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2006年8月31日 (木)

行き先不明者の現状

 来年のことを言うと鬼が笑うというが,わからないからこそあれこれ想像することは楽しいものである。例年ドライバーズシートはトップチームから決まっていくのだが,今年は必ずしもそうではなく動きが読みずらい。その一番の原因が,未だ定まっていない皇帝ミハエル・シューマッハの去就にあることは言うまでもない。結論を先送りしたいシューマッハだが,フェラーリ側はイタリアGPの決勝レース後に来年度の体制を発表するとしている。いつまでたってもの結論を出さないシューマッハに対し,タイムリミットを決めて決断を迫るつもりのようだ。

 その煽りを食って,行き先不明なのがキミ・ライコネンである。当初はルノー移籍,或いはマクラーレン残留と考えられたが,最近はすでにフェラーリと契約したとの見方が強くなっている。しかし仮にそうなったとしても,シューマッハとのジョイントNo.1がうまくいくとは思えない。シューマッハも現役続行の場合は,自分を確実にサポートするフェリペ・マッサを希望するだろうから,シューマッハ&ライコネンというゴールデンコンビは実現不可能である。それを裏付けるように,ライコネンはフェラーリと契約しつつも、シューマッハが現役続行した場合に備えて,ルノーとも契約しているとも伝えられている。さてさてライコネンはどこに行くのやら。

  予想が難しいのは何もドライバーズシートばかりではない。来季マーク・ウェバーの加入するレッドブルは,引き続きフェラーリエンジンを使用することを発表した。ウェバーの加入はルノーエンジンとセットだと考えていたので,これは完全に予想外だった。レッドブルは最新バージョンを供給しないフェラーリに嫌気がさし,その契約を兄弟チームのトロ・ロッソに肩代わりさせようとしていたが,文字通りそうは問屋が許さなかったようだ。一方のトロ・ロッソは,来季の搭載エンジンについて明言を避けている。最も可能性の高いのはコスワースV8だろうが,噂されたレッドブルに代わりルノーという可能性も残されている。

 下位チームに目を移すと,来季の空きシートはそれほど多くない。現時点で完全に空席なのは,ミッドランドとSAF1に一つずつあるだけである。ミッドランドのクリスチャン・アルバース残留は確実だが,チーム買収問題がはっきりしなければその方向性も見えない。SAF1も佐藤琢磨のチームメイトはしばらく決まりそうにない。最有力候補はホンダのアンソニー・デビットソンだろうが,チームコンセプト(くどいようだがオールジャパンではない)を考えると若手の日本人ドライバーにもチャンスはある。もちろん誰でもいいと言うわけでもなく,山本左近ですら結果の出ていない現在の成績のでは交替が目に見えている。このままでは左近も,行き先不明者の仲間入りをしてしまうぞ。


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2006年8月28日 (月)

初優勝で気になる今後

 F1という最高峰のカテゴリーに於いて優勝するとことは並大抵なことではない。ましてやそれが初優勝ともなれば,その喜びは格別のものだろう。フェラーリのフェリペ・マッサの初優勝で幕を閉じたトルコGPは,実に波乱に富んだ展開であった。レースにタラレバは禁物だが,セーフティーカーが出なければミハエル・シューマッハが優勝していた可能性は強い。しかし,その中でPPからスタートしたマッサは,終始安定したドライビングで,後続を寄せ付けることはなかった。レースペースもフェルナンド・アロンソやシューマッハと遜色のないものであり,実力でもぎ取った勝利と言えるだろう。

 キミ・ライコネンの後釜として,ザウバーからそのF1キャリアをスタートしたマッサだったが,昨シーズンまでは期待されつつも十分な成績を残してきたとは言えなかった。そのドライビングは,ツボにはまれば速いが荒削りであり,安定感を欠いていた。今シーズン,念願のフェラーリドライバーとなったが,前半戦はミスも多く,セカンドドライバーの役割を果たせていないと酷評されることも多かった。しかし,マシンに慣れた中盤以降は安定感を増し,イギリスGP以降は3回の表彰台を含む6連続入賞を果たす。そして今回,66戦目の初優勝を飾ることとなった。

 さて,これで注目されるのが,マッサの去就である。移籍候補のひとつであったトロ・ロッソは,来シーズンもビタントニオ・リウッツィとスコット・スピードのコンビを継続する方針を打ち出している。もちろんマッサとしては,フェラーリに残留することが最も望ましいのだが,シューマッハやライコネンの去就がはっきりしない現段階では何とも言えない。仮にシューマッハが現役続行,ライコネンがフェラーリに移籍となれば,マッサは他にシートを探すか,フェラーリのテストドライバーを務めるしかない。初優勝したドライバーでさえ翌シーズンのシートもままならないとは,F1は厳しい世界である。

 最後に蛇足だが,昨日の地上波中継について一言。フジテレビがF1人気を盛り上げようと,人気モデルを「F1サポーター」にしたまではまだ分かる。しかし,視聴者がわざわざ深夜まで起きて地上波中継を見ているのは,訳の分からない初心者トークを聞くためではなく,レースを見るためなのである。地上波はF1入門編,もっと見たければお金を払ってCSへどうぞという,フジテレビの姿勢が露骨に現れている。今シーズンはクオリティーの高かったアバンタイトルも,「いつから某ファッション誌と提携したの?」と思うくらい情けないものになってしまった。本当に視聴者を増やしたいのであれば,昼の時間帯に彼女たちを出演させて特別番組を放送すればいい。地上波とCSに視聴者を二極化したところで,F1人気が盛り上がることはないのだから。

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2006年8月27日 (日)

笑顔の裏に潜む牙

 人間は誰しも追い込まれると余裕をなくすものであり,追う者よりも追われる者のほうが心理的に厳しいものである。25歳の史上最年少チャンピオンは,今まさに追われる者の厳しさを痛感しているだろう。ましてや相手が100戦錬磨の老獪な皇帝となれば,そのプレッシャーは計り知れない。ここ数戦,フェルナンド・アロンソからは以前のような強気なコメントが聞かれないのは,じわじわと追いつめられる圧迫感を感じているからに他ならない。マス・ダンパーを奪われたルノーには以前のような速さがなく,予選でのフェラーリとのタイム差がそれを物語っている。

 一方でミハエル・シューマッハには余裕がある。予選では僚友のフェリペ・マッサが初のPPを獲得,自身は燃料を搭載しての2番手ということもあり,その表情からは笑顔が絶えない。予選終了後の会見でも,「マッサに助けてもらう前に自分が頑張らないとね」と,周囲を笑わせる余裕のコメントをしている。ドイツGPでも,マクラーレンのキミ・ライコネンが速さを取り戻してきたことについて,「速いライバルの出現は大歓迎だ」と笑顔で話していた。マッサやライコネン,前回優勝のジェンソン・バトンなど,アロンソのポイントを奪ってくれるライバルがいればいるほど,シューマッハにとっては好都合になってくる。彼の笑顔の下に,鋭い牙が見え隠れする。

 今回その好調フェラーリに向けられたのが,リアホイールカバーのレギュレーション違反疑惑である。しかし結論から言えば,それを決勝で使用したとしても,リザルト取り消しなどの重いペナルティが科せられる可能性はほとんどないだろう。今シーズンはフレキシブルウイングやBMWザウバーの「ツインタワー・ウイング」,さらに注目を集めたマス・ダンパーなどがレギュレーション違反のデバイスとして使用禁止を通達されている。しかし,そのいずれもが禁止通達のみであり,決定以前に使用していたチームに対するペナルティはなされていない。

 さて,SA06B投入で期待されたSAF1だったが,マシンの熟成不足は否めない。佐藤琢磨はトラブルを抱えながら力走するも,因縁のコーナー「ターン8」でコースアウトを喫し22番手。今回がデビュー3戦目となる山本左近は,初めてのコースにもかかわらず安定した走りを見せ21番手。タイム的にも琢磨と遜色ないレベルであり,F1ドライバーとして大きな資質となる適応力の高さをアピールしている。来季もSAF1のシートを得るためには,レギュラードライバーが確約されている今シーズンのうちに,しっかりとした結果を残すことが求められる。まだまともに周回していない決勝で,どれだけの走りが出来るか。本人も話している「3度目の正直」を見せてもらおう。

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2006年8月26日 (土)

驚異の新人登場で・・・

 年に数回「驚異の新人」と呼ばれるドライバーが登場するが,トルコGPでサードドライバーデビューを果たしたBMWザウバーのセバスチャン・ベッテルは,なかなか肝が据わっている。この弱冠19歳のルーキーは,過去に1度しかF1をドライブしていないにもかかわらず,初挑戦となるイスタンブール・パークで見事トップタイムをたたき出した。もちろんサードドライバーはエンジンの回転数やタイヤの本数を気にすることなく全開で走れるのだが,それにしても他の経験豊富なサードドライバーを押さえてのトップタイムは,賞賛を持って迎えられるべきものであろう。

 ベッテル自身も驚いているトップタイムだが,それを最も驚異に感じているのは,レギュラードライバーのニック・ハイドフェルドではないだろうか。ジャック・ビルニューブが引退し,名実ともにファーストドラーバーになったと思ったら,前任のロバート・クビサに勝るとも劣らない驚異の新人の登場である。さらに今週末のパドックでは「ハイドフェルドとトヨタのラルフ・シューマッハが互いのシートを交換するのではないか」という噂まで流れている。周囲が急に差がしくなってきたハイドフェルドだが,彼が首筋に寒いものを感じているとしたら,トルコGP前にひいた風邪の影響だけではないだろう。

 一方のラルフは積極的な走り込みで5番手のタイムをたたき出したものの,セッション終了後にエンジンの不具合が発見されたため,エンジン交換を実施するようだ。このろころ好調を維持しているトヨタは,このGPでも新空力パッケージを投入しているが,またしてもエンジンに足を引っ張られる格好となってしまった。トヨタエンジンは最近頻繁にトラブルを起こしており,ミッドランドのクリスチャン・アルバースはハンガリーGPに引き続き,今季3度目となるエンジン交換を余儀なくされている。第3期初優勝を果たしたホンダに続きたいトヨタだろうが,こうちぐはぐな状況では先行きが暗い。

 さて,ベッテルばかりに注目が集まっているトルコGPだが,久しぶりにステアリングを握ったSAF1のフランク・モンタニーも着実な仕事ぶりを見せている。SAF1はこのGPから新型のフロントサスペンションを投入予定であったが,結局間に合ったのは1セットのみとなってしまった。昨日のフリー走行では,それをモンタニーの41号車に装着し,基本的なデータ取りを行っている。フリー走行2回目のモンタニーと佐藤琢磨の差は,きっかり0.6秒。周回数の違いもあるが,新型サスペンションの効果もタイム差に表れていると思われる。今日のフリー走行3回目からは琢磨のマシンにこのサスペンションが移植されるはずであり,さらなるタイムアップが見込まれる。まずはQ2初進出なるか?今夜の予選を注目したい。

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2006年8月25日 (金)

消え去る者の運命

 移り変わりの激しい現代に於いて,人の記憶に長く留まることはなかなか難しいものだ。スポットライトが当たっているうちはいいが,それが消えればあっという間に忘れ去られてしまう。ロバート・クビサにシートを譲る形でF1引退に追い込まれたジャック・ビルニューブも,やがて人々から忘れ去られる運命にあるのだろうか。長年ビルニューブのマネージャーを務めてきたクレイグ・ポロックは,BMWチームの政治的な方針によってF1引退に追い込まれたと主張している。確かにこれは事実であろうが,もしビルニューブにかつての速さがあれば,チームもこうした判断を下すことはなかっただろう。

 日本のモータースポーツ界でも,先日ひとつの活動に終止符が打たれた。先週末に鈴鹿サーキットで行われた,スーパーGT第6戦鈴鹿1000kmを最後に,ディレクシブ・モータースポーツが全てのカテゴリーから姿を消した。このレースでディレクシブは70kgのウエイトハンデを課せられながらも2位入賞を果たし,現在GT300のランキングトップを維持している。今後は同体制を引き継ぐR&Dスポーツからのエントリーとなるが,資金的には依然厳しい状況にあるという。フォーミュラ出身の密山祥吾とハコ出身の谷口信輝という異色のコンビが,逆境を乗り越えてタイトルを獲れるか注目される。

 今回のディレクシブ撤退は,彼らを資金的に支えていたアキヤマ・ホールディングスが,「F1参戦」という目先の利益だけを追い求めた結果の悲劇である。そう考えるとディレクシブのドライバーやチームスタッフはもちろんのこと,芳賀美里代表もまた被害者の一人であると言える。彼女のレースに対する真摯な姿勢は多くの関係者の認めるところであったし,その熱意に多くのファンがエールを送っていたことも事実だ。爽やかなディレクシブ・ブルーをまとったマシンはサーキットから消えるが,まだ若い芳賀代表はまたいつかサーキットに舞い戻る日が来るかもしれない。

 さて,この鈴鹿1000kmで最も情けなかったのが井出有治であろう。ザナヴィニスモZの助っ人ドライバーに抜擢された井出だったが,他車と接触した上にドライブスルーペナルティの表示を見落として周回を重ね,最後は黒旗失格という最悪の結末を迎えた。ボーナスポイントの付く鈴鹿1000kmには,どのチームの必勝態勢で臨んでくる。そのための井出起用だったが,チームの期待に応えられなかったばかりか,自身の評価をも下げてしまった。無線の故障など様々な不運が重なったこともあるが,失格という結果には変わりない。このような走りをしていたのでは,F1復帰はおろかドライバーとしてもフェードアウトしてしまう。F1復帰を応援する多くのファンのためにも,井出にはもう一度自分の足下を見直してもらいたい。

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2006年8月24日 (木)

イタチごっこの末に

 競争があればルールがあるのも当然だが,そのルールがコロコロ変わるのは迷惑この上ない。かねてからその是非が話題となっていたマス・ダンパー・システムだが,遂に国際控訴審で違法との判断が下された。これによりこのシステムは,今後一切の使用が禁止される。この判定については,フランスGP後にFIAから禁止の通達があったが,この時点で今後の再使用はできないであろうと言われていた。一度疑惑のかかったシステムを使用し続けることは,後々ポイント剥奪の可能性も残すことになる。そんな危険を冒してまで使い続けるチームがあるはずもなく,同システムはそれ以降一度も使用されていない。

 マス・ダンパー・システムは,いわば建物の耐震装置のようなものである。フロントウイング内などに2つのバネの間に挟んだ重りを組み込み,マシンがバンプを乗り越えた際に重りが上下することで積極的な姿勢制御をするのがねらいだ。このシステムは今まで多くのチームが使用してきたが,ルノーの性能が突出して優れているとされていた。ルノーは昨年度からこのシステムを使用しており,今年度のR26はマス・ダンパーがあることを前提に設計されたマシンである。それ故,マス・ダンパー禁止の影響は1周あたり約0.3秒のロスとも言われており,ここ数戦その速さに陰りが見えていたことも確かだ。だた,ルノーとしても今回の禁止決定に備えて,今後の対応策は準備しているものと思われる。

 トヨタのパスカル・バセロン/車体部門ゼネラル・マネージャーが言うように,マス・ダンパー自体はメカニカル・デバイスだが,積極的な姿勢制御をすることはレギュレーションで禁じられており,違法と判断されても仕方がない。しかし問題なのは,一度合法と判断されていたマス・ダンパーが,今シーズン途中で違法と判断されたことにある。ルノーは昨シーズン同システムを導入するに当たり,FIAに使用の判断を求めている。その際はメカニカルデバイスとして合法の判断を下していた。ところが今回は空力デバイスとしての禁止通達。これでは内外に反感を買うのが当然である。

 テクニカル・レギュレーションをめぐっては,過去にもFIAとチームがイタチごっこを繰り返してきた。レギュレーションを作るたびに,技術者はその隙間を縫って新しいシステムを開発してきた。速すぎるルノーを止めるための手だてとしてマス・ダンパーが狙われたのは確かだが,今回はその時期が微妙である。マス・ダンパーが違法というならば,今まで違法なシステムで得ていたリザルトはどうなると言うのだろう。他のカテゴリーではタイトル争いを面白くする為,ハンディ・システムを変更することは珍しくない。しかし,F1という世界最高峰のレースで,一度決めたルールを曲げてまで混沌の争いを演出するのはいかがなものか。それがFIAと言ってしまえばそれまでだが・・・。

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2006年8月23日 (水)

待ってろイスタンブール!

 たった3週間というインターバルもずいぶん長く感じれられたが,またサーキットにマシンの咆吼が響き渡る週末がやってきた。SAF1にとってもフルコンプリートのSA06投入に加え,第3ドライバー,フランク・モンタニーを加えた3台体制で臨む待望のGPでもある。そのモンタニーは,先日「テスト中に鹿と衝突し現在入院中のクリスチャーノ・ダ・マッタの後任としてチャンプカー参戦か?」というニュースが流れた。しかし,モンタニーのプライオリティーはあくまでF1であり,SAF1との契約もあることから,ダ・マッタの代役を探していたルー・スポーツ側が獲得を断念したと伝えられている。

 モンタニーの契約についてはその詳細が明らにされていないが,今シーズン一杯は第3ドライバーとしてチームに帯同するものと考えられている。もちろん日本人ドライバーを積極的に起用したいのであれば,フォーミュラ・ニッポンを走る若手を日本GPの第3ドライバーとして走らせることもできる。しかし,来シーズンのことを考えると,残り5戦で結果を出さなければいけないSAF1にとって,モンタニーの開発能力は欠かせないものである。安定した速さを得るためには,安定した体制作りが必要不可欠であり,このままの体制で今シーズンを乗り切ることが最も望ましい。

 さて,今シーズン2度目のアップデートとなる「SA06B」は,フロントサスペンションの取り付け方法がゼロキールに変更され,フロントウイングも新型のものが装着される。それによりフロントとリアで不安定だったダウンフォースレベルは改善され,フロントの食いつきが悪い前戦までの状況から脱することができるはずである。しかし,シェイクダウン以降トラブルの多発した油圧系統やギアボックスが改善されていなければ,今までと同じ状況を繰り返すことになる。それでは予選でミッドランドの前に出ることはできても,レースではライバルの前でフィニッシュすることはできない。この3週間でどれだけ進化したのか,チームの底力が試される。

 トルコGPの舞台であるイスタンブール・パークは,FIAの御用達デザイナー,ヘルマン・ティルケ氏によって設計された現代サーキットである。そのテクニカルかつ起伏のあるコースの中でも最大の難所「ターン8」は多くのドライバーに人気があり,コース攻略の最大のポイントとして知られている。初開催となった昨年も,このターン8攻略に多くのドライバーが手こずっていた。佐藤琢磨にとっても予選アタックでコースアウトした上に,計測終了後の周回でマーク・ウェバーの走行を妨害したためタイム取り消しとなった因縁のサーキットである。リーサルウェポンを得た琢磨が,昨年のリベンジを果たせるのか注目したい。待ってろイスタンブール!

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2006年8月22日 (火)

スーパーライセンスという壁

 後々のことを考えると,優秀な人材はできるだけ早く確保するにこしたことはない。近年はドライバーの若年化が進んでいるが,トルコGPでBMWザウバーの第3ドライバーに起用されるセバスチャン・ベッテルも,現在ユーロF3でランキング2位につける若干19歳の若者だ。ザウバー時代からミドルフォーミュラの若手を積極的に起用してきたことは,このチームの大きな特徴ともいえる。先のハンガリーGPでデビューした2005年ワールド・シリーズbyルノーチャンピオンのロバート・クビサは21歳。それ以前にも20歳そこそこの若手にチャンスを与え,優れたドライバーを輩出している。

 その中でも特に有名なのが,現マクラーレンのキミ・ライコネンだろう。F3から国際F3000(現GP2)などのカテゴリーを経験せずにF1デビューを飾るドライバーは少なくない。しかしライコネンはF3を経験することなく,英フォーミュラ・ルノーから一気にF1にステップアップした強者である。モータースポーツを始めてから僅か5年でF1レギュラーシートを手に入れた佐藤琢磨の場合も奇跡に近い快挙と言われたが,ライコネンの3階級特進は正に奇跡といえる。しかし,その実力は誰もが認めることであり,それを見いだしたペーター・ザウバー氏の眼力もさすがである。ただ,度々話題になる酒癖の悪さまでは見抜けなかったようだが・・・。

 さて,第3ドライバーとはいえF1参戦を果たすには,スーパーライセンスが必要になることは言うまでもない。下位カテゴリーでそれなりの成績を収めていれば問題なく発給されるのだが,F3からの飛び級組の場合その年のチャンピオンでなければ発給資格はない。そのためベッテルの場合は,「事前に300km以上のテストドライブをしていれば,そのテスト結果や過去の参戦実績を基にF1委員会の審査により発給を認められる」という例外条件が適用される。先に挙げたライコネンやホンダのジェンソン・バトンも,この特例によりスーパーライセンスの発給を受けたドライバーである。

 しかし,この発給条件はなかなかのくせ者で,過去にも多くのドライバーが涙を飲んでいる。1992年にブラバム・ヤマハからデビューの予定であった中谷昭彦が,条件を満たしていたにもかかわらずスーパーライセンスの発給が認められなかったことは有名である。ベッテルの参戦するユーロF3はハイレベルであり,その中でタイトル争いをしているベッテルには,間違いなくライセンスが発給されるだろう。しかし過去には,どう考えてもF1をドライブできるレベルにないドライバーに,スーパーライセンス発給が認められたこともあった。F1が世界最高峰のカテゴリーであるならば,そこに集まるドライバーも世界最高峰であるべきである。FIAには厳正かつ公平な審査を望みたい。

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2006年8月21日 (月)

目を覚ませフランク!

 同じチームオーナであっても,人が違えば考え方も大きく違うのは当然である。かつてジョーダングランプリを率い,F1において一世代を築いたエディー・ジョーダン氏の発言が面白い。かねてから親交の深かったウィリアムズチームの総帥,フランク・ウィリアムズ氏に対し,来シーズンからエンジン供給を受けるトヨタにチームの株式売却を勧めている。ワークスチーム全盛時代の現代F1において,プライベートチームであるウィリアムズが上位進出する道は険しい。そのためトヨタに株式を売却することで資金をつくり,それによりマシン開発を進め戦闘力を上げるように促している。

 ここで注目したいのが,ジョーダン氏が「トヨタへのチーム売却」を勧めているのではなく,あくまでウィリアムズの復活を望んでいる点である。自身としてはロシアの富豪,アレックス・シュナイダー氏にチームを売却してしまったものの,ウィリアムズ氏にはそれを勧めようとはしていない。今シーズンは不振に喘いでいるウィリアムズも,チームスタッフの技術レベルは高い。開発に必要な資金さえあれば,ワークス勢にも引けをとらない速さを取り戻す考えているのであろう。ウィリアムズ氏をよく知るジョーダン氏だからこその発言といえる。

 ジョーダン氏とウィリアムズ氏のレースに臨む姿勢が大きく異なることを考えれば,これは当然のことである。ジョーダン氏が銀行出身の現金主義者であったのに対し,ウィリアムズ氏はスピードに取り憑かれた根っからのレース人間である。今シーズン,戦闘力低下の大きな要因となったBMWとの決別も,ワークスの軍門に下るくらいだったら潔く清貧の道を歩んだ方がいいという,ウィリアムズ氏の強い意志がさせたものである。その結果今シーズンのウィリアムズは,ここまでの獲得ポイントが僅か10点,この8レースは入賞すらしていない。これは長いウィリアムズの歴史の中でワーストの記録になるというが,これもウィリアムズ氏自身の決断によるものである。

 結論を言えば,ウィリアムズ氏がチーム株式を売却することはないだろう。確かに株式を売却すればある程度の資金は得られるだろうが,同時にトヨタの介入も深くなる。自チームの独立を重んじるウィリアムズ氏がそれを許すとは思えない。これまでも数々の困難を乗り越えてきた「車椅子の闘将」だからこそ,最後の最後までプライベートチームの誇りを重んじると考えられる。だが今シーズンの不振は,これまでと違い出口の見えない長いものとなっている。圧倒的な資金力を誇るトヨタが,その状況を指をくわえて黙って見ているとは考えにくい。「変な意地を張らず,チームの置かれている状況を冷静に分析しろ!」と言うジョーダン氏の助言がどこまで届くのやら・・・。 

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2006年8月20日 (日)

開発と雇用のバランス

 某消費者金融のCMコピーではないが,どの世界でも注意しなければならないのは「バランス」を大切にすることであろう。組織を大規模にすれば様々な開発も短時間で進むだろうが,当然それにかかるコストも比例して大きくなる。コストカットを目論むFIAがGPMA側に突きつけた「F1エンジン凍結案」が合意になった場合,各エンジンメーカーは大幅なリストラを敢行しなければならないようだ。現在ウィリアムズとトロ・ロッソにエンジンを供給しているコスワースでは,「現在300名いるスタッフのうち約40%を解雇せざるを得ない」とFIAに警告をしている。

 それに対するマックス・モズレーFIA会長の見解は,予想通り冷淡なものだ。そもそもエンジン凍結案の目的がコストカットにあるのだから,それにともなうスタッフの解雇はFIAにとって願ったりかなったりのものである。肥大化してしまったF1予算が少しでも減少するのであれば,多少の雇用不安など何のことはないと考えているのであろう。現在各チームにエンジンを供給する7つのメーカーのうち,コスワース以外は全て自動車メーカーである。自動車メーカーはエンジン開発が凍結されてしまっても,人員を他の部門に回すことで対応できるだろうが,プライベートメーカーのコスワースはそうもいかない。

 エンジン規定の変更が,結果としてコスト増加を生んできたとFIAが理解したのはつい最近のことである。一昔前は,エンジンの性能が直接マシンのラップタイムとして現れていた。そのためFIAはエンジン規定を変更することで,ラップタイムの上昇を抑えようと躍起になった。ターボからNAへ,3.5V12から3.0V10そして2.4V8・・・。その度に各エンジンメーカーは,出力や回転数をほんの少し上げるために,莫大な資金を投じてきた。しかし,マシンのトータルパッケージが重要視される現代F1に於いて,エンジンの占める割合はそれほど大きくはない。その結果ようやくFIAは,重箱の隅をつつくような開発は無用であるという結論に達したのである。

 さて,仮にエンジン凍結案が合意に至ったとして,本当にF1にかかるコストは減少するのだろうか?先にも述べたように,現代F1マシンは馬力よりも空力に重点を置いて開発されている。ワークスチームは今までエンジンに回していたスタッフと資金を他の部門に回すだけで,結局以前と何ら変わりないということも考えられる。いや,細部での分業化がより一層進むことで,今まで以上の資金が投じられるようになることすらあり得るだろう。レースは激しい開発競争を生み,そこに新たな雇用を生み出す。しかし,一度そのバランスが崩れてしまったら,元に戻すのは容易なことではない。エンジン凍結案が,さらなる開発競争を生まなければよいのだが・・・。

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2006年8月19日 (土)

去るものは追わず・・・

 人は年齢を重ねると温厚になるというが,どうやらこれは現役最年長のミハエル・シューマッハにも当てはまるらしい。最近何かとお騒がせのジャック・ビルニューブから嘘つき呼ばわりされたシューマッハだが,これに対して一切の反論をせずにいる。必要以上のことを話さないシューマッハがこれしきのことでとやかく言うこともないだろうが,今回は完全無視の構えを見せている。今さら反論して事を荒立てることを良しとしない大人の対応なのか,言われた事など百も承知だからこその沈黙なのか。いずれにせよ,完全無視された形のビルニューブの発言が,負け犬の遠吠えのように聞こえてしまうのが虚しい。

 そのビルニューブに代わり,今シーズンいっぱいBMWザウバーをドライブすることとなったロバート・クビサは,来週に迫ったトルコGPへの意欲を示している。前回のハンガリーGPでは,デビュー戦とは思えない落ち着いた走りをしたクビサだが,最低重量違反という些細だが重大な違反により7位入賞を逃してしまった。最低重量にわずか2kg足りなかったということだが,これはゴール後にタイヤかすを拾い集めてくればクリアーできた重さである。それを怠ってしまったことが失格につながったのだが,クレバーなクビサのこと,もう同じ過ちを犯すことはないだろう。

 ハンガリーで喜びの初優勝に沸いたホンダからは,テクニカル・ディレクターのジェフリー・ウィリス離脱のニュースが伝えられた。中本修平のシニア・テクニカル・ディレクター就任を不服としていたウィリスは「ガーデニング休暇」をとっていたが,チーム離脱は時間の問題とされていた。B.A.R時代からチームの技術部門を統括していた彼にとってすれば,ホンダ色が濃くなった時点から居心地の悪さを感じていたのだろう。それが今シーズン初めの不振で,一気に加速してしまったのかもしれない。誇り高き英国紳士としては,イエローモンキーにあれこれ指図されるくらいならば,自分のやり方を通せるチーム(プロドライブとも伝えられてるが)のほうがマシということなのだろう。

 最後にSAF1の話題をひとつ。チームの顔である鈴木亜久里代表が,ホンダの重要な役職につくのではないかという噂があるらしい。詳細は定かではないが,「ホンダレーシング代表」といういささか信憑性に欠ける話も出ている。SAF1にとってホンダは,技術・資金両面から多大なサポートを受ける最重要パートナーである。それはホンダにとっても同じことで,2008年から始まるであろうF1新時代に向けて,SAF1はなくてはならない開発チームである。その顔である亜久里代表をホンダレーシングに取り込むことで,両者の関係をより強固なものにすることは十分考えられる。去るものは追われることがないF1界。新興チームが生き残るためにすべきことは何か,亜久里代表の手腕に期待したい。

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2006年8月18日 (金)

タバコマネーの終焉

 ルノーのスポンサーであるスペインの電話会社「テレフォニカ」が,来年度も引き続きルノーへの支援を行うようだ。元々テレフォニカは,マルク・ヘネがミナルディに持ち込んだことからF1への支援を始めたのだが,ここ数年は,同国の英雄,フェルナンド・アロンソ駆るルノーに多くの資金を投じてきた。しかしそのアロンソが来季マクラーレンに移籍となり,その行き先が注目されていた。マクラーレンは来季から「ボーダフォン」がメインスポンサーになることが決まっており,テレフォニカもアロンソとともにマクラーレンに鞍替えというわけにはいかなかったようだ。傘下の「O2」ブランドで行っているBMWザウバーへの支援を打ち切ったことで,テレフォニカは来シーズン,ルノーのメインスポンサーになることも考えられる。

 その一方で長年にわたりベネトン~ルノーのメインスポンサーを務めてきた「マイルドセブン」(JT)は,今シーズン限りでのF1撤退が現実を帯びてきている。JTは1992年にヴェンチュリ・ラルースからデビューした片山右京とともに「キャビン」ブランドでF1に登場。1994年からは「マイルドセブン」ブランドでベネトン(現ルノー)のメインスポンサーとなり,以来13年に渡りその支援を続けてきた。しかし,EU加盟国で始まったタバコ広告の全面禁止に伴い,マクラーレンを支援してきた「ウエスト」が,昨シーズン途中で撤退するなど,長年F1界を支えていたタバコマネーは,サーキットから姿を消そうとしている。

 過去にスポンサーとしてF1に係わった日本企業は枚挙にいとまがないが,1つのチームのメインスポンサーとしてこれだけ長期にわたって係わってきた企業はJT以外に存在しない。'80年代後半から'90年代前半のバブル時代には多くのジャパンマネーがF1界に進出したが,そのどれもがバブル崩壊と同時にF1から手を引いていった。しかしその中に於いてJTは着実に足場を整え,昨年遂に「チャンピオンブランド」としての栄誉を勝ち取っている。この十数年でマイルドセブンは世界中にその名を知らしめることとなった。事実JTの海外たばこ事業は好調であり,国内を併せた販売シェアは世界第3位という地位を確立している。

 スポンサーとして初めてF1マシンに描かれたのは,1968年にロータスをイギリスのインペリアル社が「ゴールドリーフ」ブランドで支援したことが最初である。以来多くのブランドがF1マシンを彩っていたが,現在F1界に残っているタバコマネーはJTを除くとフェラーリのメインスポンサーである「マールボロ」と,ホンダの「ラッキーストライク」を残すのみとなっている。マールボロは今後もフェラーリへの支援を続けていくことを表明しているが,ラッキーストライクもマイルドセブン同様今シーズン限りで見納めとなるだろう。長いF1の歴史の中で,40年近くもその足下を支えていたタバコマネー。極彩色のマシンがグリッドを飛び立つ姿は,もう過去のものになろうとしている。 

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2006年8月17日 (木)

記録と記憶に残るスター

 BMWザウバーを解雇され,「ロック歌手に転向か」との噂も出ているジャック・ビルニューブが,フェラーリのミハエル・シューマッハを酷評している。その発言は「レーサーではあるけれど,本当の意味でのスター性に欠ける」「ファンだけでなくドライバー仲間にも嘘をつく」「素晴らしい人間でもチャンピオンでもないし,引退したらすぐ忘れ去られる」などなど。ビルニューブ自身シューマッハとはタイトルを争ったライバルだったこともあり,現役時代からシューマッハに対しては痛烈なコメントを繰り返してきた。それにも加え今回は自身がF1から事実上引退したことにより,今までたまっていた鬱憤を晴らすような,まさに「言いたい放題」のコメントである。

 シューマッハが歴代のチャンピオンに比べて優れている点は,いくらでも挙げることができる。過去最多7度のドライバーズタイトル,最多勝,最多ポールポジション,最多獲得ポイント・・・。ほぼ全ての記録を塗り替えてきたシューマッハの力を認めない者はいない。その卓越したドライビングテクニックは,十数年の間王座に君臨する礎となったものであるし,レースに対する真剣な姿勢は37歳となった今でも全く変わることはない。生活の全てをレースに捧げ,常にマシンを速く走らせることを考えているのは,多くのドライバー達が見習うべきものであろう。

 一方で,誰もがシューマッハを優れたドライバーであることは認めつつも,「スター」かと言えばまた話は別のものとなる。ビルニューブの言うように,故アイルトン・セナと比べてしまえば,シューマッハのスター性はさほどのこともないであろうし,アラン・プロストやナイジェル・マンセルと比較しても意見の分かれるところだろう。勝利を得るために手段を選ばないその姿勢は,多くの反感を買っていることも事実である。圧倒的に強い皇帝ですら,人々の記憶の中に生き続ける英雄には勝てないと言うことだろうか。しかし,シューマッハが現役のドライバーということを忘れてはならない。

 かつてシューマッハは(フジテレビ的に言うと)「ターミネーター」と称され,人間の血の通っていないまるでサイボーグのような扱いをされていた。それは精密機械のような正確なドライビングと,300kmものレースを終えてなお有り余る体力を賞賛したものであったが,同時に人間味のない冷徹なイメージを人々に植え付けてしまった。しかし近年のシューマッハは,喜怒哀楽様々な表情をメディアに見せている。セナの持つ51勝に並んだ時に見せた涙は,多くの人々に「人間シューマッハ」を意識させるものであった。その去就について様々な憶測が飛び交っているシューマッハだが,「記録」と「記憶」両方に残るスターになるかは,彼がF1から引退して初めて結論の出ることなのであろう。

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2006年8月15日 (火)

トヨタの目指すもの

 トヨタのGPMAからの脱退が昨日発表されたが,この件に関してはさほど驚きを持って捉えられてはいない。ルノーがGPMAから距離を置いた時点で,この組織の存在は希薄なものとなっていたのだし,2008年からの継続参戦が確約されている以上,トヨタがGPMAにとどまる理由もさして見あたらなかったのだろう。事実,トヨタとしては先日発表されたエンジン凍結案に対しては依然反対の姿勢を示しているものの,2012年までの新しいコンコルド協定については,近く同意する意向を示している。

 この発表の中でトヨタは自らの立場を,「技術的な挑戦の維持」と「独立チームに対する支援継続」という2点に加え,「地球環境およびF1メーカーを保護するために,技術的レギュレーションを提案」としている。先週のエンジン凍結案の中で,GPMAが新機軸のパワーユニットの導入についてのワーキンググループを発足させるという記事があった。この「新機軸のパワーユニット」とは,ハイブリッドエンジンのことと見て間違いないだろうが,すでにトヨタはFIAに対し,ハイブリッドエンジンに関する技術提供を行っている。このことから見ても,トヨタは未来に向けた技術開発の分野で,他メーカーをリードする立場を目指していることがよく分かる。

 トヨタはF1参戦にあたり莫大な資金を投入してきた。WRCを撤退してF1参戦の準備を着々と進め,その前線基地であったTTEを母体にTMGを設立。他チームをはるかにしのぐ莫大な資金と,550人以上と言われるスタッフのもとF1へのチャレンジを続けてきた。昨シーズンは,オフのテストが始まると同時に新車TF106をデビューさせ,モナコGPでは早くもTF106Bを投入するなど,他チームを凌駕する開発スピードを誇り,束の間の夏休みとなった現在でもファクトリーで開発を続けている。しかし,そのハードワークにもかかわらず,F1挑戦5年目に至っても勝利を挙げることができていないことに,チーム内外から苛立ちの声が上がっていることも事実である。

 トヨタは今後,どのような道を目指すのであろうか。先にも述べた「環境に配慮した新機軸パワーユニット」の開発においては,中心的な役割を果たしていくものと思われるが,それよりもまずほしいのは「初勝利」であろう。来年度からのウィリアムズへのエンジン供給に関しては,車体開発のノウハウを共有するとの話もある。ドイツ・ケルンを本拠地とするトヨタは,物的・人的な面から見てもその立地条件の中でのハンディもある。効率的なチーム運営をするためには,2008年からホンダがSAF1をBチーム化するように,トヨタもウィリアムズをBチーム化することも十分考えられる。いずれ未来の日本人F1候補生達が,そこからデビューする日が来るのかもしれない。

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2006年8月13日 (日)

SA06は失敗作?

 つかの間の夏休みに入ったF1シーズンだが,それはカレンダーの上でのこと。各チームは今もファクトリーで,現行マシンの整備・改良や来年度マシンの設計・開発に余念がない。新車を投入したばかりであるSAF1にとってもそれは同じこと,いや,現行マシンの開発が進んでいないことを考えれば,他チーム以上のハードワークをしているのであろう。関係者や一部ファンの間では,新車投入にもかかわらずトップから5秒落ちのタイムしか出せないSA06を「失敗作」と呼ぶ声もあるが,チームのエース佐藤琢磨は,「SA06はまだまだ進化する」と語っている。

 ドイツGPで投入されたSA06は,非常に中途半端な形で投入されたマシンである。そのフロントセクションはSA05のものが引き継がれており,完全な新車でないことは何度もアナウンスされている。アロウズA23ベースのフロントと,最新の技術で開発されたリアを持つSA06は,その設計思想に5年もの隔たりがあるきわめて極めて特異なマシンである。SA05に比べれば戦闘力は格段に上がったもの,難しいセットアップを強いられることはある程度予想できた。事実ハンガリーGPでは,コンディションによってアンダーとオーバーを繰り返す極めて運転づらい状況にあったという。

 SA06のリアセクションが高い安定性を得たことで,コーナーでの挙動が大きく乱れることもなくドライバーは安心して踏むんでいくことができている。その反面フロント部分は旧式のため,ダウンフォース不足は顕著である。空力的な問題もあるが,フロントサスペンションも旧態依然としたツーンキールでは剛性が十分確保されていたいことは明白である。トルコGPからはこのサスペンションもゼロキールとなり,フロント周りのデザインも一新される。2段階のアップデートを経て,ようやくSAF1はライバルと正面切って戦える「新車」を手に入れる。そういった意味では,SA06の真価はトルコGP以降で問われるべきであり,今の段階でSA06を「失敗作」と呼ぶのは時期尚早である。

 新車投入によって,第1目標である「ライバルと争える位置」まではたどり着くことができた。しかしその上を狙うには,まだ今ひとつ速さが足りないのも事実である。直近のライバルはミッドランドであるが,もちろん彼らとて開発の手をゆるめているわけではない。予選ではしばしばQ2に進む一発の速さも持っているし,何よりもその高い信頼性はSA06にないものである。コンストラクターズ争いを考えると,ハンガリーGPでミッドランドが9位・10位フィニッシュしたことで,SAF1はポイントを取らなければ彼らの上に立つことはできない。厳しい目標ではあるが,実現不可能な話ではない。琢磨の言うように「痛快」な逆転劇で,SAF1を侮っているライバルをねじ伏せてもらいたい。

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2006年8月11日 (金)

レーシングあってこそホンダ

 今年でF1開催20周年を向かえる鈴鹿サーキットだが,来年度のF1GP開催については悲観的な見方が多くなっていている。来年度からの日本GPは富士スピードウェイで開催されることが決定しているが,これについてHRD(ホンダ・レーシング・デベロップメント)の和田康裕社長が,興味深い発言をしている。それによれば,富士と鈴鹿との交互開催の道を探っていると言う。今年度ニュルブルクリンクとホッケンハイムの2回開催されたドイツでのGPも,来年度からは交互開催になると言われており,日本GPにもその方式を取り入れようというものである。

 鈴鹿サーキットでのF1開催については,「パシフィックGP」の名称で春の開催を模索しきていると伝えられてきた。事実来シーズンの暫定開催スケジュールでは,開幕戦オーストラリアGPと,第2戦マレーシアGPとの間に数週間のインターバルがあることから,この期間での開催の可能性も残されているはずである。しかし,先に挙げたドイツやイタリアなど1国2GPを開催している国は,来年度から1GPとなるものとみられ,「春の鈴鹿,秋の富士」の開催については,難しいものと考えられている。F1開催を取り仕切るバーニー・エクレストンとしては,より多くの地域でのF1開催を考えおり,その面でも同じ国での2回開催は微妙な情勢にある。

 それでも尚決定がずれこんでいるのは,鈴鹿の観客動員数が他のGPと比べ圧倒的に多いからである。先月ホッケンハイムで開催されたドイツGPでは,決勝レースでも観客席には空席が目立った。これでは削減の対象になってもいたし方ないが,鈴鹿は毎年15万人近くの観客が集まり,全体GPの中でもトップクラスの観客動員数を誇っている。エクレストンとしても商業的な側面から見れば,鈴鹿を無下に切り捨てることはためらいがあるのであろう。しかし,幅の狭いコースやランオフエリアが十分ではない点など,安全性の面から見れば改善を求める声が多くあることも事実である。

 1962年に誕生した鈴鹿は,飛躍的に上がったレーシングスピードに対して,十分な安全性が確保されているとは言いがたい。現代サーキットはランオフエリアもグラベルではなくアスファルトであり,万が一コースアウトしても高いグリップが得られるようになっている。もちろん富士も大改修により,十分な安全性を確保している。ホンダはツインリンクもてぎをオープンさせたまでは良かったが,鈴鹿については誕生から40年以上抜本的なコース改修をしなかった。そのツケが,ここにきてF1GP開催消滅という最悪の形になって現れようとしている。「レーシングがなければホンダではない」という本田宗一郎氏の言葉を,鈴鹿開催という点でも何とか継承してもらいたいが・・・。

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2006年8月 9日 (水)

ホンダは復活したのか?

 ホンダに39年ぶりの優勝をもたらしたジェンソン・バトンに,各方面から祝福のコメントが寄せられている。その一方で,バトンとホンダに厳しい見方をする関係者も少なくない。かつてB・A・Rホンダを率いたデビット・リチャーズもその一人である。バトンの初優勝を「心から祝福している」としながらも,114戦目という遅咲きとなってしまったことには,「正直もう少し早く訪れると思っていたが…」と,だれもが頷くコメントをしている。それに付け加え,この勝利によってホンダが優勝できるレベルになったと言うのは時期尚早との見方を崩さない。事実ハンガリーGPの優勝は,トップを走っていたライバル達が次々と脱落したことによって手に入れたものだからである。

 オフシーズンのテストでは好タイムを連発し,初優勝は時間の問題と目されていたホンダだったが,シーズンが始まると同時にまさかの失速を始める。第3戦オーストラリアGPでは,戦闘力で圧倒的に劣るSAF1の佐藤琢磨にルーベンス・バリチェロが押さえ込まれるというシーンまであった。さらにフランスGPでは,バリチェロが14番手,バトンが予選19番手と,2台ともにQ3に進めない今期最悪のグリッド。決勝もそろってリタイアといいところなく終え,BMWザウバーには「すでにホンダは追い抜いた」と言われる始末だった。

 ところがドイツGPから一気に早さを増しバトンが予選・決勝ともに4位,ハンガリーGPではバリチェロと共にセカンドーローからスタートしての優勝である。この急激な復調の陰には,内部人事を刷新したことによる効果や,本格稼働した新風洞設備の効果が出てきたとも言われているが,それでも尚トップグループには追いついていないというのが実情だろう。バトンの母国イギリスの新聞各紙も,「113戦目で幸運に恵まれたボーイレーサー」「向こう見ずな英国人ドライバー,ハラハラのレースで初勝利」と,この優勝が多分にラッキーな要素があってもたらされたものと皮肉っている。

 今回の優勝は,ウェットコンディションによる波乱,上位陣の脱落があったことも事実だが,荒れたレースを制することができたのはバトンのドライビングスタイルによるところが大きい。無用なバトルや接触を避けるそのドライビングは,時として「華がない」と揶揄されることもある。しかし,タイヤに優しいドライビングと,難しいコンディションの中でのスムーズな走りをするバトンの腕がなければ,今回のレースを制することはできなかったであろう。リチャーズが言わんとしていることも,まさにこのことである。バトンの優勝=ホンダの復活ではないのだ。2ヶ月後にはおそらく最後になるであろう,鈴鹿サーキットでの日本GPが待っている。ホンダのお膝元である鈴鹿で今度は他を圧倒する走を披露し,文句のない勝利を飾ってもらいたいものである。

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2006年8月 8日 (火)

動き出した未来

 ハンガリーGPを終えF1サーカスはつかぬ間の夏休みに入ったが,同時に来季に向けての動きが活発になってきた。まず来季の体制が確定したのがレッドブル。デイビッド・クルサードの残留はほぼ確定的と見られていたが,ここにウィリアムズを放出されたマーク・ウェバーが加入することとなった。第3ドライバーのロバート・ドーンボスもテストドライバーとして残留の見込みであり,クリスチャン・クリエンはシートを失うことになる。今シーズン14ポイントを獲得しているクルサードに対してクリエンはわずか2ポイント。クリエンがよいドライバーであることは否定しないが,モナコGPで表彰台を獲得しているクルサードと比べると,見劣りする成績しか残していないのも事実である。

 ウィリアムズを離脱したウェバーの動きは早かった。マネージャーがフラビオ・ブリアトーレということを考えれば当然だが,資金力には申し分ないレッドブルに売り込むあたりはさすがである。今回の契約は,レッドブルがウェバーの素質を評価したことはもちろんだが,同時に来季の搭載エンジンも大きく関係している。未だチームから正式な発表はないが,今回のウェバー加入はルノーエンジンとセットであった可能性もある。当初はルノーの第3ドライバーであるヘイキ・コバライネンを送り込むという噂もあったが,これをウェーバーに切り替えたとも考えられる。いずれにせよ,商魂たくまいブリアトーレならではの話であろう。

 一方で寂しくもF1引退を通告されたのが,BMWザウバーのジャック・ビルニューブである。当初は一時的なものと考えられていたクビサのレギュラー昇格だったが,ハンガリーGPで大胆かつ着実な走りを示したことで首脳陣の評価を高めた。クビサの速さは誰もが認めることであり,首脳陣もビルニューブを降板させる理由を探していた。そこにきてドイツGPでのビルニューブのクラッシュである。結果的に自らF1ドライバー生活にピリオドを打つこととなったビルニューブは,来季NASCARへ転向すると言われている。モントーヤ共々新天地での活躍を祈りたいが,よそ者に上位を走らせるほど甘くないのもNASCARである。

 来季の体制が着実に決まる中で,いまだ行き先不透明なのがマクラーレンのキミ・ライコネン。一時はルノー移籍かと言われていたが,ここにきてマクラーレンが本来の速さを取り戻しつつあり,残留するのではないかという見方も出ている。もちろんミハエル・シューマッハが引退した暁には晴れてフェラーリの一員となるだろうが,当人は沈黙を守っている。一説ではロス・ブラウン/テクニカルディレクターとともに引退するのではという噂もあるが,皇帝の去就は未だ闇の中である。コバライネン,ルイス・ハミルトン,ネルソン・ピケ・ジュニア…。若い力が虎視眈々と「未来」を見据えている。

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2006年8月 7日 (月)

波乱の中で見えたもの

 39年ぶりのホンダワークス優勝で幕を閉じたハンガリーGPは,予想どおり波乱に富んだ展開となった。タイトルを争うフェルナンド・アロンソとミハエル・シューマッハがペナルティで後方に沈んだだけでも十分な「波乱」だったが,決勝は今シーズン初のウエットコンディションの荒れたレース展開となった。ただでさえコーナーの連続するハンガロリンクで,過去20年全くなかったウエットレース。コース各所でスピンアウトや接触が多発し,リタイヤが続出した。結果,ホンダのジェンソン・バトンが初優勝。2位にマクラーレンのペドロ・デ・ラ・ロサ,3位にBMWザウバーのニック・ハイドフェルドというフレッシュな顔ぶれが表彰台に並んだ。

 15番手から1周目で一気にジャンプアップ,ペースの上がらないシューマッハを尻目にトップを快走していたアロンソは,ホイールナットの脱落というルノーにしてはきわめて珍しい人為的トラブルで戦列を去った。アロンソのF1初優勝は2003年のハンガロリンクなのだが,昨年も11位と精彩を欠くなど最近はどうも相性が悪いようだ。一方のシューマッハも一時2位まで浮上するが,ドライタイヤへ交換のタイミングを逸し,丸坊主のレインタイヤで苦しい走りを強いられる。最終的にはトラックロッドを破損しリタイアしたものの,デ・ラ・ロサを巧みにブロックするテクニックはさすがであった。

 今回のような雨のレースで思い出されるのが,1993年イギリス・ドニントンパークで行われたヨーロッパGP,マクラーレンの故アイルトン・セナによる「奇跡のオープニングラップ」であろう。非力なフォードV8で当時最強のウィリアムズ・ルノー勢を蹴散らしたその走りは,「レインマイスター・セナ」の伝説として語りぐさとなっている。この例を挙げるまでもなく,レインコンディションはマシンの性能差を小さくし,ドライバーの腕を如実に表す。今回アロンソが見せたオープニングラップの激走は,普段リスクを負うことなくクレバーなアロンソが,チャンピオンとして格の違いを見せつけた瞬間であった。

 今回も我慢のレースを強いられることとなったのがSAF1。デビュー2戦目の山本左近は,スタート直後の1コーナーで何とエンジンストールによりリタイア。今回デビューしたBMWザウバーのロバート・クビサが,途中スピンするも粘り強く完走(最終的には最低重量違反により失格)したことと比べると,何とも不満の残る結果となった。一方の佐藤琢磨は,レインコンディションの序盤こそミッドランドを押さえ込んでいたが,中盤以降はクラッチやギアボックスのトラブルを抱え,我慢の走りを余儀なくされた。それでも何とかチェッカーを受けたことで,チームリーダーの役割を果たしている。波乱のレースを最後まで生き残る力こそ,今のSAF1には一番必要なことなのだから・・・。 

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2006年8月 6日 (日)

ハンガロリンクの罠

 3日間を通して何の波乱もないGPなどあるはずないのだが,今年のハンガリーGPはスタートを前に波乱含みの様相を呈している。昨日ルノーのフェルナンド・アロンソがフリー走行中の黄旗無視と走路妨害により,公式予選タイムに2秒加算のタイムペナルティが言い渡されたことに続き,フェラーリのミハエル・シューマッハにも全く同じ2秒加算のペナルティが課せられた。フリー走行3回目に,ホンダのジェンソン・バトンがエンジントラブルを起こしコース上にストップ,セッション中断の赤旗が提示された。にもかかわらずシューマッハは,2台ないし3台のマシンを追い越したというのである。

 赤旗はコース上で重大なアクシデントが起きていることを示すものであり,それを無視することは危険きわまりない行為として,ペナルティの対象になって当然である。しかも3台も追い越したとなると,「ついうっかり」だけではすまされず,今回のような厳しいペナルティが言い渡されても不思議ではない。しかし,赤旗提示中に前車を追い越すことが出来ないことなど,F1パイロットではなくとも当然知っていることであり,用心深いシューマッハがそんな愚行を行うのかという疑問も残る。ましてやアロンソのペナルティがあっただけに,いつも以上に慎重にならざるを得ない場面でのことである。

 さらに腑に落ちないのは,昨日のアロンソと「全く同じペナルティ」が,シューマッハに言い渡されたことである。レーススチュワードの一貫性のない判定については昨日も示したが,アロンソへのペナルティはタイトル争いに微妙な影を落とした。モナコGPに次いで平均速度の低い,いわゆるミッキーマウスサーキットであるハンガロリンクでの予選ポジション後退は,即優勝争いからの脱落を意味する。マス・ダンパーの一件も含めて,ルノーバッシングともとれる判定に対し,フラビオ・ブリアトーレ代表も「タイトルを奪い取ろうというのか!」と怒りをあらわにしていた。

 そこに来て,圧倒的優位に立ったシューマッハに対する同様のペナルティである。仮にシューマッハが赤旗中に3台抜いたというのであれば,すなわち3度の違反を犯したということになり,シューマッハには3秒のタイム加算措置がとられなければならない。また,フェラーリのロス・ブラウン/テクニカルディレクターの言うように,違反が「ただ1度だけ」だったのであれば,1回の違反で1秒のタイム加算となるはずである。しかしシューマッハに与えられたのは,アロンソと同じ「公式予選タイムに2秒加算」のペナルティ。これで何も疑うなというほうが無理である。今回のペナルティ合戦は両者痛み分けという結果に終わったが,改めて違反に対する判定基準の曖昧さを浮き彫りにした。今日の決勝レース,さらなるハンガロリンクの罠が,大きく口を開けて待っているのかもしれない。 

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2006年8月 5日 (土)

一貫性のない判定

 今シーズンの流れを一気に変えてしまうかもしれないペナルティが,ルノーのフェルナンド・アロンソに与えられそうだ。アロンソが昨日行われたフリー走行中に,イエローフラッグ区間でレッドブルのロバート・ドーンボスを追い越し,更に「異常なスローダウン」をし走路妨害をしたというもの。ハンガリーGPのレーススチュワードはペナルティの詳細を,黄旗追い越しと走路妨害それぞれに対してそれぞれ1秒,合計2秒を公式予選の各ピリオドで加算するとしている。これにより追い越しの難しいハンガロリンクで,アロンソの上位進出は絶望的。タイトル争いに暗い影を落とすペナルティになる。

 ペナルティがレース結果やチャンピオンシップ争いに大きな影響を与えたケースは少なくない。モナコGPでフェラーリのミハエル・シューマッハが,公式予選中に故意にマシンをストップさせたとして,公式予選のタイムを抹消され最後尾スタートを言い渡されたことは記憶に新しい。これによりシューマッハは一時チャンピオンシップの流れを完全にアロンソに奪われている。過去にさかのぼれば'97年,ドライバーズタイトルをウィリアムズ・ルノーのジャック・ビルニューブと争っていたシューマッハ自身も,タイトル争いを接触で終わらせようとしたあげく,シーズンの全ポイントを剥奪されている。

 さて,アロンソのペナルティは自業自得なのだが,問題なのはそのの判定基準が曖昧なことである。違反に対するペナルティは各GPのレーススチュワードが行うが,いかんせんこの判定に一貫性がない。今回のアロンソのような黄旗追い越しや走路妨害に対しては,レース中ならばドライブスルーペナルティや,レース結果へのタイム加算ペナルティが課せられたこともあった。しかし,フリー走行中の違反に対して「1度の違反で1秒加算」というペナルティが課せられるのは今回が初めてである。フリー走行中によくあるのがピットレーンのスピード違反だが,そのほとんどが罰金で済まされている。今シーズンから全レースに帯同するスチュワードもいるはずだが,一貫性のない判定は未だ続いている。

 1990年に現SAF1の鈴木亜久里代表が在籍していたエスポラルース・ランボルギーニは,ローラ社製のシャシーを使用しているにもかかわらず,登録名称が「ラルース・ランボルギーニ」だったことを理由に,全コンストラクターズポイントを剥奪されている。昨シーズン,B・A・Rホンダの3レース出場停止もそうだが,F1シーンにおけるペナルティは,多分に政治的な要素が含まれていることは今更言うまでもない。今回のアロンソへのペナルティにそういった要素はないのかもしれないが,「タイトルを奪い取ろうというのか」というフラビオ・ブリアトーレ代表の怒りも理解できる。マス・ダンパーの問題も含めルノー&アロンソにとっては「泣きっ面に蜂」のハンガリーGPになりそうだ。

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2006年8月 4日 (金)

「オールジャパン」という誤解

 ハンガリーGPを前に,デビュー2戦目となるSAF1の山本左近もコース学習に余念がない。この1週間で一気に移籍市場が活性化したF1界だが,ご多分に漏れずSAF1の周囲も騒がしくなってきた。数日前にミッドランドのクリスチャン・アルバースが,SAF1のシート獲得を目指しているというニュースが流れた。しかし実際のところは,SAF1のマネージング・ディレクターであるダニエレ・オーデットがオファーを出したものの,アルバースは発展を続けるミッドランド残留を希望したとされている。オーデットは,ホンダのアンソニー・デビッドソンにも以前から興味を示しており,願わくば来シーズンから佐藤琢磨のパートナーとして起用したいと考えている。

 さらに興味深いのは,現在GP2シリーズ2位のネルソン・ピケ・ジュニアにもイタリアGP前にテストドライブのチャンスを与えるというものだ。これが即来季のレギュラーシートにつながるものとは考えにくいが,ピケ・ジュニアにとって自らの能力をアピールする場であることには変わらない。来シーズンから第3ドライバーによる金曜日の走行が廃止されることにより,F1候補生はテストなどでF1ドライブのチャンスをつかむことが求められる。SAF1のような新興チームは,かつてのジョーダンやミナルディのような貴重な存在として,彼らに多くのチャンスを与えることになるだろう。

 ここで注意しなければならないのは,SAF1のチームコンセプトである。以前から語られていることだが,SAF1は「オールジャパン」を目的として結成されたチームではない。「再びF1の表彰台に日の丸を」という目標はあるだろうが,そのために何が何でも日本人を2人起用するという意志が鈴木亜久里代表にあるわけではない。したがって,F1進出を目指す日本人にチャンスを与えることはあるだろうが,実力のない者にシートを与えることはないだろう。未だ誤解されたままでいるのは,日本のメディアや一部のスポンサーの意識がそこに行ったままだからである。

 2008年から現在のテクニカル・レギュレーションが改正され,他チームからシャシーの購入が可能となれば,SAF1はホンダのBチームとして機能し始める。本来それがSAF1の真の姿であり,自分たちがチャンピオンチームになろうという意識はないだろう。そうなれば,SAF1は日本をマーケットとしたチーム運営方針を明確に打ち出すことができるであろうが,まずは今シーズンと来シーズンをF1で戦い抜かなければならない。井出有治のライセンス剥奪の例を挙げるまでもなく,「オールジャパン」という妄想にとりつかれていれば,あっという間にチームは消滅してしまう。まずはチームとしての基礎をしっかりと固めること。左近を含め,来季のドライバーラインナップに注目だ。

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2006年8月 3日 (木)

イス取りゲームが始まった

 第3ドライバーのレギュラー昇格が相次いでいる。BMWザウバーが今週末に行われるハンガリーGPで,ジャック・ビルニューブにかわりロバート・クビサを起用するのに続き,ウィリアムズがマーク・ウェバーにかわり,第3ドライバーのアレクサンダー・ブルツを来シーズンから昇格させると発表した。クビカの起用は,ドイツGPでビルニューブがクラッシュしたことによる一時的なものとも考えられるが,チームは今後のドライバーラインナップについて明言を避けている。ハンガリーGPでクビカが印象に残る走りを見せようものなら,ビルニューブの座るシートはもうないかもしれない。

 クビサのレギュラー昇格は既定事項であり,その時期が多少早まっただけのことであるが,ブルツの起用は正直予想外のニュースだった。ブルツの豊富なレース・テスト経験に加え,メカニカルに対する深い理解力,エンジニアに対する的確なフィードバック能力はチーム内でも高い評価を得ており,「速い」「安い」「巧い」のブルツはフランク・ウィリアムズのお気に入りでもあった。しかし,「巧い」の点ではブルツに一日の長があるものの,「速い」の点ではウェバーとブルツ,ふたりの間にさして差はないようにも思える。問題は「安い」の部分。そこに今回の交代劇の裏側が見え隠れする。
 
 是が非でもレギュラードライバーのシートに収まりたいブルツが,契約金など二の次なのに対して,ウェバーがウィリアムズに残留する場合は,大幅な契約金のダウンを受け入れなければならなかったと見られている。昔からマシンには金をかけるが,ドライバーには金をかけないのがウィリアムズである。資金的にも余裕のない中,フラビオ・ブリアトーレに財布を握られたウェバーだったら,安いブルツを選択するのはある意味当然の結論である。ウェバー自身も「チームは現在置かれた状況から,とりわけお金が我々の問題になっていた」と語っており,ウィリアムズの財政難を裏付けている。

 そうなるとブリアトーレが考えなければならないのが,ウェバーの再就職先である。とは言え残されたシートは少ない。マクラーレンかルノーがベストだとウェバー・パパは言うが,こればかりはキミ・ライコネン,さらにはミハエル・シューマッハが進退を決めなければどうにもことは動かない。さらにどちらになったとしても,マクラーレンにはルイス・ハミルトン,ルノーにはヘイキ・コバライネンと,若くて勢いのあるライバルがステップアップのチャンスをねらっている。BMWザウバーのシートはクビサで決まりだろうし,レッドブルはF1候補生を多数抱えている。元々数が少ないF1のシートを守り続けていくのは大変なことである。実力がなければ評価もされないが,実力だけでは生き残れないのもF1界。さて,今年もイス取りゲームが始まった。

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2006年8月 2日 (水)

ディレクシブ不時着・・・

 危惧していたことが現実となってしまった。昨日ディレクシブは,今シーズンのモータースポーツ活動内容の変更を公式サイトで発表した。その内容は,F1プロジェクトおよびGP2を始めとする海外でのレース活動から完全に撤退するというもの。これにより,F1のマクラーレンとのパートナーシップ,DPR(ディビット・プライス・レーシング)とジョイント参戦していたGP2,およびイギリスF3からの完全撤退を余儀なくされた。当然アレクサンダー・ブルツ,ルイス・ハミルトン,クリヴィオ・ピッチオーネなどのマネージメントドライバーとも契約を解消するはずである。

 更に衝撃的だったのが,国内の活動に関してだ。DPRとのジョイント参戦だったフォーミュラ・ニッポンは活動休止。スーパーGTは継続参戦の意向を示していたものの,「継続参戦を模索している」との表現であり,場合によってはモータースポーツそのものから完全撤退することも予想される。フォーミュラ・ニッポンからの撤退については,DPRとのこともありある程度予想できたことだが,シリーズチャンピオンの可能性を残しているスーパーGTからも手を引かざるを得ないとなると,ディレクシブの受けた打撃は予想以上に大きく深いものと考えられる。

 F1を例に挙げるまでもなく,モータースポーツというものはとかく資金がかかるものである。チームはその運営資金のほとんどを,スポンサーからの広告料でまかなっているわけであり,そのスポンサーの撤退はすなわちチームの存続を左右するものとなる。今回のディレクシブのように,資金力にものを言わせて活動をスタートしたものの,あえなく撤退した例はいくつもある。バブリーな時代にチームオーナーとなった日本企業はこの典型的な例であり,マーチを買収したレイトンハウスを始めとして,ラルースの共同オーナーとなったエスポ,アロウズを買収したフットワークと枚挙に暇がない。

 今シーズン始めは飛ぶ鳥を落とす勢いだったディレクシブが,まさかこの短期間にこれだけ失速するとは誰が予想できただろう。この一連の騒動は,2008年からのF1参戦の道が閉ざされたことから始まったことは言うまでもない。参戦カテゴリーを増やし知名度アップに躍起になっていたのも,F1参戦という大目標があったからである。ディレクシブの活動を支えていたアキヤマホールディングスが,そのために莫大な資金を投じたのも,F1に参戦することの先行投資だった。しかし,その道が閉ざされた今,これ以上発展の見込みのないディレクシブに多額の資金を投入することは意味をなさない。金の切れ目が縁の切れ目という言葉がある。疾風のごとくモータースポーツ界に現れたディレクシブが,再び大空へ羽ばたくことはもうないのだろうか・・・。

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2006年8月 1日 (火)

KINGに似合うQUEEN

 ミハエル・シューマッハ&ブリヂストンのハットトリックはあるのか?SA06はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?日曜の夜は多くの期待を抱えながら,フジテレビの放映時間を待った。(もちろん地上波で・・・。)今年F1中継を始めて20周年となるフジテレビでは,中継前にF1関連の特別番組を放映するなど様々な企画を展開している。フォーミュラニッポンの会場でノバ・エンジリアニング製作の2シーターフォーミュラを走らせたりしているのもその一環である。もちろん地上波中継もテーマ曲からセットまでリニューアルされたが,その前に流されているアバン映像が注目されている。

 サンマリノGPでの「最後の聖戦」も思わずグッとくる内容だったが,日曜日に放映されたドイツGPのアバンもクオリティーが高かった。3連勝をねらいひた走るシューマッハと,もう一度シーズンの流れを取り戻したいフェルナンド・アロンソの攻防。そして待望のグランプリデビューを果たした山本左近のフラッシュを,QUEENの大ヒット曲「Don't stop me now」にのせてテンポよく作り上げていた。内容は非常にわかりやすくある意味ベタベタではあるのだが,曲のスピード感とも相まって素直に「カッコイイ」と思える出来映えとなっていた。(左近のあすなろF1パイロットはどうかと思うが・・・。)

 QUEENの曲と言えば,ドラマ「プライド」のテーマ曲として使用された「I was born to love you」が広く一般に知られている。最近ではSAF1のスポンサーでもあり,佐藤琢磨本人が出演するアサヒ「スーパーH2O」のCM曲としても使用されており,F1ファンにとっても耳馴染みの曲である。上記の「Don't stop me now」は,過去にも「COSMO OIL・スーパーマグナム」のCM(コース上に張られた巨大な幕を,セルモのF3000マシンが突き破る!)で使用されていた。F1でもシリーズチャンピオンを獲得したフェラーリチームが「We are the Champion」を合唱するなど,QUEENの曲は広く世界で愛されている。どの世界でも,「KING」には「QUEEN」がよく似合うものである。

 さて,そのフェラーリ&シューマッハであるが,ドイツGPの1-2フィニッシュで一気に勢いづいてきた。前半戦はなかなか波に乗れず「落日の皇帝」呼ばわりされていたが,ここに来ての復活劇で各メディア手のひらを返したように賞賛の嵐である。来期の去就について,シューマッハはその進退を明らかにしていないが,タイトルを争えるポジションにいる限り「引退」の2文字が彼の口から出ることはないだろう。そうなればフェラーリ・シューマッハ,マクラーレン・アロンソとなり,注目のキミ・ライコネンはルノー移籍というのが現実的なラインナップとなる。とは言えまだシーズン中盤。来シーズンの予測は意味をなさない。何が起きてもおかしくないのがF1の世界なのだから・・・。

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