アンソニーに必要な運
3週間ぶりに,サーキットにエキゾースト・ノートが響きわたっている。やはり,F1レースのある週末はいい。今だ残暑厳しい日本だが,今夜は遠くトルコ・イスタンブールに想いをはせることにしよう。今季は連戦が多いF1サーカスだが,ここ3週間はテストも禁止期間であり,思い思いの夏休みを過ごした各ドライバーは,体力・気力ともに充実した状態でサーキット入りしている。ところがSAF1の佐藤琢磨は例外のようだ。彼は今週始めに体調を崩してしまい,木曜日に予定されていた記者会見をキャンセルしている。幸い大事には至らず,金曜日からはいつも通り仕事場であるSA07のコックビットに戻ったが,どうも週末の流れは琢磨のものではないようである。
昨日行われた公式予選では,チームメイトのアンソニー・デビッドソンが悠々とQ2に進出し,最終的にQ3目前の11番手を獲得したのに対し,琢磨は原因不明のグリップ不足に悩まされペースが上がらす,19番手でQ1脱落を喫している。琢磨は午前中のフリー走行終盤,前日アンソニーがコースアウトしたターン3でスピンし,オプションタイヤでのアタックができなかった。しかし,マシン全体のフィーリングには満足しており,予選に期待を持たせていた。しかし結果は前述の通り,アンソニーにQ1で0.649秒の差をつけられての19番手。マシントラブルやミス以外でこれだけの差がつくことは,通常考えられない。
序盤戦では,琢磨とアンソニーの速さにあまり差を感じることはなかった。事実,第7戦アメリカGPまでの二人の予選対決は,琢磨4勝に対しアンソニーが3勝。Q1突破回数も共に4回ずつと,よきライバルとして互角の結果を残していた。しかし,ヨーロッパラウンドに入ってからは,アンソニーが琢磨を上回ることが多くなる。ここ5戦の予選対決は,琢磨1勝に対しアンソニーは4勝。Q1突破回数も琢磨が1回なのに対し,アンソニーは3戦連続Q2進出と完全に琢磨を凌駕している。第8戦フランスGPでの10番手グリッド降格も含めれば,ヨーロッパラウンドに入ってからの琢磨は,一度もアンソニーの前からスタートしていないのである。
B.A.R&ホンダで,長年に渡ってテストドライバーを務めてきたアンソニーは,元来速さには定評のあるドライバーである。念願のレギュラードライバーとなった今季も,序盤戦からしばしば琢磨を上回る速さを見せていた。そして,ここ数戦安定した結果を残しているアンソニーは,チーム内でも高い評価を得ている。こうなると,うかうかしていられないのが琢磨である。確にレースで結果を残しているのは,エースである琢磨の方なのだが,アンソニーの結果が度重なる不運によるものであり,彼本来の実力を示していないことも事実である。「運も実力のうち」と言うが,アンソニーに必要なのは正にその運なのである。ひょっとすると今夜あたり,幸運の女神がアンソニーにも微笑んでくれるかもしれない。
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