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2006年12月31日 (日)

今シーズンを振り返って

 今年も残すところ,後数時間となった。毎年この時期になると思うことが,「今年も1年早かったなぁ」ということである。毎年加速度的に時間の経過が早くなっているような気がするが,これは数学的に証明できることである。満1歳の1年は人生の1分の1でしかないが,10歳の1年は人生の10分の1の時間,20歳ならば20分の1,30歳ならば30分の1と。年を重ねるごとに少しずつ早くなっていく時間の中で,我々は1日1日を大切に過ごさねばならない。さて,様々なことがあった2006年だが,F1界でも多くの出来事が起こった。今夜はその中から,印象に残った幾つかを振り返ってみたい。

 まず思い起こされるのが,F1界の皇帝ミハエル・シューマッハの引退であろう。モナコでの「駐車事件」など,今年も多くの話題を提供してきたシューマッハであったが,その走りがまったく衰えていないことはブラジルGPでの走りを見れば一目瞭然だろう。1991年のデビュー以来,我々に強烈な走りを見せつけてきたシューマッハは,最後のレースまで手を抜くことをせず,全力のままサーキットを走り去った。引退後はしばらく休養をとった後,フェラーリのジャン・トッド/CEO兼マネージング・ディレクターのスーパー・アシスタントに就くものと見られている。10年以上に渡りF1界を牽引してきたシューマッハの影響力は,引退後もしばらく続きそうな気配である。

 ハンガリーGPでワークスとしては39年ぶりの優勝を遂げた,ホンダにも触れておこう。6年間B.A.Rと苦楽を共にし,今季ついに始動したチーム・ホンダ。序盤こそ迷走が続いたものの,その反省からシーズン中盤に大幅な人事改革を断行。中本修平氏がシニア・テクニカル・ディレクターとなったことで,風通しのよいチーム体制を確立させた。ハンガリーGPでの優勝は,その成果というわけでもないのだが,ホンダが勝てるチームになりつつあることは証明できた。来季チャンピオンシップ争いに絡んでくることは難しいと思われるが,複数回の優勝を果たすことが現実的な目標となるだろう。

 最後に2006年と言えば,SAF1を抜きに語ることはできないだろう。奇跡の参戦から半年,様々な苦難を乗り越え戦いきったSAF1には,我々日本人F1ファンだけでなく,多くのF1関係者が賞賛を贈っている。開幕戦のバーレーンにマシンを間に合わせるだけでも相当の苦労があったのだが,シーズンを戦う中でも彼らには次々に問題が襲いかかった。しかし,フェラーリが「チーム・シューマッハ」となり一世代を築き上げたように,SAF1も「チーム・琢磨」となることで,小さなチームは強い絆でまとまり,今季を締めくくることとなった。さあ,来季は飛躍の年。SAF1にとって2007年は果たしてどんな年になるのか?期待に胸をふくらませながら,新しい年を待つことにしよう。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月26日 (火)

おめでとう左近!でも・・・

 人間は実に弱い生き物だ。元来人間は僅かな環境の中でしか生きることができない上に,その環境が少しでも変化してしまえば,途端に体の変調を来すこととなる。かくいう私も,この1週間全く動くことが出来ないくらいの高熱にうなされていた。普段であったら何でもなくできることが,一人では全くできない。もちろん日課であったブログ更新などできるわけもなく,実に10日ぶりの更新となってしまったわけである。それでもこの10日の間,多くの方々がこのブログに足を運んで下さったことが,何より嬉しいことであった。稚拙な文章をただ書き連ねただけのブログだが,読んで下さる人がいる限り,これからもモータースポーツに関するあれこれを書き綴っていきたいと思う。

 「おいら一人が寝てたって,月は昇るし地球は回る~」昔,そんな歌い出しで始まる演歌があったと思ったが,正にその通り。寝ている間もF1界は動いている。その中でも注目すべきは,SAF1の来季体制が固まったことである。チームは昨日,山本左近を来季の第2テストドライバーとして起用することを正式発表した。当初左近が務めると思われていたサード&リザーブドライバーは,キド・ヴァン・デル・ガルデの手に委ねられており,左近はこれに次ぐポジションに収まることとなった。チーム離脱という最悪のシナリオだけは避けることができた左近だが,これで来季の展望が完全に開けたわけではない。

 まず問題なのが,F1マシンを走らせる機会が,果たしてどのくらい得られるのかと言うことである。ヴァン・デル・ガルデがサードドライバーである以上,金曜走行にそのチャンスがあるとは思えない。そうなるとシーズン中のプライベートテストが唯一の機会となるのだが,これも微妙だ。来季からはシーズン中のテスト日数が,今季より更に制限される上に,潤沢な資金のないSAF1は,1台のマシンをシェアしながらテストをすることの方が多いと思われる。その中に於いて,左近のポジションは実質4番目。果たして彼に,どの程度の走行機会が与えられると言うのだろうか。

 そしてもう一つ気がかりなのが,左近の参戦カテゴリーである。鈴木亜久里代表も「チームとして彼をサポートしていくつもり」と支援を表明しているが,ハイレベルな争いが期待できるカテゴリーとなると限られてくる。F1に最も近いという意味で最良のカテゴリーとなるのはGP2であるが,それだけに来季のシートは残り少ない。最も現実的な選択はフォーミュラ・ニッポンだが,それでは物理的な距離と時間の問題がネックになる。ならば他チームのテストドライバーも参戦するWSRはどうかというと,参戦に値するだけのシートを見つけられるかどうかが鍵となる・・・。国際化を進めるSAF1に於いて,自分のポジションを確保した左近だが,おめでとうを言うにはまだ早いようだ。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月16日 (土)

山本左近の誤算

 ショッキングな出来事は,期せずして我々を襲うことが多い。ある程度覚悟していたことなら,それに対する心構えもできているのだが,突発的に起こったことに対しては,ただその成り行きを見守るしかない。F1の世界も,いつ,何が起きても不思議ではないところである。ここでは当然と言われてきた事が実現しなかったり,全く予想もしていなかったことが現実に起きたりする。しかし,我々は異国の地で起きている出来事を,ただ傍観するしかないのだ。昨日,日本人F1ファンにとっては,残念なニュースが報じられた。SAF1が来季のサード&リザーブドライバーに,オランダ人の新鋭,キド・ヴァン・デル・ガルデを起用することを発表したのだ。

 当初このポジションには,今季後半戦を佐藤琢磨のパートナーとして戦った,山本左近がつくものと思われていた。デビュー当初は慣れないマシンとサーキットに苦戦していた左近だが,終盤戦になると琢磨と遜色のない走りを披露するまでに成長し,来季への期待を膨らませた。残念ながら来季のセカンドドライバーの座こそ,ホンダから移籍したアンソニー・デビッドソンに譲ったものの,2008年のレギュラー再昇格を目指し,チームと契約を交わすものと考えられていた。鈴木亜久里代表も,左近にはチャンスがあることを認めていた。しかし,現実にサード&リザーブドライバーに抜擢されたのは,ヴァン・デル・ガルデだったのだ。

 一見予想外に思えるこの起用劇だが,実は幾つかの兆候が見られた。そのひとつが,チームコンセプトの軌道修正である。SAF1のチームコンセプトには発足当初から「オールジャパン」という誤解があったため,スポンサーとなった日本企業からは「日本人ドライバーを起用すること」が条件提示されていた。しかし,ダニエレ・オーデット/マネージング・ティレクターの「スーパーアグリは国際的なスポンサーを引きつけるために,今後はもっと国際的になるつもりだ」という言葉が示すとおり,今後は多くの国から支援を得る必要があると判断したのだろう。左近の誤算がそこにあった。

 ヴァン・デル・ガルデの出身国であるオランダは,F1こそ開催されていないものの,モータースポーツへの関心が非常に高い。今季はクリスチャン・アルバース,ロバート・ドーンボスがF1に参戦,また,スパイカーを始めとするオランダ企業も,積極的にF1への投資を行っている。来季からルノーのタイトルスポンサーを務めるINGも,オランダに本拠地を置く企業である。そんなオランダ期待の新鋭であるヴァン・デル・ガルデには,多くのスポンサーがバックアップをしている。これが契約成立の容認になったことは容易に想像できる。 現在交渉中のタイトルスポンサーも,日本企業であるとは限らない。来季のSAF1がどのような変貌を遂げるのか。我々はだた,見守るしかない。

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2006年12月15日 (金)

入れ替え制は実現可能?

 我々の社会は,ピラミッド構造になっていることが多い。人は頂点に辿り着くために努力を続け,一段ずつ階段を上っていく。もちろん全ての者が,その頂点にたどり着けるわけではない。確かな実力(と僅かばかりの運)を持った人物だけが,最上段に到達することができる。言うまでもなくF1を頂点とするモータースポーツの世界も,純然たるピラミッド構造である。F1ドライバーを目指す若者は,そのピラミッドを登らなければならない。そこは力のある者だけが生き残り,力のなき者は生きることを許されない,弱肉強食の世界である。しかしこれは,何もドライバーだけの話ではないらしい。FIAのマックス・モズレー会長は,F1チームとGP2チームとの入れ替え制を提唱している。

 この案はトップのGP2チームをF1に昇格させ,最下位のF1チームをGP2に降格させるものである。モズレー会長の狙いは,入れ替え制を実施することで,F1に新規参入するチーム及びスポンサーを増やすことにあるのだろう。FIAが今シーズンはじめに2008年からの新規参入を募ったところ,数多くのチームが立候補した。しかし,F1に参戦できるのは12チームまでであり,中にはF1に参戦するだけの資金と技術力を持ちながら,その参戦枠に阻まれたチームも数多く存在した。入れ替え制が実施されれば,そのようなチームが,今後もF1参戦のチャンスを得られるようになる。

 だが,この案が現実的なものとして認識されることはないだろう。まず,資金の問題がある。GP2とF1とではその規模が桁違いであり,仮に2008年からのカスタマーシャシー購入制でシャシーとエンジンは確保できても,世界中を転戦しながらそれを1年間走らせるだけの資金は莫大な額である。幾らコストダウンを図っても,これは避けようがない。また,GP2に降格した側は,チーム崩壊の可能性すらある。今シーズンを例に挙げると,最下位のSAF1がGP2に降格することになる。そんなことになれば,「日本GPが99%」のSAF1は,その存在意義を失ってしまう。下位チームの代表者らが,そんな危険を含んだ入れ替え制を,そう簡単に受け入れるはずもない。

 さて,そんな中で2008年からの参戦権を確保したプロドライブは,参戦に向けての準備をじっくり行う構えのようだ。実際にマシンがサーキットを走り始めるのは,来シーズンのオフになるだろうと言われている。そしてプロドライブのデイビッド・リチャーズ代表は,「チームを適切に立ち上げて,それが軌道に乗るのを見極めて,そしてその後離れるつもり」と語っており,長い間F1フィールドに留まるつもりはないようだ。F1は魔物の棲む世界。深みにはまったら決して抜け出せないことを,リチャーズ代表も知っているのだろう。そういえばSAF1の鈴木亜久里代表も,同じような事を言っていたっけ。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月14日 (木)

460円で得られる幸せ

 世界には約200の国があるが,一生のうちに我々が訪れることのできる国は,そのうちの幾つでもないだろう。海外旅行が身近になった現代でも,私のような貧乏暇なしの一般庶民はそう簡単に行けるものでもない。しかし,この時期になるとどうしても行ってみたい国がある。F1テスト真っ盛りのスペインである。冬でも温暖なこの地域は,ウィンターテストのメッカでもある。バルセロナやへレス,バレンシアなど,医療設備に若干の難はあるものの,F1テストを行うことのできるサーキットも多数存在する。一般客はそこでのウィンターテストを,1日わずか3ユーロ(約460円)で見ることができるのだから羨ましい限りである。

 さて,そのスペイン・へレスサーキットでは,今シーズン最後の合同テストが行われている。2日目の昨日は,このオフ初登場となるSAF1の佐藤琢磨が,このところ話題のSA06改を駆り,初日から合計121周という精力的な走り込みを行っている。2007年仕様のブリヂストンタイヤの感触を確かめつつ,シャシーのセットアップやホンダエンジンの開発など,順調にテストプログラムをこなしたようだ。ベストタイムは1'20"977で14台中11番手と見るべきものはないが,琢磨がSA06改に初搭乗したことを考えると,まずまずの結果と言えるだろう。

 注目すべきは次世代の若手たち。タイムシートの一番上には,ルノーの新星ヘイキ・コバライネンが座った。先週のテストを終えた段階でルノーのクリスチャン・シルク/チーフ・テストエンジニアは,「もうブリヂストンタイヤの特性はつかんだ」と豪語しており,それを裏付けるようなトップタイムである。タイヤとマシンのマッチングはそんなに簡単なものではないはずなのだが,先週・今週とへレスでは,ルノーやマクラーレン,ホンダなど旧ミシュラン勢のタイムがフェラーリを上回っている。これには「ワンメイク供給はフェラーリ有利との声を封じるため,フェラーリとブリヂストンが意図的に手を抜いた」とさえ言われる始末だ。

 ここに来て速さを発揮してきたのが,ウィリアムズのテストドライバーに抜擢された中嶋一貴である。先週の初テストはトヨタエンジンがブローしたため,僅か16周で打ち切りとなってしまったが,2度目の本格テストとなった今回は95周を周回し,1'20"859のベストタイムを記録した。これは大先輩の佐藤琢磨を上回り,BMWザウバーのセバスチャン・ベッテルに次ぐ13番手。トヨタからテストに参加した平手晃平,小林可夢偉らがワンステップ先のタイムを出せないでいる中,一貴はF1ドライバーとして認識されるだけの速さを身につけつつある。開幕戦までにテストを重ね,サードドライバーとして金曜日を走り,2008年からデビュー・・・。そんなにうまくはいかないかな。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月13日 (水)

ホンダが挑む環境性能

 人間が視覚に頼る割合は多い。そのため不特定多数の人に存在をアピールするためには,視覚に訴えることが最も効果的である。人であれ物であれ,最初の判断材料は外見でしかないからだ。それ故,人は自分を少しでも美しく見せようと着飾る。第一印象は非常に重要な要素であるから,これを怠るとその魅力は半減してしまう。全世界で何十億人もの人々が注目するF1もまた同じである。言うまでもなくF1チームは,スポンサーの資金によって運営されており,巨大なキャンバスであるF1マシンのボディーは,スポンサーにとって絶好のアピールスペースとなっている。その外見をどれだけ印象的にするかは,大きなマーケティング戦略であった。

 しかし,来季のホンダはこのスペースを,スポンサーとは別の目的で使用するようだ。ニック・フライ代表は,「マシンはホンダのロゴで覆われるのではない。もっと違ったものになる」と,来シーズンのカラーリングが大幅に変更されることを示唆している。当初ホンダは,タバコ広告規制に伴い今シーズン限りでスポンサーを撤退したラッキー・ストライクに変わる,新たなタイトルスポンサーを探していた。しかし,マクラーレンのスポンサーであったエミレーツ航空と交渉を行ったものの,スポンサー額の折り合いがつかず,結局この話は破談になっている。従って来季のホンダに,タイトルスポンサーは存在しない。このことが新たなマーケティング戦略を始めるきっかけとなった。

 フライ代表の言う「新たなマーケティング戦略」とは,一体どのようなものなのだろうか。一説によれば,それは環境に視点を置いたものであるという。ホンダは自動車メーカーとして,早くから環境問題に取り組んできた企業である。1972年に誕生したCVCCエンジン搭載の初代シビックは,当時最も厳しいとされていた排出ガス規制であったアメリカのマスキー法をクリアーし,全世界の自動車メーカーから注目を集めた。以降今日に至るまでホンダは環境性能を重視してきた。折しもFIAから今後5年間の方向性が示され,今後はよりいっそう環境問題に対する取り組みが重要視される。

 来季のホンダにスポンサースペースはなく,そのスペースを利用してホンダの企業理念を伝えることになる。これは自社のアイデンティティーをアピールする,絶好の機会である。しかし本音を言えば,スポンサーも獲得したかっただろう。いくらホンダが「F1は走る実験室」としてレースをするために自動車を作っており,その運営資金がマーケティング費用ではなく自社の研究開発費から捻出されていてもである。年間数百億が消費される現代F1に於いて,資金はいくらあっても足りることはないだろう。注目の新カラーリング発表は3月の開幕戦直前。来年の楽しみがまたひとつ増えた。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月12日 (火)

井出有治の居場所

 完成された出来合いのものには,それほど愛着が湧くことはない。しかし,自ら手間暇かけてつくりあげたものには,人には理解できないほどの深い愛着が湧く。「出来の悪い子ほどかわいい」とは,よく言ったものである。さて,F1のオーナーにとって,ドライバーとはどんな存在なのだろうか。そのドライバーが誰であるかにもよるのだが,「数多くある歯車のうちの一つ」と考える者もいれば,「チームにとって欠かせない存在」と考える者もいるだろう。差詰めウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表などは前者で,フェラーリのジャン・トッドCEO兼マネージング・ディレクターなどは後者だろう。

 その中に於いて,トロ・ロッソのゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは,どうやら前者にならざるを得ないようだ。来季も継続と見られていたビタントニオ・リウッツィ&スコット・スピードのシートが,流動的になっている。その原因はベルガー氏がレッドブル側から,独自のスポンサーを獲得するように圧力をかけられている事にある。そのため,ナレイン・カーティケヤン,ティアゴ・モンテイロ,ロバート・ドーンボスら,リウッツィ&スピードより多くの持参金を持ち込んでくれるドライバーとも交渉を継続していると見られてる。さらに,3年連続チャンプカー王者のセバスチャン・ボーデにテストの機会を与えるなど,トロ・ロッソは「ドライバー=歯車」の色合いが強くなってきている。

 一方でSAF1の鈴木亜久里代表は,佐藤琢磨を「チームにとって欠かせない精神的支柱」と評することからも,間違いなく後者だろう。琢磨も自身のHPで「全員が結束力を持って頑張ることができた」と,チームリーダーとして激動の1年を振り返っている。しかし,亜久里代表の井出有治に対する「将来F1ドライバーに成長すると期待している」という考えには,些か疑問を感じざるを得ない。F3で結果の残せなかった井出にFDのシートを与えるなど,井出は亜久里代表が以前から目をかけてきたドライバーである。亜久里代表自身,F3で実に9年間の足踏みをした経験があり,思うような結果を残せなかった井出に,自らの過去を重ね合わせていたのかもしれない。

 その亜久里代表が未だに井出を庇い続けるのは,彼に対して「申し訳ない」と思う気持ちが強いからだろう。「井出をF1に昇格させるのは少し時期尚早だったと思う」と言う発言からも,その想いが伝わってくる。満足にテストもできずF1に飛び込んだ井出には,同情の声も多かった。しかし,与えられた環境の中で結果が残せなければ,F1ドライバーとしての未来はない。「お膳立てを整えてもらわなかったから実力を発揮できなかった」のならば,それこそが井出最大の弱点である。確固たる地位を築いた琢磨と,将来性のある山本左近がSAF1にいる以上,井出の居場所はもうないだろうなぁ。

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2006年12月11日 (月)

言い訳無用のレッドブル

 人はまだ見知らぬ未来の訪れを,様々な期待や不安を抱きながら待っている。先のことは誰にもわからないが,自分の行く先に前途洋々たる未来がある者は,その時が来るのを今か今かと待ちわびているだろう。不安に思っていても,いざその事実に直面してみると,意外にうまくいったりする「うれしい誤算」もあったりする。しかし,全ての未来がそういった明るいものであるとは限らない。明らかに上昇気流に乗っていると思っていたものが躓くことは,最も辛いことである。さて,レッドブルに移籍したマーク・ウェバーは,来季が待ちきれない様子のようが,果たして彼の未来はどちらだろうか。

 バルセロナ,へレスと,レッドブルで2度のテストを経験したウェバーは「早くルノー・エンジンを搭載した新型車に乗りたい」と,今の心境を語っている。レッドブルの新型車RB3は,今シーズン始めにマクラーレンから移籍した天才デザイナー,エイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサー指揮の下で開発される。そのためにレッドブルは,シーズン終盤の開発をストップし,早い段階からRB3へ開発の方向をシフトしてきた。モナコGPでデイビッド・クルサードがチーム初となる3位表彰台を獲得するなど,シーズン中盤まではそこそこの戦闘力を発揮したRB2も,終盤は格下のトロ・ロッソやスパイカー,更にはSAF1にまで追いかけられる始末だった。

 そうは言っても今季のレッドブルは,コンストラクターズ・ランキング7位。つまり,プライベーターの中では最も好成績を残したチームである。従って次なる目標は,ワークス勢を喰うことにある。その中で登場するウェバー期待のRB3だが,果たしてどれほどの実力を発揮することができるのだろうか。ニューウェイが稀代の天才デザイナーであることは紛れものない事実だが,現代F1は一人のデザイナーの力だけで,優れたマシンが誕生することはない。そして,彼が在籍してきたウィリアムズやマクラーレンには,ニューウェイのアイディアを具現化できる,技術力を持ったスタッフが揃っていた。

 ニューウェイはパワー勝負だったF1へ,空力という新たな開発分野を持ち込み,「空力の奇才」と評されたデザイナーである。しかし,彼のデザインするマシンは空力面の性能を追求するあまり,非常に扱いづらいピーキーな特性になることが多かった。それを中和していたのが,エンジニアリング部門の技術力だったわけである。しかし,レッドブルにそれだけの技術力があるかというと,疑問符を付けざるを得ない。ニューウェイが何度も同じ轍を踏むことないと思うが,周囲の期待が大きいだけに,ハズレた時のショックも大きい。来季レッドブルは,背水の陣でシーズンに臨むだろう。「ウィリアムズへの移籍は失敗だった」と語るウェバーに,また同じ事を言われないためにも。

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2006年12月 9日 (土)

5年先より気になる来年

 よく「来年のことを言うと鬼が笑う」と言われるが,広辞苑によるとそれは,「実現性のないことや予想のつかないことを言った時にからかう言葉」とされている。従って,実現可能な事項に対して,この言葉が使われることはない。8日にモナコで行われたF1代表者会議で,今後5年間に渡る検討課題が話し合われた。日進月歩のF1界に於いて,来年どころか5年先のことまで議論することは容易なことではない。コスト削減,地球環境への配慮,新しい技術への挑戦など,F1が抱える課題も多い。しかし,長期的な視点でその在り方を議論していかなければ,F1の生き残る道がなくなってしまう。

 とは言え私などの凡人は,5年先のことより来年のことの方が,どうしても気になってしまう。各チームの代表が集まったこの会議では,渦中のカスタマーシャシー問題も討議された。スパイカーのコリン・コレス代表が提案したこの件については,3時間以上もの議論がなされたという。その結果やはり複数のチームが,トロ・ロッソとSAF1のやり方に難色を示したようだ。最終的な解決策は出なかったものの,両チームに対しては検討すべき妥協案が提示されたという。その詳細は不明だが,英AUTO SPORTは,「来季のコンストラクターズ・チャンピオンシップのポイントや,FOMからのテレビ収入と旅費の放棄に同意することであると」であると伝えている。

 特に上位チームの首脳陣は,SAF1よりもトロ・ロッソの姿勢に懸念を抱いているという。それはそうだろう。ゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは否定するものの,トロ・ロッソが来季走らせようとしているSTR2は,レッドブルのエイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサーがデザインした来季用マシンRB3のリアエンドを,フェラーリ・エンジンが搭載できるように改造したものであると言われている。このマシンはどう考えても「型落ちシャシーの流用」などではなく,より競争力のある「新型シャシーの流用」になる。これは他チームに警戒されて当然だろう。

 この問題をより複雑なものにしているのが,マシンの「知的所有権」である。しかし,それ以上に大切なことは,「そのマシンを誰がデザインしたのか」をFIAに対して明らかにすることだという。2004年にザウバーが,フェラーリF2003-GAそっくりのC23を走らせ「青いフェラーリ」と揶揄された。しかし,彼らはFIAに資料を提出し設計者を明らかにすることで,この問題を解決している。そしてそれと同じ事を,トロ・ロッソも行おうとしているのだろう。レッドブル&トロ・ロッソが,FIA&FOMと深いつながりを持っているのは公然の秘密である。そうなると残るはSAF1。何だか雲行きが怪しくなってきたなぁ。

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2006年12月 8日 (金)

続・混迷のシャシー問題

 「口は災いの元」と言われる。人間は誰しも完璧ではなく,「ついうっかり」「口が滑って」しまうことも間々あることだ。しかし,たった一言が取り返しの付かない事態を生み出すこともある。それ故,注目される人物であればあるほど,発言には慎重にならなければならない。さて,昨日発売されたAUTO SPORT誌に,SAF1鈴木亜久里代表の興味深いインタビュー記事が掲載された。そこには,バルセロナから投入された暫定マシン「SA06改」の製作過程が語られていた。詳細は省略するが,要はバルセロナでチーム側が発表した「PWC(ポール・ホワイト・コンサルタシー)がデザイン,ホンダ技研栃木研究所で製作された」という主張を繰り返すものとなっている。

 それだけであれば目新しものはないのだが,気になる表現が一つある。それは,亜久里代表が以前「ホンダのクルマを借りる」と語っていたことを,「ホンダのクルマを使う」と微妙に言い回しを変えていたことだ。そして,このホンダとは「ホンダレーシング」ではなく,「ホンダ技研栃木研究所」を指す言葉だったとしている。つまり,以前亜久里代表の発言は言葉が足りなかっただけであり,SA06改はRA106ではないとしているのだ。果たしてこれは本当なのだろうか。「借りる」と「使う」では,全く意味が違ってくる。事実を霧の中に隠す言い訳に聞こえてしまうのは,私だけではないはずだ。

 シーズンオフになって突然登場した,PWCの存在も奇妙である。チームの説明によるとPWCは,「今シーズン始めからSAF1と栃木研究所の間に入って研究開発を進めていた」らしいが,それならばなぜこの組織は,今まで秘密にされていたのだろうか。そもそもポール・ホワイト氏率いるPWCは,わずか数週間前に正式に設立されたとも言われている。もしそれが事実であるならば,SA06改がPWCデザインのマシンであるはずがない。今まで誰もその存在を知らなかったマシンが,現在もへレスで順調な周回を重ねているのだ。デビューしたてのマシンがトラブルフリーで走行することなど,滅多にあることではない。チームや亜久里代表がいかに否定しようとも,SA06改がRA106ベースであることは間違いないのだ。

 では,なぜそのような苦しい言い訳をしてまで,SA06改をSAF1オリジナルのマシンと言う必要があるのだろうか。考えられる理由はただ一つ。他チームにSA07を「RA106をベースにしたマシン」と言わせないためである。RA106を「借りて」テストをしてしまえば,あからさまに「SA07はRA106改である」と言っているようなものである。それをライバル達が黙って見過ごすわけがない。しかし,SA06改がPWCデザインのオリジナルマシンであると主張しておけば,SA07は「SA06改をベースにしたマシン」として堂々と投入できると踏んでいる・・・。まだまだ混迷は続きそうだ。

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2006年12月 7日 (木)

混迷のシャシー問題

 どこの世界にも「揉ませ屋」という人種はいるものである。そういった人種がいると,すんなり終わる会議も延々と続くことになる。彼らは自分にとって有益となるものにしか興味がなく,不利益になるものについてはとことん反対の姿勢を示す。反対するのなら解決策を示すのがべきなのだが,ただ反対を主張するだけに余計にタチが悪い。F1首脳陣にも,自分の主義主張を強く訴える者が多くいる。F1界は黙っていると損をしてしまう世界なだけに,そうなるもの至極当然である。そして,ある程度予想されたことだが,2007年のシャシーについて,スパイカーのコリン・コレス代表が異を唱えた。

 ことの発端は,SAF1が先週のバルセロナテストで走らせたマシンにある。詳細については「RA106「改」が示すもの」で述べたので割愛するが,これが一度は否定された来シーズンからのカスタマーシャシー導入に再び火を付けた。SAF1のダニエレ・オーデット/マネージング・ディレクターは,「SA07はRA106の改良マシンではない。100%スーパーアグリだ」と語っている。しかし,SA07がRA106をベースにすることは明らかであり,昨日から始まったへレステストでも,SAF1はSA06改(RA106)により安定したタイムを刻んでいる。もしこのままSA07が投入されれば,スパイカーに勝ち目はない。それを是としないコレス代表が異を唱えるのも,当然の成り行きである。

 今年夏頃からSAF1は,来シーズンからカスタマーシャシーが使用できるよう,各チーム代表に働きかけをしていた。そして全てのチーム代表から,賛成の同意を得ていたという。しかし,9月18日の代表者会議で提案されたカスタマーシャシー案は,スパイカーの反対により否決された。その時点で,2007年からのカスタマーシャシー導入はなくなっている。そこでSAF1は,「栃木研究所が開発・製造しホンダレーシングが組み立てた」RA106の知的所有権を得た上で,それをベースにしたSA07を投入しようと目論んだのだ。これは今シーズン,トロ・ロッソがとった手法と同じである。

 確かに,F1に参戦していない企業からシャシーを購入し,自チームのマシンとして走らせることはできる。このことは,マックス・モズレーFIA会長も認めている。過去にもダラーラやローラ,レイナード,マーチといった企業が開発・製造したシャシーを知的所有権ごと購入し,自らのマシンとして走らせたチームは幾つもあった。現在RA106の知的所有権は,ホンダレーシングではなくホンダ技研(栃木研究所)が持っていたるため,SAF1も過去の例にならい規約を守った上で,SA07を開発しようとしている。更に来季トロ・ロッソも,RB3を改良したSTR2を投入しようと目論んでいることが,この問題をより複雑なものにしている。8日の代表者会議は,荒れるだろうなぁ。

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2006年12月 6日 (水)

レッドタイヤ・ルールの課題

 スポーツとエンターテイメントの両立は難しい。真剣勝負のプロの世界に,エンターテイメント性を持たせようとすれば,どうしても意図的な介入が必要になる。ルールを変更することは幾らでもできるが,それが八百長まがいのことになってしまっては元も子もない。モータースポーツの世界にも,レースを面白くするために,様々なルールが存在する,GP2やF3などで行われている「リバースグリッド」や,スーパーGTなどで実施されている「ウェイトハンデ」,さらにNASCARでは,シリーズ上位者のポイントをリセットする「チェイス」などが導入されている。これらのルールには多少問題があるものの,意図的に差をなくすことで接戦を演出している。

 さて,来シーズンF1でも,エンターテイメント性を重視した新たなルールが誕生するかもしれない。既にチャンプカーで導入されている「レッドタイヤ・ルール」と呼ばれるものである。通常レースに使用するタイヤは,ソフトとハード2つのコンパウンドを持っており,各チームはマシンと路面状況に合ったタイヤを事前に選択し,レースを行っている。しかし,レッドタイヤ・ルールは,レース中にソフトとハード両方のタイヤを強制的に使用させ,意図的な接戦を演出しようというものである。チャンプカーでは,ソフトタイヤの側面を赤くペイントしていることから,この呼び名が付けられている。

 しかし,この「レッドタイヤ・ルール」には,幾つかの課題がある。まず「観客はどちらのタイヤが有利であるかわからない」ということである。最適なパフォーマンスを発揮するタイヤが,必ずしもレッドタイヤ(ソフトコンパウンド)であるとは限らない。見た目上ソフトとハードの区別はつくが,それが有利か不利かはマシンにより異なる。もうひとつは「レッドタイヤの投入に選択の余地がない」ということである。あるチームのエンジニアによれば,そのルールが導入されても「路面状況にあったタイヤで2スティントを走り,最後の1スティントは路面状況に合わないタイヤで逃げ切る」という作戦しか採りようがないというのだ。これでは意図的な接戦を演出することはできない。

 このルールを導入するどうかについては,今後FIAとブリヂストン,そして各チームとの間で話し合いが持たれることとなる。しかしブリヂストンの菅沼寿夫/テクニカル・マネージャーは,「FIAが違う色で印を付けるの決めるのであれば,我々は喜んで協力する」としている。菅沼氏自身「個人的にF1がもっと面白くなることは重要」とも話しており,「レッドタイヤ・ルール」が導入される可能性は高い。エンジン開発凍結や統一ECUの導入など,今後FIAによる規制は更に強まることが予想される。参戦費用削減の為とはいえ,モータースポーツの最高峰たるF1がワンメイクばかりでは・・・。

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2006年12月 5日 (火)

「合格通知」から見えるもの

 師走ともなると世間もだいぶ慌ただしくなるが,忙しいのは大人たちばかりではない。入試を控えた受験生たちも,最後の追い込みをかけ始める時期である。遙か昔に受験生だった記憶をたどると,この時期が正念場だったことを思い出す。そして,その先にあるものは,合格発表での悲喜交々である。最近は郵送で結果を知ることも多いが,たった一枚の紙にかかれていることが,人生を分けることになるのだから,受験生が必死になるのも当然である。先日FIAからは,「F1版合格通知」とも言える,来シーズンの暫定エントリーリストが発表された。

 「エントリーリスト」という言葉を聞くと,昨年の12月1日を思い出すF1ファンも多いのではないだろうか。今シーズン我々のハートを熱くさせてくれたSAF1が,一度は悪夢を見た日である。その日,フランス・パリから東京のSAF1事務局に送られてきた1枚のファックスに,「スーパーアグリ」の文字はなかった。参戦保証金の支払いが遅れ,エントリーが認められなかったのだ。その後のSAF1スタッフの苦労は,ここに記すことはできないほど過酷なものだっただろう。しかしそれから4ヶ月後,SAF1は「奇跡の参戦」と呼ばれる開幕戦を迎えることになったのは,もはや誰もが知るところである。

 さて,このほど発表された暫定エントリーリストには,来シーズンのドライバーとカー№,チーム名称などが記されている。栄光の№1は,ルノーからマクラーレンに移籍するフェルナンド・アロンソが付ける。基本的に各チームのエースが若い№を付けるのだが,フェラーリはミハエル・シューマッハが付けていた№5を,キミ・ライコネンにではなくフェリペ・マッサに与えたのが面白い。来季への期待を込めたものか,ウィリアムズのニコ・ロズベルグも若番を付けている。ルーベンス・バリチェロのラッキー№が11だったため,エース№を譲っていたジェンソン・バトンだが,来季はいよいよエース№の7。果たしてこの「ラッキー7」が,バトンに幸運をもたらかどうか・・・。

 最後に2年目のシーズンを迎えるSAF1は,今回しっかりとエントリーリストに記載されている。№22が佐藤琢磨,№23がアンソニー・デビッドソンというのは順当なのだが,ここで気になるのは「TBA Super Aguri F1 Team」というチーム名称である。通常,チーム名の先頭には,基本的にタイトルスポンサーが記される。と言うことは,来シーズンのSAF1には,タイトルスポンサーが存在することになる。具体的な企業名は不明だが,鈴木亜久里代表も交渉をしていることをにおわせている。ボーダフォン・マクラーレン,INGルノー,AT&Tウィリアムズ・・・。来季に向け,新タイトルスポンサーを獲得したチームに,SAF1も是非仲間入りしてもらいたい。

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2006年12月 4日 (月)

へレスに向けたあれやこれ

 冷暖房に慣れ,軟弱になってしまった我々現代人は,とかく季節の変わり目になると体調を崩しやすい。そして冬の寒さが厳しくなると,ここが南国だったらと思い,夏の暑さが厳しくなると,高原の涼しさが恋しくなってしまう。それでも四季があるからこそ,日本は美しい国と言われる。その点,午後3時にもなると辺りは真っ暗になるイギリスの冬は,日本と比べ一際寒いのだろう。そのような環境では,F1テストもままならない。従ってこの時期のテストは,もっぱら温暖なスペインで行われることが多い。バルセロナ,へレスと,シーズンオフ合同テストは続く。

 このへレスサーキットを,GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)のメンバーが事前視察に訪れた。GPDAの会長を務めるラルフ・シューマッハは,以前からへレスの医療体制の不備を指摘し,それが改善されない場合は,今後のテストを見合わせる旨の発言をしていた。F1が開催されるサーキットには,厳しい安全基準と充実した医療体制が求められる。長年F1のレースドクターを務めていたシド・ワトキンス博士は,サーキット周辺の医療体制を自らの目で確認し,納得しないとOKを出さなかったという。ラルフとしても,ここはGPDA会長の力を示さなければならないところだろう。

 さて,各チームともシーズンオフ一番の課題は,なんと言ってもワンメイク化されるタイヤに関することだろう。ミシュランユーザーだったホンダは,「テストにおける進捗状況には満足しているが,タイヤに対するマシンの最適化はまだ長い道のりが残されている」としている。ミシュランは供給チームのマシンに合わせ,基本構造の異なるからタイヤを供給してきた。しかしブリヂストンは基本構造を固定化し,ゴム種類を増やすことで供給チームの要求を満たしてきた。従って旧ミシュラン勢は,ブリヂストンタイヤの基本構造を学ぶところから始めなければならない。ミシュランを最も使いこなしていたルノーが,他のミシュラン勢以上にブリヂストンへの最適化が難しいのも頷ける。

 では,来シーズンのブリヂストンタイヤは,旧ブリヂストン勢にアドバンテージをもたらすのだろうか。長年ブリヂストンユーザーだったフェラーリのフェリペ・マッサは,「僕らにとってもこれまでと全く違うタイヤだから,アドバンテージがあるとは思わない」と,語っている。しかし,テストでのタイムを見る限り,現時点でフェラーリの優位性は明らかだろう。それよりもマッサの関心は,来季のチームメイトに向けられているようだ。キミ・ライコネンが跳ね馬を駆るのは年明けとなりそうだが,ルノーやマクラーレンがブリヂストンタイヤを使い倦ねていると,跳ね馬の二人が馬群から抜け出すかもしれない。共にザウバー出身のシンデレラボーイ。ペーター・ザウバーの微笑む顔が目に浮かぶ。

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2006年12月 1日 (金)

プロフェッショナルな者たち

 「プロフェッショナル」とは,どのような状況下にあっても最善を尽くし,なおかつ結果を得ることのできる者を言う。我々もそれぞれの職業のプロフェッショナルとして働き,賃金を得ているわけだが,全てに於いて最善を尽くしているかと言われると耳が痛い。どう考えてもプロとは呼べない者が,平然と給料を得ていることもしばしである。結果が全てのF1界ではこうはいかない。ポジションに見合うだけのパフォーマンスが示せなければ即解雇という,我々とは比べものにならない厳しい世界である。オフシーズンテストがは始まったバルセロナで,「プロフェッショナル」としての評価を高めた者がいる。SAF1での初テストに臨んだ,アンソニー・デビッドソンだ。

 SAF1はブリヂストンユーザーであったが,今回走らせたマシンはミシュランを履いていたRA106。とは言えデビッドソンにとっては,自分の手足同然のマシンである。タイヤを確かめながらの走行は,3日間で合計290周にも及んだ。これはもちろんSAF1創立以来,1回のテストでの最長距離となる。テストを率いたグラハム・テイラー/スポーティング・ディレクターも「経験豊富な彼のコメントは,とても適切で的を射たものだった」と,デビッドソンの仕事ぶりを評価している。チームは来週のへレステストでもデビッドソンを走らせるが,佐藤琢磨と二人で走る姿を早く見てみたいものである。

 ところで数々のF1改革案を提案しているSAF1のダニエレ・オーデット/マネージング・ディレクターが,「金曜日に全チームがサード・ドライバーを使うよう義務づけるべき」という考えを示している。来季からは,5位以下のチームが使用できたサードカーが廃止される。レースカーをシェアしてサードドライバーを走らせることもできるが,90分に時間が拡大されたものの,フリー走行は1分たりとも無駄にできない貴重な時間である。そのため上位チームのほどんどは,「レギュラードライバーを休ませてまでサードドライバーを走らせることはない」という方針を打ち出している。

 この案はF1デビューを夢見る若手ドライバーたちに,大いに歓迎されるものだろう。それだけでなく商業的な面から見ても,各チームが受けるメリットは大きい。オーデットがこの案を主張する背景には,サードドライバーを走らせることにより,新たなスポンサーを獲得するという狙いがある。新しいドライバーにチャンスを与え,スポンサーも獲得でき,なおかつイコールコンディションが保てる・・・。一見すると,この「一石三鳥」とも言える案を反対する理由は見あたらない。事実マックス・モズレーFIA会長とバーニー・エクレストンFOM会長は,この案を支持しているという。問題は「プロフェッショナル」な上位チーム首脳陣。さてオーデットの案,吉と出るか凶と出るか。

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