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2006年12月12日 (火)

井出有治の居場所

 完成された出来合いのものには,それほど愛着が湧くことはない。しかし,自ら手間暇かけてつくりあげたものには,人には理解できないほどの深い愛着が湧く。「出来の悪い子ほどかわいい」とは,よく言ったものである。さて,F1のオーナーにとって,ドライバーとはどんな存在なのだろうか。そのドライバーが誰であるかにもよるのだが,「数多くある歯車のうちの一つ」と考える者もいれば,「チームにとって欠かせない存在」と考える者もいるだろう。差詰めウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表などは前者で,フェラーリのジャン・トッドCEO兼マネージング・ディレクターなどは後者だろう。

 その中に於いて,トロ・ロッソのゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは,どうやら前者にならざるを得ないようだ。来季も継続と見られていたビタントニオ・リウッツィ&スコット・スピードのシートが,流動的になっている。その原因はベルガー氏がレッドブル側から,独自のスポンサーを獲得するように圧力をかけられている事にある。そのため,ナレイン・カーティケヤン,ティアゴ・モンテイロ,ロバート・ドーンボスら,リウッツィ&スピードより多くの持参金を持ち込んでくれるドライバーとも交渉を継続していると見られてる。さらに,3年連続チャンプカー王者のセバスチャン・ボーデにテストの機会を与えるなど,トロ・ロッソは「ドライバー=歯車」の色合いが強くなってきている。

 一方でSAF1の鈴木亜久里代表は,佐藤琢磨を「チームにとって欠かせない精神的支柱」と評することからも,間違いなく後者だろう。琢磨も自身のHPで「全員が結束力を持って頑張ることができた」と,チームリーダーとして激動の1年を振り返っている。しかし,亜久里代表の井出有治に対する「将来F1ドライバーに成長すると期待している」という考えには,些か疑問を感じざるを得ない。F3で結果の残せなかった井出にFDのシートを与えるなど,井出は亜久里代表が以前から目をかけてきたドライバーである。亜久里代表自身,F3で実に9年間の足踏みをした経験があり,思うような結果を残せなかった井出に,自らの過去を重ね合わせていたのかもしれない。

 その亜久里代表が未だに井出を庇い続けるのは,彼に対して「申し訳ない」と思う気持ちが強いからだろう。「井出をF1に昇格させるのは少し時期尚早だったと思う」と言う発言からも,その想いが伝わってくる。満足にテストもできずF1に飛び込んだ井出には,同情の声も多かった。しかし,与えられた環境の中で結果が残せなければ,F1ドライバーとしての未来はない。「お膳立てを整えてもらわなかったから実力を発揮できなかった」のならば,それこそが井出最大の弱点である。確固たる地位を築いた琢磨と,将来性のある山本左近がSAF1にいる以上,井出の居場所はもうないだろうなぁ。

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コメント

 ドライバーは時にスタッフやオーナーと強い絆で結びつけられる場合もありますね。近年で言えば、ペーター・ザウバーとハンス・ヘラルド・フレンツェン、ジャンカルロ・ミナルディとピエルルイジ・マルティニ、ジャン・トッドとミハエル・シューマッハ…。
 多くのドライバーが愛され、捨てられ、金づるとして使われました。ジャン・トッドといえども、ミハエルが骨折した1999年には、エディ・アーバインに「調子に乗るんじゃないぞ!」とたしなめた一面もありましたね。
 予算に余裕の無いチームでは、人情よりも予算が優先されますから、個人の性格とは別に、ビジネスとしての割り切りが重視されるのは仕方の無いところでしょう。ベルガーは良い奴ですが、優秀な経営者でもありますから…。
 井出はKAZさんのおっしゃる通り、幾千名ものドライバーが羨むチャンスをモノに出来なかったのは、あくまで個人の責任にすぎません。モンタニーは同条件で先に繋げましたから、言い訳は出来ません。今後はより強くなって「井出を切ったのは間違いだった!」と言われる様に精進して欲しいと強く思います。頑張れ井出!

投稿: aqua1931 | 2006年12月13日 (水) 00時05分

 aqua1931さん,こんばんは!
 ベルガーは運送会社の経営もしてますし,商才がありますよね。現役当時,代理人に払う金がもったいないからと,直接チームと交渉していたのは有名な話です。鈴木亜久里代表もそうだったような・・・(^^;)
 井出の件については賛否両論でしょうが,私個人としては,F1で生き残る強さがなかったのだと思います。そして今後のことを考えると,井出にはARTAの後輩達を指導する立場に立ってほしいなと思います。井出はフォーミュラの経験が豊富ですから,きっといいアドバイザーになると思うのですが・・・。
 ではでは!

投稿: KAZ | 2006年12月13日 (水) 17時50分

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