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2006年9月29日 (金)

反撃の時が来た!

 全会一致という議決方式は,お互いの思惑が一致しないとなかなか解決を見ることはない。意見をすりあわせるためには長い時間をかけた議論が必要になるし,最後まで抵抗する者がいれば,永久に交わることのない議論となる。SAF1が他チームに提案したカスタマーシャシー案も,この全会一致の壁の前に跳ね返されたようだ。2008年からはシャシーの販売が自由化されるが,かねてよりSAF1はそれを1年前倒しし,来シーズンからホンダシャシーを使用できるように多方面に働きかけていた。しかし,これに反対する数チームが最後まで承認せず,この案は却下されることとなった。

 この全会一致方式を,SAF1のダニエレ・オーデット/マネージング・ディレクターは,「スポーツでは非現実的であり,不可能と同義語だ」と非難している。しかし,こうした重要なルールが多数決で決定されるとしたら,むしろその方が反スポーツ的である。もしそうなればチーム同士の駆け引きはより一層激しいものとなり,メーカ対プライベーターやFIA対GPMAなど,過去にも起きた無用の派閥争いを助長しかねない。ただでさえホンダ陣営は,昨シーズンに起きた燃料タンク不正疑惑で,FIAから睨まれている。ここで新たな火種を生むより,おとなしくしている方が身のためと判断したのか。そうしている間にトロ・ロッソが,来シーズンもレッドブルの「RB02」を使わないといいが。

 今回のカスタマーシャシー案が拒絶されたことにより,来シーズンも各チームは自前のシャシーを開発することとなった。もちろんSAF1はホンダシャシーを使用したかったのだが,今回の提案は「ダメ元」のつもりで行ったのだろうし,オーデット氏の言う「来シーズンの計画を変更」とまで大きな問題でもない。すでにチームは,来シーズン用の新型車「SA07」の開発に着手しており,オフシーズンをかけて開発・製作が続けられるだろう。もっとも資金的に限られた現在の状況では,完全なニューマシンというわけにもいかず,現在の「SA06B」をベースに正常進化させるしかない。もしモノコックが新設計されたら,それだけでも十分にSAF1は「進歩」したと言えるだろう。

 さてそのSAF1だが,中国GPフリー走行2回目で,サードドライバーのフランク・モンタニーが,トップから1.7秒遅れの7番手と健闘した。エンジン交換を実施した佐藤琢磨は,マイレージを極力抑えるため周回数を控えている。レッドブルやトロ・ロッソが,今シーズンのマシン開発をストップしている中で,最後までで積極的な開発を行ってきた成果が,少しずつ実を結んでいる。鈴鹿を前にチームの士気も上がってきているようで,「モチベーションはトップチームにも負けない」と,琢磨もチームを評価している。グリッド降格ペナルティは残念だが,いよいよライバル達に反撃開始の時が来た!

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2006年9月28日 (木)

取り戻した健全な精神

 人間はとても弱い動物である。いくら優秀な能力を持っていても,それを最大限発揮できる精神状態でなければ,持てる力を十分発揮することはできない。レーシングドライバーとてそれは同じ事。常識では考えられない超高速の世界で戦うためには,健全な精神が欠かすことのできない要素になる。F1を電撃引退しNASCARの世界に身を投じたファン・パブロ・モントーヤは,正に健全な精神を取り戻したと言えるだろう。その結果が,初テストで31人中6番手というタイムであり,ヘルメットの中で目をキラキラさせてドライブするモントーヤの表情が想像できる。

 アメリカン・モータースポーツの世界からF1に進出したドライバーは,口をそろえて「F1は閉鎖的だ」と語っている。確かにアメリカン・モータースポーツは可能な限りのイコールコンディションの中で,常に観客を意識したレースを展開している。もちろん参加しているドライバーは真剣勝負。イコールコンディションであるが故に競争も激しく,レースごとにウィナーが変わることも珍しくない。それは何もモータースポーツに限ったことではなく,メジャーリーグやバスケットボール等全てのスポーツが,エンターテイメント性を強く意識する「お国柄」なのである。

 そんな開放的な世界から比べれば,F1を閉鎖的な世界と感じるのも当然である。マイケル・アンドレッティ,アレッサンドロ・ザナルディ,クリスチャーノ・ダ・マッタ,そしてモントーヤ。優秀な能力を持った多くのチャンピオン経験者がF1で大成できなかったのは,F1に参戦しているドライバーとの腕の差があったのではなく,F1という環境に適応できず,健全な精神状態を保てなかったことが大きく影響している。その逆にナイジェル・マンセルは,持ち前の暴れん坊ぶりをアメリカでも十分発揮し,素直にレースを楽しんでチャンピオンまで獲得してしまった。結果だけでアメリカン・モータースポーツのレベルを低いと見る者がいるが,これは大きな誤解と言っていいだろう。

 さて,FIAの意識調査によって海外でも多くの支持を集めていることが改めて確認された佐藤琢磨だが,彼もまた健全な精神を取り戻したドライバーの一人である。昨シーズンの琢磨は,結果のでないストレスから多くのレースを無駄にし,最終的にB.A.Rから解雇されるという不遇のシーズンを送った。しかし今シーズンの琢磨は,新興チームSAF1の精神的支柱として,昨シーズンとは別人のように生き生きとしたレースしている。もちろん結果はなかなかついてこないが,純粋に今の状況を楽しみつつ向上させようとしていることは,誰の目にも明らかなことである。健全な精神を取り戻した琢磨が,地元鈴鹿でどんな走りを見せるのか。日本GP決勝まで,あと10日である。

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2006年9月27日 (水)

気をつけろアロンソ・・・

 日本は秋の長雨という,梅雨と同じくらいうっとおしい季節を迎えているが,今週末に上海サーキットで行われる中国GPも,残念ながら雨の予報が出ている。ミハエル・シューマッハ現役引退という衝撃が走ったイタリアGPから3週間。2006年のF1サーカスは,いよいよクライマックスに突入しようとしている。序盤戦はルノー&フェルナンド・アロンソの独走かと思われたタイトル争いだが,中盤戦以降ルノーは失速。現在は引退発表をしたことでチームが一丸となっている,フェラーリ&シューマッハが優勢である。ルノーにっとってはアロンソが移籍することも,プラスには働かないだろう。

 そのアロンソは,今もフェラーリ&シューマッハに対して激しい憎悪を抱いている。もともとタイトルを争うライバル同士,ある程度の確執はあったのだが,マス・ダンパー禁止問題や前回の予選タイム剥奪ペナルティが,その感情の炎に油を注いでしまった。彼らが今まで行ってきたアンフェアな戦い方が,根っからのファイターであるアロンソには気に入らない。「FIAはフェラーリ贔屓」という点についても,撤回どころかますますライバル心をむき出しにしている。アロンソはそういった感情をモチベーションとしているのだろうが,あまり露骨に表現すると自分自身の首を絞めることになりかねない。

 「F1はスポーツではなくなってしまった。お金と政治の争いだ。」サンケイスポーツのインタビューに対し,アロンソはそう話している。しかし,元来F1は「スポーツ」と呼ぶべきものなのか,そこから考え直さなければならない。ジャーナリストのピーター・ウィンザー氏は「F1は金持ちの一部特権階級による,プライベートクラブであったことを忘れてはならない。」と語っている。自分たちの「プライベートクラブ」に対して,来る者は拒まず去る者は追わずでは,今現在のF1は存在しなかった。そこには密室で決められてきた,幾つもの契約が存在したのだろう。F1の歴史を振り返れば,今回のようなことは数多く起こってきたことであるし,お金と政治の争いは今更始まったことではない。

 「正々堂々と勝つ!」いかにもファイターらしい,アロンソの偽りざる気持ちであろう。しかし,現在のF1界を全て否定することは危険である。ただ単純に,地球上で最も速いマシンを操る最も速い者を選ぶことだけが,F1の目的ではないのだ。アロンソの熱い感情は,オリンピックやサッカーワールドカップと並ぶ「世界3大スポーツ」にまで発展したF1の現在位置を,著しく変化させてしまうことになりかねない。もっとも,25歳の史上最年少チャンピオンには,そんなつもりは毛頭ないないだろう。それでも尚,彼の言動に対を苦々しく思っている「プライベートクラブ」の連中が,彼を黙って見過ごしてくれるとも思えない。ファンとしては,何ごともなくトラックで決着をつけてほしいが・・・。

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2006年9月26日 (火)

F1はプライベートクラブ

 日本は秋の長雨という梅雨と同じくらいうっとおしい季節を迎えているが,今週末に上海サーキットで行われる中国GPも,残念ながら雨の予報が出ている。ミハエル・シューマッハ現役引退という衝撃が走ったイタリアGPから3週間。2006年のF1サーカスは,いよいよクライマックスに突入しようとしている。序盤戦はルノー&フェルナンド・アロンソの独走かと思われたタイトル争いだが,中盤戦以降ルノーは失速。現在は引退発表をしたことでチームが一丸となっている,フェラーリ&シューマッハが優勢である。ルノーにっとってはアロンソが移籍することも,プラスには働かないだろう。

 そのアロンソは,今もフェラーリ&シューマッハに対して激しい憎悪を抱いている。もともとタイトルを争うライバル同士,ある程度の確執はあったのだが,マス・ダンパー禁止問題や前回の予選タイム剥奪ペナルティが,その感情の炎に油を注いでしまった。彼らが今まで行ってきたアンフェアな戦い方が,根っからのファイターであるアロンソには気に入らない。「FIAはフェラーリ贔屓」という点についても,撤回どころかますますライバル心をむき出しにしている。アロンソはそういった感情をモチベーションとしているのだろうが,あまり露骨に表現すると自分自身の首を絞めることになりかねない。

 「F1はスポーツではなくなってしまった。お金と政治の争いだ。」サンケイスポーツのインタビューに対し,アロンソはそう話している。しかし,元来F1は「スポーツ」と呼ぶべきものなのか,そこから考え直さなければならない。ジャーナリストのピーター・ウィンザー氏は「F1は金持ちの一部特権階級による,プライベートクラブであったことを忘れてはならない。」と語っている。自分たちの「プライベートクラブ」に対して,来る者は拒まず去る者は追わずでは,今現在のF1は存在しなかった。そこには密室で決められてきた,幾つもの契約が存在したのだろう。F1の歴史を振り返れば,今回のようなことは数多く起こってきたことであるし,お金と政治の争いは今更始まったことではない。

 「正々堂々と勝つ!」いかにもファイターらしい,アロンソの偽りざる気持ちであろう。しかし,現在のF1界を全て否定することは危険である。ただ単純に,地球上で最も速いマシンを操る最も速い者を選ぶことだけが,F1の目的ではないのだ。アロンソの熱い感情は,オリンピックやサッカーワールドカップと並ぶ「世界3大スポーツ」にまで発展したF1の現在位置を,著しく変化させてしまうことになりかねない。もっとも,25歳の史上最年少チャンピオンには,そんなつもりは毛頭ないないだろう。それでも尚,彼の言動に対を苦々しく思っている「プライベートクラブ」の連中が,彼を黙って見過ごしてくれるとも思えない。ファンとしては,何ごともなくトラックで決着をつけてほしいが・・・。

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2006年9月25日 (月)

勝利以上の何か

 組織の規模が大きくなれば,それを維持することも大変なことになる。適材適所に人材配置をしなければ大きな組織は円滑に機能しないし,規模に比例して当然資金もふくれあがる。しかしある程度の規模がなければ,ライバルに後れをとることも事実である。要は,このバランスをとることが非常に難しいのだが,これを高い次元で安定させているのがルノーであろう。ルノーはチャンピオンチームながら,比較的少ない人数で構成されたチームである。カルロス・ゴーン体制の中では,湯水のように資金を使うわけにも行かず,結果として非常にコストパフォーマンスに優れたチームとなったわけである。その代表を務めているのが,金にはめっぽうがめついフラビオ・ブリアトーレというのも頷ける。

 F1チームは2台のマシンをグリッドに走らせるために,多くのスタッフを雇っているが,ブリアトーレ代表はその中でもトヨタとマクラーレンを「浪費チーム」として非難している。純粋にチームスタッフで比較をしてみると,最も多くのスタッフを抱えているのはトヨタと言われており,その数は1000人に迫る。しかしこれには,裏の事情がある。トヨタが本拠地としているドイツは労働基準法が厳しく,1週間あたりの労働時間はイギリスの70%程しかない。したがって,トヨタがイギリスに本拠を置くチームと同じ労働量を確保するためには,必然的にスタッフの数を増やさなければならないのである。

 一方のマクラーレンは,多少趣が異なる。このチームはもはや純粋なF1チームではなく,小規模の自動車メーカーなど足元に及ばない「企業」である。そのファクトリーである「マクラーレン・テクノロジーセンター」は,ファクトリーと言うよりもマクラーレングループ企業18社をまとめた本拠地であり,当然スタッフの人数も圧倒的に多い。プライベートチームだったマクラーレンを長期的なチーム戦略で蘇らせ,ここまで巨大な「企業」に育て上げたロン・デニス代表の経営手腕は見事なものである。マクラーレンはメルセデスに買収されれば,更なる成長を遂げるだろう。

 F1に参加するチームやドライバーは誰しも勝つことを目標に,日々終わりのない努力を続けているが,結果として勝者となれるものは少ない。以前SAF1のダニエル・オーデット/マネージング・ディレクターは,「チームのスタッフを120人以上に増やすことはない」と語っていた。この人数でできることは限られており,常識的に考えてSAF1が勝てるチームになるのは難しい。しかし,そこには勝利以上の何かをつかみに,F1という魑魅魍魎の住む世界へ飛び込んでいった,鈴木亜久里代表の想いがある。先日開催された「モータースポーツジャパン2006」での,亜久里代表の言葉を紹介しよう。
『優勝はホンダにしてもらいたいよね。でも,鈴鹿のお客さんはウチがもらったよ!』

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2006年9月24日 (日)

「体感」モータースポーツ!

 サーキットという閉鎖的な空間で行われているモータースポーツは,その迫力を「体感」できる機会が他のスポーツに比べ少ないため,一般層になかなか受け入れられない弱点を持っている。モータースポーツが広く文化として定着している欧米ならともかく,暴走族とさして変わらないと思われていた日本では,モータースポーツの本質を一般層に認知させる必要があった。近年は日本各地で様々なイベントが展開され,モータースポーツに触れる「機会」は多くなった。しかしそのほとんどが,車両展示やトークショーなどであり,モータースポーツを「体感」するところまでは発展していなかった。

 もちろんそれらが悪いというわけではないが,本当にモータースポーツの魅力を伝えるのであれば,実際にマシンが走行している姿を見せるのが最も手っ取り早い。視覚だけでなく,視覚や聴覚などあらゆる五感に訴えかけることができて初めて,「体感」という領域に達することができる。そんなコンセプトから生まれたのが,昨日と今日行われた「モータースポーツジャパン2006」であった。サーキットに来る者を受け入れるだけでなく,サーキットの外にモータースポーツを丸ごと持って行く,いわゆるモータースポーツの出前である。しかもそれが東京お台場で入場無料となれば,コアなファンはもちろん一般層も確実に取り込むことができる。

 実際足を運んでみて感じたことだが,この目論見はズバリ的中していた。会場には子どもを連れたファミリーやカップルなどが数多く訪れており,モータースポーツにそれほど詳しくない人でも安心して「体感」できる,ゆったりとした雰囲気を持っていた。メインステージでは,鈴木亜久里SAF1代表らの親しみやすいトークに多くの人が耳を傾け,走行エリアでは数メートル先を爆音を立てて走り抜けるホンダRA106に目を奪われている。空気を切り裂くエキゾーストノート,ドーナツターンで巻き起こる煙の臭い。その全てが初めて見る人にとっては新鮮であったろうし,充実した内容であった。今後もモータースポーツの裾野を広げるため,毎年継続して開催してもらいたいと感じた。

 この「モータースポーツジャパン2006」と同日開催で,トヨタがメガウェブで「DREAM DRIVE DREAM LIVE 2006」を行ったが,こちらも大盛況で多くの人が訪れていた。この二つのイベントが融合し,トヨタとホンダのF1マシンがサーキット以外の場所で走行したことも画期的であった。しかし,双方の客層や雰囲気に微妙な違いがあったことも事実である。商業的な見地から言えば,メガウェブでのイベントにも大きな意味があるのだろうが,果たしてどの程度モータースポーツが理解されたのか疑問も残る。まぁ,あの手この手で盛り上げないと,なかなか食いついてこないのはわかるが・・・。

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2006年9月22日 (金)

混迷のシルバーストーン

 ドライバーにとって最も幸せなことは,言うまでもなくレースを走ることである。したがってテストはあまり好きではないドライバーも多い。一昔前は,そういったドライバー達も渋々テストを行っていたが,近年は各チームとも専属のテストドライバーを抱えているので,レースドライバーはゆっくり羽を伸ばすこともできる,しかし,それが自ら望んだものか,それとも意図的に外されたかではだいぶ事情が異なる。3日間に渡ってシルバーストーンで行われた合同テストでは,テストの内容や結果はともかく,各チームの来シーズンを睨んだ微妙な駆け引きが興味をそそった。

 一番の驚きは,SAF1のサードドライバーであるフランク・モンタニーが,トヨタのステアリングを握ったことに尽きる。このことは「モンタニーを手放すな!!」で語ったので割愛するが,注目すべき点は他にもある。先週のへレステストに続き,シルバーストーンにもフェルナンド・アロンソの姿がなかったことである。マクラーレンのキミ・ライコネンも不在で,来シーズン移籍が決まっている両名がそろって今回のテストを欠席している。ルノーはアロンソのテスト不参加を,イタリアGPで痛めた膝の影響だとかプロモーション活動だとがと説明しているが,果たして真相はどうだろうか。ムジェロやフィオラノで,フェラーリが精力的にテストを重ねているのとは対照的な光景である。

 シーズン終盤に行われるテストは,直前に迫ったレースに向けてのテストと平行して,来シーズンに向けた先行開発をする場合が多い。そのため来シーズンライバルチームに移籍するドライバーに,わざわざその役目をさせることは少ない。事実ウィリアムズがトヨタエンジンを搭載してテストしているが,来シーズンレッドブルに移籍の決まっているマーク・ウェバーは,一連のテストに全く参加していない。仮に彼らにテストをさせたとしても,技術的な漏洩はさほどのこともないかもしれない。プロフェッショナルなF1チームが,感情的な面からドライバーを外すとは考えにくいが,マシンを作っているのも操っているのもまた同じ人間である。

 最後に,来シーズン期待のルーキー達について。今回のテストは,マクラーレンのルイス・ハミルトンとルノーのヘイキ・コバライネン&ネルソン・ピケJrの走りに熱い視線が注がれていた。タイム的にピケJrが終始リードしていたが,コバライネンも僅差で続き,ハミルトンも周回を重ねるにつれ確実にタイムを削ってきた。シューマッハに続くべきベテランに勢いがない今,彼ら若い世代の台頭が,一気にF1界の世代交代を加速させるだろう。混迷のシルバーストーンが見せていたのは,近い将来のタイトル争いなのかもしれない。そこに加わる日本人ドライバーがいないのが,何とも寂しい・・・。

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2006年9月21日 (木)

SAF1よ,鶏口を目指せ

 「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざがある。決して追いつかないワークスを追いかけるも,セカンドベストを争った方が注目もされやすい。SAF1の目指すところは,まさにこの「鶏口」であり,プライベーターの頂点に立つことが最大の目標となる。彼らには残念ながら,潤沢な資金も優秀な技術力もない。であるならば,優勝争いはホンダに任せておいて,自分たちは身の丈にあったポジションの獲得を目指さなければならない。現実問題として,これから先SAF1が優勝争いやタイトル争いに絡んでくることなど,まずあり得ないことだろう。

 スパイカーに加入したマイク・ガスコイン/チーフ・テクノロジー・ディレクターは,「チームが勝利するのは2009年以降」と語っているが,彼らとて同じである。たとえシャシー販売自由化により,スパイカーがフェラーリのマシンを使用したとしても,勝利を挙げることは非現実的だろう。では何のためにF1に参戦しているのかと言われそうだが,それはそれで彼らにはプライベーターとしての明確な役割がある。今後はワークスから技術的,資金的な援助を受ける代わりに,テスト開発を担ったり若手ドライバーを積極的に起用したりと,双方に利益のある仕事を分担することができる。

 自動車メーカー主導となった現代F1で,メーカーから直接支援を受けないチームが勝利を挙げるのは至難の業である。ワークスとプライベーターの間には,埋めようのない圧倒的な差があり,それは同じ規定のシャシーとエンジンを使いながら,明確なクラス分けを必要とするほどにまで拡大している。イギリスF3などには,型落ちシャシーによるフレッシュマンタイトルが存在するが,2008年からは,現行のコンストラクターズタイトルとは別に,シャシーを購入しているチームの為のタイトル,いわゆるプライベータータイトルが新設されると,プライベーターの意欲も更に増すだろう。

 さて,シルバーストーンで貴重なプライベートテストを行っているSAF1だが,トヨタでは昨日に引き続き,フランク・モンタニーが周回を続けている。モンタニーについては「チームに無断でトヨタのテストに参加した」という話もあれば,「ダニエレ・オーデット/チームマネージャーが,トヨタに貸し出した」という情報もある。その真相は定かではないが,いずれにせよ残り3戦は,今まで通りSAF1のサードドライバーを務めるようである。今シーズンGP2に参戦していた吉本大樹を,日本GPで起用する可能性もあるが,これはスポンサー次第だろう。吉本が実力のあるドライバーであることは否定しないが,ぶっつけ本番でたった2時間乗ったところで,何もできずに終わるだけだろう。しかし,レギュラードライバーのタイム差が3秒ではどうにも・・・。

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2006年9月20日 (水)

モンタニーを手放すな!!

 流れがスムーズな時はとんとん拍子にコトは運ぶのだが,一度悪い流れに乗ってしまうとその先には恐怖の「負の連鎖」が待っている。ハンガリーGPで待望の新車,SA06を投入してから,SAF1はこの負の連鎖を始めている。新車投入はチームにとって大きな上昇気流をつかむきっかけになるはずだった。しかし,頻発するマシントラブルがその行く手を遮っている。それに加えチームは,貴重な開発ドライバーであるフランク・モンタニーを失うことになるかもしれない。昨日から始まったシルバーストーン合同テストで,モンタニーはトヨタTF106Bのステアリングを握った。

 SAF1におけるモンタニーの重要性は,「モンタニー続投の意味」「サードドライバーの明暗」で何度も指摘してきた。プライベートテストも出来ない新興チームには,与えたれた役割を確実に遂行できる優れたテストドライバーが欠かせない。モンタニーがサードドライバーとしてベーシックセットを担当することで,レギュラードライバーはマシンをいたわりつつ,タイヤ比較などの別メニューに専念できる。イタリアGPのフリー走行で,モンタニーが10番手のタイムを計測したことは,チームに大きな勇気を与えた。やっとF1で戦えるだけの体制を整えたSAF1にとって,このタイミングでモンタニーを失うことは大きなダメージになりかねない。

 これ以上ないどん底の状態からスタートしてたSAF1は,後は上昇の階段を上っていくだけのはずだった。しかし,来シーズンに向けて加速していかなければならないこの時期に来て,SAF1は息切れしているようにも見える。限られた時間と資金の中で開発されたSA06は,十分なテストも行われないまま実践投入された。やむを得ずグランプリで熟成を進めることになるだが,週末の走行時間は限られている。特に油圧関連のトラブルは深刻で,新車投入後3戦を経過して尚,マイナートラブルは出尽くされていない。そのためチームは貴重な走行時間を削って対処せざるを得ず,セットアップも十分決まらないままレースを向かえることとなる。それでは出る結果も出ようがない。

 弱小新興チームにとって,人的な損失は是が非でも避けたいことである。モンタニーは残り3戦をSAF1で走るかどうか,明確な回答をしていない。オリビエ・パニスに代わり,来シーズンからテストドライバーを務めると思われていたモンタニーが,今回のテストからトヨタに合流したことはある意味衝撃的である。積極的に新人ドライバーを起用するスパイカーと違って,SAF1はサードドライバーをルーキーに任せる余裕などない。もし鈴鹿で,日本人の若手を起用しようなど考えているのなら,チームは更に負の連鎖にはまっていくことになるだろう。今からでも遅くない。モンタニーを手放すな!!

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2006年9月19日 (火)

裏方達の就職活動

 優秀なハードを開発するには,「裏方」による努力が欠かせない。来シーズンのドライバーラインナップが続々と決まる中,F1チームの裏方であるテストドライバーの就職活動も忙しくなってきた。チームにとっても,優秀なテストドライバーの確保は重要な問題であり,金の卵を発掘する眼力が求められる。ヘイキ・コバライネンのレギュラー昇格が決まっているルノーは,現トヨタのテストドライバーであるリカルド・ゾンタと,今シーズンGP2ランキング2位のネルソン・ピケJrを就任を発表した。フェラーリ&マクラーレンは,今シーズンと大きく変動することはないと思われるが,中堅以降のチームのラインナップはこれから本格化することになる。

 まず注目されるのはトヨタである。昨日,長年裏方としてチームを支えていた,オリビエ・パニスの引退が発表された。ゾンタもチームを離れるので,トヨタのテストドライバーは現在空席の状態にある。そこに名前が浮上しているのが,現SAF1のサードドライバーを務めるフランク・モンタニーがである。テスト経験豊富なモンタニーの加入は,トヨタとしても歓迎するものであろう。TDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)の一員で,現在ユーロF3を戦っている,平手晃平,中島一貴,小林可夢偉の日本人トリオも,来シーズン中に一度はテストドライブのチャンスを与えてもらいたいものである。

 ホンダは依然として見えてこない。現在第3ドライバーを務めているアンソニー・デビッドソンは,来シーズンSAF1への加入が以前から噂されている。ニック・フライ代表も,「アンソニーにはSAF1でドライブしてほしい」と,移籍に前向きな発言をしており,実現の可能性は高い。そうなるとジェームス・ロシターが後任候補となるだろうが,トップチームのドライバーと比較すると若干見劣りする。トヨタもそうだが,ホンダもF3やGP2を戦う有望株を積極的に起用し,育成しようとは考えないのだろうか。デビッドソンに6年間もテストドラーバーを任せっきりにし,次世代のドライバーを育成しなかったツケを払わされるときが来るかもしれない。

 そう考えると,先見の明を持ってテストドライバーを起用しているのは,旧ザウバー時代から新人発掘に秀でているBMWザウバーであろう。今季はロバート・クビサという超新星を発掘したが,その後任がまたも驚異的な能力を発揮しているセバスチャン・ベッテルである。ミッドランド~スパイカーも,積極的に若手を起用している。今シーズンも3人の第3ドライバーを起用したが,印象的な走りを披露していたエイドリアン・スティールを日本GPで再起用。さらに中国GPではGP2ランキング3位のアレクサンドレ・プレマを,最終戦ブラジルGPでは,同6位ののアーネスト・ビソを,第3ドライバーとして起用することを予定している。SAF1もこれに続いてほしいが,まずは生き残ることが先決かなぁ。

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2006年9月18日 (月)

モータースポーツの特異性

 モータースポーツを根底から支えているのはファンの力であり,それを重要視しているからこそ,サーキットの興奮をできるだけリアルに世界中に発信する努力がなされてきた。その結果が,FOM(フォーミュラ・ワン・マネージメント)の収益向上に結びついたということといったところだろうか。年間18戦が行われるF1サーカスに於いて,直接サーキットに訪れるのは百数十万人といったところであろう。しかし,全世界では何十億という人間がメディアを通してその動向を見つめている。そこに目を向けたリアルタイムの情報発信,例えば,近年公開されるようになった,チームとドラーバーの無線交信などは,自宅のリビングにいながらその臨場感を楽しめるものとなっている。

 スポーツと名の付く競技は多種多様に存在するが,その中でもモータースポーツは,特異な分野である。マシンという道具を操るドライバーの存在は,直接相手とぶつかり合う他の競技と比べ,ヒューマンスポーツの印象が薄い。もちろんコクピットの中のドライバーは,己の持てる力を最大限発揮し,迫り来る音速の壁と強烈なGフォースの中を必死に戦っている。しかし,レース中のドライバーの表情や息づかいは,端で見ている側にはなかなか伝わらない。そのため,レースを見続けている熱心なファンはともかく,一般の人が感情移入できる状況があまりにも少ないのだ。

 直接モータースポーツに触れる機会が少ないことも,なかなかこの分野が理解されない原因のひとつだ。野球やサッカーであれば,街の至る所で目にすることもあろうが,最先端のマシンが爆音を立てて走る姿を直接目にする機会は,なかなか訪れるものではない。週末の夜に首都高速やちょっとした峠にでも行けば,別の意味で豪快な走りをするマシンが見られるが,それはモータースポーツではなくただの「暴走」である。しかし,それらをモータースポーツと同類と捉えている人間が多いのも,モータースポーツが文化としてこの国に根付かない要因となっている。

 こうした状況を打開すべく,日本でも近年様々な取り組みがなされている。その中でも今週末に行われる「モータースポーツジャパン2006」は,今までにない画期的な試みである。東京・お台場での開催,しかも入場を無料とした点は,ファン以外にもモータースポーツに触れてもらい,その存在を理解してもらえるという点で大いに評価できる。そして何より,自動車メーカーがその枠を超え協力体制を敷いていることは,今後に期待のできるイベントとなる。これらを続けることにより,一般社会におけるモータースポーツへの認識に変化が起こるかもしれない。とは言え日本人は熱しやすく冷めやすい人種だから,地道に続けることが求められるが・・・。

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2006年9月16日 (土)

未来をつかむ適応力

 毎年のことながら,シーズン終盤戦が来ると来年度の話があちらこちらから聞こえてきて,外野で見ているほうとしては面白い。チーム首脳陣は,来シーズンのパッケージを決めるために奔走しているだろうが,ドライバーも生き残りをかけて必死に戦っている。F1のシートは限られているので,そこからあぶれた者たちは,別のカテゴリーに生きる道を探すか,引退して第2の人生を歩むかという選択を迫られる。ミハエル・シューマッハのように,自らの意思で引退を表明できるケースは稀であり,大抵の場合はチームからの解雇や,アクシデントによりF1フィールドから姿を消すことになる。

 今シーズンF1から引退するのは,シューマッハとファン・パブロ・モントーヤ、ジャック・ビルニューブの3名。これに加えて,3戦を残してレッドブルから解雇されたクリスチャン・クリエンもシートが怪しい。来シーズンはヘイキ・コバライネンやルイス・ハミルトンのなど,GP2上がりの注目ルーキーがグリッドにつく。さらには,ネルソン・ピケJrやセバスチャン・ベッテルのように,粋のいいリザーブドライバーが後には無数に控えているので,F1学園の現役生たちもうかうかして入られない状況にある。来シーズンで契約の終了するベテラン勢にとっては,1戦1戦が勝負のレースになってくる。

 F1にステップアップするルートは様々だが,GP2の誕生以降,このカテゴリーの成績優秀者はもれなくF1のシートを獲得している。昨年度は上位3名,今年度も上位2名のドライバーがそれぞれ「進級」しているのだ。その中で2年間戦った吉本大樹は,今シーズンをランキング14位で終えた。序盤戦は表彰台を獲得するなど好調であったが,中盤からトラブルが相次ぎ失速。BCNで戦った2年間は,思うような結果を残せないまま終わることになった。彼のパートナーであったアーネスト・ビソやティモ・グロックは,BCNから移籍した途端に優勝を果たしている。シーズンオフは移籍を検討していた吉本だったが,結果的に勝てる流れをつかみ損ねてしまったのかもしれない。

 では,これから日本人ドライバーがF1を目指すには何が必要なのか。もっとも必要とされるのは「適応力」であろう。もちろん速さも必要ではあるのだが,F1のレベルまで来ると,どのドライバーもさして変わることはない。しかし,その速さを限られた時間の中でアピールするには,様子見の時間は許されないのである。それを証明しているのが,第3ドライバーデビューでトップタイムを出したベッテルである。それまでの彼は,数限りなくいるF1予備校生の中のひとりであったが,たった1時間で未来のF1シートを確実のものとした。これからも,日本人ドライバーにチャンスはやってくる。しかし,その時に自分の持つ力を最大限発揮できなければ,彼らにF1という未来はやってこない。

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2006年9月15日 (金)

エンジン凍結とシャシー販売

 空力を含めたトータルパッケージが重要となる現代F1の戦闘力に対して,エンジンの占める割合はそれほど高くない。しかし,ある程度のパワーと信頼性を持ち合わせていなければ,あっという間にテールエンダーの仲間入りをしてしまう。ホンダが新型エンジンの投入を見合わせたのも,事前に十分な信頼性が確保できなかったためだ。中国GPで来年度のスペックが決定されるため,この2週間で問題を解決しなければならない。ホンダエンジンはグランプリで最もパワフルなエンジンと言われてきたが,ライバルの開発も進んでおり,そのアドバンテージは確実になくなってきている。

 今季2.4V8に排気量が制限されたものの,ラップタイムはそれほど大きく落ち込んでいない。これは,エンジンパワーが低下したことにより,ラジエーターやインダクションボックスが小型化されたことによる空力サイドの恩恵がある。また,現在のエンジンはトルクが細いため低速コーナーは苦しいが,中高速コーナーでは逆にスピードを上昇させている。毎分19,000回転以上の超高回転で,2レース連続使用と耐久力を求められるV8エンジンには,各メーカーもずいぶん手こずっていた。コスワースは毎分20,000回転という驚異的な数字だが,それを支えるだけの信頼性がなかった。メルセデスもシーズン当初V8特有の振動を解消できず,マクラーレン失速の原因を作った。

 さて,来季の搭載エンジンが決定していないのは,兄弟チームのレッドブル&トロ・ロッソと,ミッドランド改めスパイカーの3チームである。そのうち先の2チームはフェラーリ&ルノーのいずれかを搭載するものと思われるが,どの組み合わせとなるかは明らかにされていない。しかし,現在のF1界をリードする2メーカーのエンジンを手に入れてしまうのだから,レッドブルの資金力は底知れない。一方のスパイカーには,アブダビのムバダラ開発社とのつながりから「フェラーリのサテライトチームになるのでは?」という噂もあるが,来季はとりあえずコスワースに落ち着くのではないかと思われる。

 来シーズン以降ベースとなるエンジンに対し,各メーカーには年間数度のアップデートしか許されていない。当然開発費も削減されるだろうが,各メーカーはその分を車体開発費として上積みすると考えられる。FIAがコスト削減を目指して行ったエンジン規制も,所詮は一時しのぎでしかない。その一方でプライベーターの参戦費用は,2008年からシャシー購入自由化で軽減される。ワークスは信頼の置けるサテライトチームにしかシャシー&エンジンを販売しないはずであり,カラーリングの異なる2チーム4台のマシンが,それぞれの役割を果たすようになるだろう。もちろん,レッドブルのような金満チームは,その限りではないだろうが・・・

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2006年9月14日 (木)

シューマッハの行き先

 「男に二言はない」というのは,日本人だけの考え方ではないだろう。引き際に美学を求めることは,トップアスリートであれば当然のことであるし,ましてやそれがワールドチャンピオンともなれば尚更である。先日引退発表をしたミハエル・シューマッハも,長い時間をかけてその結論を導き出した。普通に考えればおいそれと撤回することなどないのだが,F1界のボスはそう思っていない。バーニー・エクレストン氏は,シューマッハは本当に引退を望んでおらず,近いうちに現役復帰する可能性があると考えている。ただしそれが可能なのは,フェラーリではなくルノーであると言う。

 来年度ルノーは,ジャンカルロ・フィジケラとヘイキ・コバライネンという,トップチームとしてはいささか見劣りするラインナップとなる。ファーストドライバーになったとたんにフィジケラが今以上の速さを見せることもないだろうし,ルーキーのコバライネンに多くを望むのも酷な話である。チームとの契約を2年延長したフラビオ・ブリアトーレ代表も,その活動は実質1年と言われており,このままではルノーが一気に失速する可能性さえある。ただでさえルノーにはF1参戦をマーケティング戦略としてしか見ていないトップがいるのである。投資するだけのメリットがなくなったら,さっさと手を引く「負けたらやめ」の考えは,エクレストン氏にとってもあまりいい話ではない。

 さて,ではシューマッハが引退宣言を撤回することはあるのだろうか?結論から言えば,これはノーであり,この話はエクレストン氏の希望的観測でしかない。ミシュランに続きルノーにまで去られては,エクレストン氏にとっても大きな痛手となる。F1人気に陰りが出てきているフランスのためにも,エクレストン氏としてはルノーにF1参戦を継続してもらいたい。そのためには「ある程度強いルノー」でなくてはならないのである。そこに古巣からシューマッハが現役復帰となれば,またチャンピオンシップも盛り上がると考えているのだろう。しかしそんなことをせずとも,FIAは2008年からのコスト削減に躍起になっているのだから,それでルノーはF1参戦を継続することになる。

 でははたして,シューマッハはどこに行くのだろう。以前からシューマッハは,「引退後もフェラーリの一員でいたい」と発言していた。この話を今もシューマッハが覚えているのならば,今後チーム内で何らかのポジションを得ると思われる。フェラーリにとってシューマッハは,いちドライバー以上の存在である。それはチーム内の誰もが認めることであり,今後シューマッハともに働きたいと思っているスタッフは数多くいるであろう。あのモナコ事件の時,F1関係者の誰もがシューマッハをクロと言ったが,フェラーリのスタッフだけはかたくなにシューマッハを擁護していたのだから。

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2006年9月12日 (火)

来るか!新世代の力

 長年君臨してきたトップの交代は,その組織を大幅に若返らせることを意味する。ミハエル・シューマッハの引退という衝撃に隠れてしまっているが,F1界にも大幅な若返りの時が迫ってきているようだ。マクラーレンがかねてよりサポートしてきたルイス・ハミルトンを,来シーズンから起用する方針を固めた。仮にハミルトンがデビューした場合,マクラーレンとしては1993年のマイケル・アンドレッティ以来,実に14年ぶりのF1ルーキー起用ということになる。もちろんアンドレッティは,当時のCARTチャンピオン経験者であり,純粋な意味でのルーキーとは言えない。したがってハミルトンのようなステップアップカテゴリーからのデビューは,異例中の異例ということになる。

 そもそもマクラーレンには,ドライバーを育成するという概念がなかった。過去十数年の間に起用されたドライバーは,そのほとんどが優勝経験者である。ミカ・ハッキネンやキミ・ライコネンは初優勝をマクラーレンで挙げているが,こういったケースは希である。それが今回,全くの新人をデビューさせようとしているのだから,マクラーレンも変わったものである。しかもハミルトンは,GP2のタイトルを獲得したとは言え,F1のテストすらまだ本格的に行っていない。もちろん実力は折り紙付きだが,それが即F1に結びつくとは限らない。

 それでもハミルトンを起用する裏側には,ロン・デニス代表の確信がある。シューマッハ引退後,名実ともにチャンピオンとなるのはフェルナンド・アロンソである。そのアロンソのパートナーとしてふさわしいのは誰か。ペドロ・デ・ラ・ロサは今も確実な仕事を果たしているが,年齢的にもこれ以上の飛躍は望めない。かといってテストドライバーのゲイリー・パフェットでは,実力的も伸び代でもハミルトンに遠く及ばない。マクラーレンに必要なセカンドドライバーは,アロンソの背後でポイントを獲得しつ,確実な成長を遂げることのできるドライバーである。その素質を見いだしたからこそ,将来のチャンピオン候補をこの手でデビューさせようとしているのである。

 ハミルトンのステップアップで,GP2シリーズはそのポジションを盤石のものとしている。昨年度チャンピオンのニコ・ロズベルグ,同2位のヘイキ・コバライネン,同3位のスコット・スピード・・・。これにハミルトンとネルソン・ピケJrが加わるのだから,今やF1のシートにはGP2上がりの若手が目白押してある。しかし,若年でのF1デビューが,必ずしも成功に結びつくわけではない。21歳でデビューしたクリスチャン・クリエンは,23歳という若さでF1界から姿を消そうとしている。果たしてこの中の何人が,生き残ることができるのか。新時代の到来が,すぐそこまでやってきている。

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2006年9月11日 (月)

皇帝引退の花道

 ある程度予想できたことでも,それがいざ現実となると,なかなか受け入れることができないことが多い。事実を受け止めるためには,それを理解する時間が必要だからである。フェラーリの聖地モンツァで,タイトル争いを再び振り出しに戻す大きな勝利を得たレース終了後の記者会見。世界中の誰もがその口から発せられる言葉を,固唾を飲んで見守っていた。そして,静かに口を開いたミハエル・シューマッハは,今シーズン限りでF1から引退することを発表した。

 会見に臨んだシューマッハの表情は,プレッシャーから解き放たれたかのような晴れやかなものだった。それが逆に,今回の結論が長い苦悩を経て導き出されたことを物語っていた。シューマッハは将来について,ファンや関係者にきちんとした説明をしなければならないと思っていたが,ここまで時間が掛かってしまったこと。今まで協力してくれた家族やチームに対し,言葉に出来ないほど感謝していること。今回の決断が非常に難しいものだったが,今こそが適切なタイミングだったことなどを,終始穏やかに語っていった。

 使い古された言葉だが,「レースは筋書きのないドラマ」と言われる。しかし,まるで隠されたシナリオがあったのではと思えるほど,モンツァはシューマッハのものだった。不可解なペナルティにより10番手スタートとなったルノーのフェルナンド・アロンソが,周囲のマシンを蹴散らしながら猛烈な勢いで追い上げてくる。しかし次の瞬間,圧倒的な信頼性を誇るルノーRS26エンジンが,白煙とともに断末魔の叫びを上げる。まるでティフォシ達の想いがそうさせたかのような,アロンソのリタイア。彼が自分の力だけではどうしようもなかった結果を受け止めにも,今しばらくの時間がかかるだろう。

 シューマッハが引退を宣言したとは言え,チャンピオンシップはまだ続いている。しかし,今回のレースで確信したことがある。それは,フェラーリ&シューマッハが,今シーズンのタイトルを獲得するということである。もちろんアロンソのリタイアで,ふたりのポイント差が2点になったことも大きく影響している。しかしそれ以上に大きいのは,シューマッハが引退を宣言したことで,フェラーリには何の迷いもなくなったことにある。今まで去就を注目していたフェリペ・マッサやチームスタッフも,シューマッハの最後を飾るために,死に物狂いで戦いを挑んでくるだろう。

 さらに,アロンソのライバルはフェラーリだけではない。今回PPから2位表彰台と,速さを取り戻して来たマクラーレンのキミ・ライコネン。初優勝後,一皮むけた走りを見せているホンダのジェンソン・バトン。そして,デビュー3戦目で見事表彰台を獲得した,BMWザウバーのロバート・クビサ・・・。これのライバル達を退けるだけの力が,果たして今のルノー&アロンソにあるのか。そう考えると,結果は自ずと見えてくる。皇帝引退の花道は,既に準備されているのだから。

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2006年9月10日 (日)

F1は誰のもの?

 F1はいつからこんな八百長が罷り通るようになったのだろうか?そう思わざるを得ない出来事が,昨日の公式予選で起きてしまった。フェラーリのフェリペ・マッサのアタックを妨害したとして,ルノーのフェルナンド・アロンソが予選タイム抹消のペナルティを受けた。Q3タイムのうち上位3つを無効とされたアロンソは,これにより5番手から10番手へとグリッドを下げることとなった。ルノー勢が後方に沈んだことで,フェラーリの2台はよりプレッシャーの少ない状態からスタートすることができる。タイトル争いも佳境に入ったフェラーリの地元モンツァで,予選終了後3時間を経過して発表された今回のペナルティには,関係者の間でも首を傾げる者が多い。

 問題となったマッサのアタックラップは,オンボード映像でしっかりと中継されていた。マッサの前方には,最後のアタックに向け先を急ぐアロンソが映し出されている。この際にアロンソが,マッサのアタックラップを妨害したというのだが,映像を見る限りアロンソが意図的な走路妨害やブレーキテストをした様子はない。Q3序盤にタイヤバーストに見舞われたアロンソは,最後のアタックラップに向け全速力のアウトラップ中であり,後方のマッサにそんなことをするヒマもなかったはずである。事実アロンソは,予選終了残り3秒というギリギリのタイミングで最後のアタックラップに入っている。

 以前「一貫性のない判定」でも指摘したことだが,今回のペナルティにも同じことが言える。アロンソにとってはハンガリーGPに続いてのペナルティとなるが,前回はフリー走行中の黄旗無視&走路妨害による「予選タイムに2秒加算」のペナルティだった。しかし今回は,予選中の走路妨害により「予選タイム上位3つを無効」というもの。フリー走行と公式予選という違いはあるにせよ,何を根拠に「上位3つを無効」としたのだろう。マッサのアタックを3度に渡って妨害したとでも言うのだろうか?これではどう見ても,フェラーリに肩入れした判定と批判されても仕方ない。

 F1の競技規則には,「予選中にドライバーがコース上に故意に止まったり,他のドライバーを邪魔したと審査委員会が判断した場合は,そのドライバーのタイムは取り消される」と明記されている。すなわち,スチュワードは根拠を挙げることなく,違反者のタイムを抹消することができるのである。もちろん違反に対してペナルティを与えることは,どのスポーツの審判にも与えられている権限である。しかしF1では,「どのような違反をしたら,どのようなペナルティを課せられるのか」がはっきりしない。時と場合に応じてペナルティの重さが異なったのでは,あちこちから不満が出るのも当然である。一体F1は誰のものなのだろう?「FIAのもの」と言ってしまえばそれまでだが・・・。

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2006年9月 8日 (金)

歴史が動く瞬間

 物事には必ず始まりと終わりがあり,それは変えることの出来ない事実である。2006年のイタリアGPは,大きく歴史が動く瞬間になるかもしれない。フェラーリの来季体制発表により,ミハエル・シューマッハの進退が明らかになろうとしている。フェラーリは決勝レース終了後に,会見を開くとしている。一時はシューマッハ・ライコネン・マッサの3人を発表し,シーズン終了までシューマッハの結論を先延ばしにするのではないかと言われていた。しかし,今週水曜日にルノーが来季の体制を正式に発表したことで,一気に決着がつく可能性が高くなってきている。

 来季ジャンカルロ・フィジケラのパートナーとなったのは,テストドライバーから昇格したヘイキ・コバライネン。昨今テストドライバーから昇格してF1デビューを果たすケースは少なくないが,ルノーのようなチャンピオンチームからというのは希である。その結果,噂されていたキミ・ライコネンは,フェラーリしか行き先がなくなった。シューマッハ&ライコネンのジョイント№1体制はあり得ないので,シューマッハの引退が現実のものとしてとらえ始められている。つまり,ルノーがラインナップを発表したということは,シーマッハの結論が出ているからに他ならない。

 今も多くの人々の心に刻まれている,1994年のサンマリノGP。アイルトン・セナが天に召された瞬間,F1の歴史が大きく動いた。あれから12年,再び歴史は大きく動こうとしている。昨年度フェルナンド・アロンソが新世代チャンピオンとして登場するまで,シューマッハは10年以上F1界を引っ張ってきた。しかし,アロンソはシューマッハを上回る勢いで今も成長を続けている。アロンソは「シューマッハが引退する前にチャンピオンにならなければ意味がない」と語っていた。シューマッハがセナを追い続け,そして乗り越えていったように,アロンソもシューマッハから多くのことを学び,更にその上を乗り越えていったのだ。

 移り変わりの激しいF1界では,その時代ごとに求められるものも変わってくる。純粋な速さだけでなく,時代にあった能力を身につけなければ,F1で生き抜いていくことは不可能である。アロンソは現代F1ドライバーとして,求められるほぼ全てを持ち合わせている。それを最も理解しているのは,数々の接近戦を演じてきたシューマッハに他ならない。「非常に難しい」決断をしたことで吹っ切れた皇帝は,残り4戦に全ての力を注ぎ込むため,最後の逆襲を企てているのかもしれない。とは言えシューマッハが結論を明らかにしていない今,これらは全て憶測に過ぎない。一転現役続行となれば,それはそれで大事件である。いずれにせよ,歴史が動く瞬間が見逃せない。

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2006年9月 7日 (木)

恐るべき!20円ドリンク

 「金は天下の回りもの」と言うが,果たしてどうだろうか?住む世界にもよるが,金にかかわらずどんな物でも,あるところにはあるというのが本当のところだろう。レッドブル・グループのオーナーであるディードリッヒ・マテシス氏が,F1界のボス,バーニー・エクレストン氏を上回る資産家であることが報じられた。レッドブル・グループは,エネルギードリンクの「レッドブル」を,日本を含む世界100ヶ国以上で,年間10億本以上販売している。日本での販売価格は275円だが,原価は20円ほどと言われているから恐ろしい。作れば作るほど儲かるのだから,オーナーの笑いも止まらないだろう。

 莫大な利益をどこにつぎ込むかも企業の大きな選択だが,レッドブル・グループはモータースポーツをメインの広告媒体としている。その参戦カテゴリーは多岐にわたり,F1はもちろん,GP2やF3などのミドルフォーミュラ,WRC,パリダカ,ロードレース等々,枚挙に暇がない。今や世界中のサーキットで,「レッドブル」のロゴを見ない場所はないと思えるほどの勢いである。レッドブルはチーム運営だけでなく,積極的なドライバー育成をしている点でも注目されている。当初はアメリカの若手を発掘する目的で始まったが,スコット・スピードがF1参戦を果たしたことにより当初の目的を達し,現在はヨーロッパ中心に若手をサポートしている。

 このサポートドライバーの中で,今最も注目されているのがセバスチャン・ベッテルであろう。ベッテルはレッドブル・ジュニアチームの一員でありながら,BMWザウバーのサードドライバーを務めたことで,今後の身の振り方が注目されていた。これについてはマテシスオーナーの発言から,BMWザウバーへ2年間レンタルしたことが明らかになった。この契約が成立した背景には,いずれ自チームでデビューさせるベッテルに,F1経験を積ませたいレッドブルと,ロバート・クビサの後任として優秀なリザーブ・ドライバーを確保したいBMWザウバーの利害が一致したことにある。

 レッドブル・グループは今後も長期に渡り,モータースポーツに投資していくつもりなのであろう。そうでなければ,これだけ広範囲に手を広げるはずはない。一時は来季もフェラーリエンジンを搭載するとされていたレッドブルも,ここにきてトロ・ロッソにその契約を委譲し,ルノーエンジンを搭載するという噂が再燃している。その莫大な資金力はそう簡単に衰えることはないだろうし,現状を見る限り将来に対して何の不安もない。しかし,「金は天下の回りもの」である。いずれレッドブル・グループにも,暗い影が忍び寄るかもしれない。それまでは20円ドリンクの資金力も,ご自慢の「エナジーステーション」も大きくなり続けるのだろう。 

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2006年9月 6日 (水)

新型エンジンの実力は?

 ウェットレースは荒れた展開になるのが常である。ましてやそれが超高速サーキットのモンツァであったらなおさらである。今週末に迫ったイタリアGPは,3日間とも雨の予報になっている。1周5.793kmのこのオールドサーキットは超高速ターン「パラボリカ」を備え,エンジンの全開率は優に70%を超える。不確定要素の多いウェットレースでは,確実かつスムーズなドライビングが求められるため,ハンガリーGPで初優勝を果たした,ホンダのジェンソン・バトンに期待がかかる。ルーベンス・バリチェロもモンツァを得意としていおり,ウエットレースを生き残ればダブル表彰台のチャンスもある。

 ホンダはこのGPに,2007年仕様の新型エンジンを投入する予定でいた。シーズン途中で新型エンジンを投入するケースは珍しいが,来年度のエンジンスペックが中国GPで固定されるため,それを見据えての先行投入である。しかし,先日行われたテストではこの新型エンジンにトラブルが多発。必ずしも信頼性は高くないエンジンを投入することのリスクは避けられず,その判断は金曜日直前までずれこむようだ。雨となればエンジンにかかる負担は軽減されるが,アクシデントの起こる可能性は格段に上がる。第3期初優勝を果たした今,さらなる飛躍のためにも重要なレースとなる。

 さて,話は変わるが,ホンダとSAF1の関係について。一口に「ホンダ」と言っても,その構成は大きく二つに分かれる。F1の最前線で戦うイギリスのHRD(ホンダ・レーシング・デベロップメント)と,中長期的な開発・研究を行う日本の栃木研究所である。以前,SAF1のマーク・プレストン/チーフ・テクニカル・オフィサーも語っていたことだが,SAF1が直接支援を受けているのはHRDではなく栃木研究所である。SA06の開発にあたっても,新型ギアボックスに関する多くのデータと,実際にファクトリーで作業にあたるスタッフを提供していた。HRDもRA106の空力データを提供したらしいが,SA06とはコンセプトが異なるため,たいして役に立たなかったとも語っている。

 ホンダが低迷していたシーズン中盤,「ホンダのSAF1に対する支援が十分行われていない」という話をよく聞いた。これはHRD自体が問題に直面していたため,SAF1の支援どころではなかったためだ。そうでなくても,ニック・フライ代表やジル・ド・フェラン/スポーティング・ディレクターは,SAF1に対して肩入れすることを喜んではいないだろう。しかし,ホンダにとってSAF1は,なくてはならないサテライトチームである。2008年の大幅なレギュレーション改定に備えて,強力なサテライトチームを持つ意味は大きい。今回の新型エンジンは,いずれSAF1にも供給されるはずである。スケジュール的には鈴鹿あたりだが・・・。

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2006年9月 5日 (火)

評価に悩むSA06B

 人を評価することは難しい。数値で見えるものがあればいいが,人の評価はそれだけで決まるものではない。しかし,マシンの優劣ははっきりと数値が示すことになるので,その評価はたやすくなる。そう思ってトルコGPで投入されたSA06Bを評価しようとしたが,これがなかなか難しい。3日間行われたモンツァテストでのベストタイムは,フェラーリを駆るフェリペ・マッサの1'21.098。これに対してSA06のベストタイムは佐藤琢磨の1'24.536,直近のライバルであるミッドランドは1'23.771である。トップとは約3.5秒,ミッドランドとは1秒弱の差がある。さて,これをどう見るべきなのか。

 2段階のアップデートを経て投入されたSA06は,旧車SA05と比べ約2秒のタイムアップが期待されていた。ハンガリーGPに投入されたSA06で一新されたリアセクションに加え,SA06Bには新型のフロントサスペンションを導入した。だが,そのマウント方法は完全なゼロキールではなく,小さなツインキールと呼ぶべきもの。時間と予算の制約から,サスペンションのアッパーアームの位置は変えず,ロワアームの取り付け位置を変更するという妥協も見られる。琢磨もその有効性は認めつつも,セッティングの幅が狭くドライバーのミスを許さないマシン特性があると語っている。

 ミッドランドを上回るパフォーマンスを発揮すると言われていたSA06Bであったが,蓋を開けてみれば一発の速さもレースペースも十分ではない。これではSA06Bが,期待通りの速さを発揮していない評価されるかもしれない。しかし,以前マーク・プレストン/チーフ・テクニカル・オフィサーが語っていたように,タイムアップ率は何を基準にするかによって変わってくる。彼は0.5秒から5秒と言っていたが,確かに開幕戦のSA05から比べれば5秒はタイムアップしているだろうし,トップチームとの差と考えれば0.5秒縮めたととらえることもできる。条件は異なるが05と06の差は約3秒,06と06Bの差も約0.6秒あり,SA06Bは確実に進化を遂げている。

 相手の開発が止まっているのであれば,SAF1はもうとっくにミッドランドを追い越している。しかしF1の開発は日進月歩であり,ライバルがゆっくり待っていてくれるほど甘い世界ではない。SAF1の少ない予算では限られた開発しかできないだろうが,進化の止まっていたSA05に比べれば,SA06はまだまだ伸び代がある。SA06の目標はトップとのタイム差を縮めることではなく,ミッドランドの前に出ることである。モンツァテストでは,新車特有のトラブルシューティングに終始したが,初めて事前テストができた意味は大きい。今週末のイタリアGPでは,山本左近にレースの完走を,琢磨には初のQ2進出&トップ10フィニッシュを期待したい。

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2006年9月 4日 (月)

トヨタが勝てない原因

 努力をしたにもかかわらず結果がついてこないことは,誰にとっても辛いことである。F1挑戦5年目を迎えるトヨタにとって,未だ初勝利を得られていないこともまた十分辛いことだろう。ましてや直接比較されることの多い同国のライバルが、勝利を挙げたことが気にならないわけがない。ラルフ・シューマッハは,ホンダの勝利はモチベーションを上げることはあっても,プレッシャーになることはないと語っている。確かに彼はホンダか勝とうがBMWザウバーが勝とうが,さして気にもしないだろう。しかし,チームの首脳陣は果たしてそうだろうか?

 大きなファクトリー,潤沢な資金,優れたスタッフ,優勝経験のあるドライバー・・・。そのどれをとってもF1を戦うには必要十分なものである。では,トヨタに足りないものはいったい何なのだろう。ヤルノ・トゥルーリは,「足りないのは経験」だと言う。参戦5年を経て,経験が足りないというのはおかしな話と思うかもしれない。しかし,トヨタが他のチームと大きく違う点は,ゼロからF1参戦を始めたことにある。ホンダやBMWが,B.A.Rやザウバーといったプライベートチームを買収し参戦を始めたのとは違い,トヨタはシャシーを含めて全てを手探りから始めている。5年という年月では,他のチームが長い時間をかけて培ってきた経験にはかなわないと考えても無理はない。

 しかし,それだけではトヨタが勝てない理由にはならない。1997年から1999年まで参戦したスチュワートは,トヨタより圧倒的に少ない資金と人員で,トヨタより短期間に初優勝を果たしている。とすれば何が原因なのだろう。最終的な結論を導き出すことは難しいが,強いて言うならばチーム運営方針に対する考えの違いであろう。確かにスチュワートは短い期間で優勝を勝ち取った。しかし,常に勝てるチームであっただろうか?答えはノーである。スチュワートは1勝のみでジャガーに買収され,トップチームになることはなかった。これはチームを全体的に強化するだけの資金と人員がなかったためだ。
 
 競争の激しい現代F1に於いて,組織の一部が優れているだけでは,常に優勝を狙えるトップチームになることはできない。一部の組織が突出してして強ければ,偶発的な勝利を得ることは可能かもしれない。しかし,それでは真のトップチームとはいえない。対するトヨタは組織の一部ではなく,組織の全てを少しずつ強化しているように思える。突出して何かが強いというわけではないが,だからといって決定的に劣っている部分もない。この運営方針こそが,初勝利を遠ざけている原因なのだろう。従ってトヨタが初優勝を果たす時は,すぐに2勝目を狙うことのできるトップチームになった時なのかもしれない。とは言えそれはいつになるのやら・・・。

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2006年9月 1日 (金)

悩むなベッテル!!

 人間は誰もがひとつずつ才能を持って生まれてくると言うが,F1という厳しい世界は,生まれ持った才能だけで生き残ることは出来ない。彼らが最も輝くのはもちろんマシンをドライブしているときであるが,それ以外の場面でも「輝くもの」を持ち合わせていなければならないからである。その中で先週のトルコGPで鮮烈デビューを果たしたBMWザウバーのセバスチャン・ベッテルは,かなり恵まれた環境にいる。たった一度のトップタイムでベッテルを評価することは危険だが,彼が才能溢れるドライバーであることは間違いない。今シーズン一杯はBMWザウバーの第3ドライバーを務めると言われているが,来シーズンの就職先については頭を抱えるているだろう。

 レッドブルとBMWザウバー。どちらのチームを選ぶことが,ベッテルにとって最良の道なのだろう。ベッテルがレッドブルの育成ドライバーであることを考えると,優先交渉先はレッドブルになる。仮に来シーズンレッドブルと契約した場合,GP2へ参戦しつつレッドブルのテストドライバーを務めることになる。来シーズンのレッドブルは,デイビッド・クルサード&マーク・ウェバーのコンビが決定している。しかし,ベテランのクルサードは,来シーズン限りで現役引退する可能性が高い。そうなれば2008年シーズンのレギュラー昇格は,かなりの確率で約束されていることになる。

 こう考えるとレッドブルと契約することがベターであるように思えるが,心配されるのがレッドブルというチームそのものである。湯水のように資金を投入し,F1だけでなく世界中のカテゴリーに活動を広げているが,それに見合うだけの成績を残しているだろうか?モナコGPでクルサードがチーム初の表彰台はともかく,それ以外のレースでは目立った結果を残していない。結果次第でいくらでも行き先が変わってしまうのがプライベーターである。一方のBMWザウバーは純然たるワークスチームであり,F1フィールドに長く腰を据えて参戦していこうとする姿勢が見られる。

 移り変わりの激しいF1界では,1度きりしかないチャンスを逸すると,2度と輝きを取り戻せないことも数限りない。今は順風満帆たるベッテルであっても,この二者択一を誤ってしまえば,今後のドライバー人生に大きく影を落とすことになる。自分を育ててくれたレッドブルには恩義もあるだろうが,F1のフィールドに立つチャンスを与えてくれたのはBMWザウバーである。契約という柵もあるだろうが,かつてミハエル・シューマッハが僅か1戦でジョーダンからベネトンへ電撃移籍したように,それを打ち破る強引さがなければ,とてもF1で生き残ることはできない。とは言え人生を左右する決断を迫られるのだから,悩むなと言っても悩むよなぁ。

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