« 去るものは追わず・・・ | トップページ | 目を覚ませフランク! »

2006年8月20日 (日)

開発と雇用のバランス

 某消費者金融のCMコピーではないが,どの世界でも注意しなければならないのは「バランス」を大切にすることであろう。組織を大規模にすれば様々な開発も短時間で進むだろうが,当然それにかかるコストも比例して大きくなる。コストカットを目論むFIAがGPMA側に突きつけた「F1エンジン凍結案」が合意になった場合,各エンジンメーカーは大幅なリストラを敢行しなければならないようだ。現在ウィリアムズとトロ・ロッソにエンジンを供給しているコスワースでは,「現在300名いるスタッフのうち約40%を解雇せざるを得ない」とFIAに警告をしている。

 それに対するマックス・モズレーFIA会長の見解は,予想通り冷淡なものだ。そもそもエンジン凍結案の目的がコストカットにあるのだから,それにともなうスタッフの解雇はFIAにとって願ったりかなったりのものである。肥大化してしまったF1予算が少しでも減少するのであれば,多少の雇用不安など何のことはないと考えているのであろう。現在各チームにエンジンを供給する7つのメーカーのうち,コスワース以外は全て自動車メーカーである。自動車メーカーはエンジン開発が凍結されてしまっても,人員を他の部門に回すことで対応できるだろうが,プライベートメーカーのコスワースはそうもいかない。

 エンジン規定の変更が,結果としてコスト増加を生んできたとFIAが理解したのはつい最近のことである。一昔前は,エンジンの性能が直接マシンのラップタイムとして現れていた。そのためFIAはエンジン規定を変更することで,ラップタイムの上昇を抑えようと躍起になった。ターボからNAへ,3.5V12から3.0V10そして2.4V8・・・。その度に各エンジンメーカーは,出力や回転数をほんの少し上げるために,莫大な資金を投じてきた。しかし,マシンのトータルパッケージが重要視される現代F1に於いて,エンジンの占める割合はそれほど大きくはない。その結果ようやくFIAは,重箱の隅をつつくような開発は無用であるという結論に達したのである。

 さて,仮にエンジン凍結案が合意に至ったとして,本当にF1にかかるコストは減少するのだろうか?先にも述べたように,現代F1マシンは馬力よりも空力に重点を置いて開発されている。ワークスチームは今までエンジンに回していたスタッフと資金を他の部門に回すだけで,結局以前と何ら変わりないということも考えられる。いや,細部での分業化がより一層進むことで,今まで以上の資金が投じられるようになることすらあり得るだろう。レースは激しい開発競争を生み,そこに新たな雇用を生み出す。しかし,一度そのバランスが崩れてしまったら,元に戻すのは容易なことではない。エンジン凍結案が,さらなる開発競争を生まなければよいのだが・・・。

|

« 去るものは追わず・・・ | トップページ | 目を覚ませフランク! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/185587/11526064

この記事へのトラックバック一覧です: 開発と雇用のバランス:

« 去るものは追わず・・・ | トップページ | 目を覚ませフランク! »