかく築き上げた信頼を損ねてしまうことになる。新車投入とともに,心を入れ替えて戦ってくれるとよいのだが・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 2日 (日)

アメリカGP予選!

 北米2連戦はその舞台をインディモータースピードウェイに場所を移した。このGPでちょうどシーズンの半分が終了することとなる。1周4.129kmのこのサーキットは,ハイスピードのオーバル部分と,テクニカルなインフィールドセクションが入り交じる。エンジン連続全開時間が23秒と,全コース中最長となることもあって,エンジンにかかる負担はカナダGPよりも更に増す。この2連戦を同一エンジンで戦わなければならないチーム・ドライバーにとっては,レース終盤は気が気でない時間になるだろう。公式予選が終わった段階で,SAF1の佐藤琢磨は18番手。今シーズン最上位のグリッドを手に入れることができた。2004年の3位表彰台が記憶に新しいところではあるが,当時とは状況は大きく異なる。しかし,最高のレースができたコースと琢磨の相性は変わらないようで,今週末の好調ぶりを裏付ける結果となっている。

 アメリカGP直前に,新車「SA06」の投入がドイツGPからになることが正式発表された。投入が遅れた原因は,搭載ギアボックス(ホンダ製だがアルミケーシングとも)のスペック決定に時間を要したことと,風洞設備の技術的なトラブルにより風洞実験に大きな遅れが出てしまったことが挙げられていた。これによりフランスGPでは,セカンドドライバーをフランク・モンタニーが,サードドライバーを山本左近が務めるのではないかと思われる。新車「SA06」は当面2台しか用意されないようであり,そうなればサードカーは走らせない方向であると鈴木亜久里代表は語っている。これは,サードドライバーの仕事が当分なくなることを意味する。そうなれば,以前から噂されている山本左近のレギュラードライバー昇格が,新車投入と合わせて考えられるのである。左近にとってドイツGPの舞台であるホッケンハイムリンクは,02-03シーズンにドイツ&ユーロF3で走った経験もあり,デビューにはもってこいのサーキットといえる。

 気になる新車「SA06」についてだが,ここに来て具体的な話が幾つか挙がってきている。モノコックについては,デザインこそA23ベースのものとなるが,あくまでデザインベースという意味であり,焼く行程からクラッシュテストまでしっかりと行ったものができあがるはずである。当然軽量化もされており,そのシェイプもだいぶ変化があるようで,一見A23ベースとはわからないものなのであろう。

 エンジンについては従来通りホンダV8となるが,新型ギアボックスに合わせ搭載位置が半インチ低くなる。現在はエンジンを持ち上げアロウズ製ギアボックスと無理矢理ドッキングさせており,その下は空洞になっているという。ミリ単位の構造になっている現代のF1マシンにおいて,半インチという単位はそれだけで大きくパフォーマンスを損なうものであることは言うまでもない。それに加え,高回転のエンジンに旧態依然としたギアボックスが音を上げているのは,周囲から見ても明らかなことであった。当然エンジンパワーが駆動輪に伝えられる際に,大きなロスがあったことも容易に想像できる。リアエンドがホンダ製で統一されることにより,バランスのよいマシンになるはずである。

 空力に関しては,ローラ社の風洞施設でムービングベルトが切れたことにより,5日間風洞実験ができなかったことが,新車完成を遅らせる原因となった。しかし,当初の予定を1ヶ月以上延ばしていたのも十分な風洞実験をするためであり,ボディ全体でダウンフォースを発生できる仕上がりになっているとの話である。後は何とかしてメインスポンサーを獲得しなければならないが・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »