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2007年8月26日 (日)

アンソニーに必要な運

 3週間ぶりに,サーキットにエキゾースト・ノートが響きわたっている。やはり,F1レースのある週末はいい。今だ残暑厳しい日本だが,今夜は遠くトルコ・イスタンブールに想いをはせることにしよう。今季は連戦が多いF1サーカスだが,ここ3週間はテストも禁止期間であり,思い思いの夏休みを過ごした各ドライバーは,体力・気力ともに充実した状態でサーキット入りしている。ところがSAF1の佐藤琢磨は例外のようだ。彼は今週始めに体調を崩してしまい,木曜日に予定されていた記者会見をキャンセルしている。幸い大事には至らず,金曜日からはいつも通り仕事場であるSA07のコックビットに戻ったが,どうも週末の流れは琢磨のものではないようである。

 昨日行われた公式予選では,チームメイトのアンソニー・デビッドソンが悠々とQ2に進出し,最終的にQ3目前の11番手を獲得したのに対し,琢磨は原因不明のグリップ不足に悩まされペースが上がらす,19番手でQ1脱落を喫している。琢磨は午前中のフリー走行終盤,前日アンソニーがコースアウトしたターン3でスピンし,オプションタイヤでのアタックができなかった。しかし,マシン全体のフィーリングには満足しており,予選に期待を持たせていた。しかし結果は前述の通り,アンソニーにQ1で0.649秒の差をつけられての19番手。マシントラブルやミス以外でこれだけの差がつくことは,通常考えられない。

 序盤戦では,琢磨とアンソニーの速さにあまり差を感じることはなかった。事実,第7戦アメリカGPまでの二人の予選対決は,琢磨4勝に対しアンソニーが3勝。Q1突破回数も共に4回ずつと,よきライバルとして互角の結果を残していた。しかし,ヨーロッパラウンドに入ってからは,アンソニーが琢磨を上回ることが多くなる。ここ5戦の予選対決は,琢磨1勝に対しアンソニーは4勝。Q1突破回数も琢磨が1回なのに対し,アンソニーは3戦連続Q2進出と完全に琢磨を凌駕している。第8戦フランスGPでの10番手グリッド降格も含めれば,ヨーロッパラウンドに入ってからの琢磨は,一度もアンソニーの前からスタートしていないのである。

 B.A.R&ホンダで,長年に渡ってテストドライバーを務めてきたアンソニーは,元来速さには定評のあるドライバーである。念願のレギュラードライバーとなった今季も,序盤戦からしばしば琢磨を上回る速さを見せていた。そして,ここ数戦安定した結果を残しているアンソニーは,チーム内でも高い評価を得ている。こうなると,うかうかしていられないのが琢磨である。確にレースで結果を残しているのは,エースである琢磨の方なのだが,アンソニーの結果が度重なる不運によるものであり,彼本来の実力を示していないことも事実である。「運も実力のうち」と言うが,アンソニーに必要なのは正にその運なのである。ひょっとすると今夜あたり,幸運の女神がアンソニーにも微笑んでくれるかもしれない。

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2007年8月18日 (土)

花火ではなく雑草のように

 美しさと儚さを併せ持つ花火は,夜空を彩る夏の風物詩である。しかし,花火が暗い夜空を色鮮やかに染め上げ,どんなに美しく咲こうとも,一瞬先で待ち受けているのは,漆黒の闇である。華麗なるモータースポーツの世界も,そんな花火に似ている。数々の苦難を乗り越え誕生し,資金も技術も経験もないが,結束力だけはパドック随一のSAF1。そんな情熱が原動力となり,テールエンダーの常連だったチームは,僅か1年あまりでポイントを獲得するまでに成長した。しかしここ1週間,SAF1の将来について,様々な憶測が流れている。

 SAF1は現在チーム株式の売却交渉を,GP2に参戦しているカンポスレーシングのオーナーであるエイドリアン・カンポス氏と,そのビジネスパートナーであるスペイン人実業家,アレハンドロ・アギャグ氏と行っている。SAF1側は,少数株式の売却を検討しており,その資金を今後のチーム運営に充てようと考えている。既にアギャグ氏は,「4,000万ユーロ(約64億4,000万円)を投じてSAF1株式の40%を取得した」と発表しているが,亜久里代表は,「チームは売却していないが,話し合っている」と述べ,交渉が現在も継続中であることを明らかにしている。 

 鈴木亜久里代表が常々語っていたように,SAF1の資金難は今更始まったことではない。参戦1年目の昨年は,スポンサー交渉を電通に委託し,年間参戦に必要な資金を何とか確保していた。そして2年目となる今季は,日本だけに限らず国際的なスポンサー獲得に向け,チーム独自の交渉を始めていた。しかし,カスタマーシャシー問題に揺れるSAF1を積極的にサポートしようと考える企業は少なく,シーズン前から交渉していたメインスポンサーとの交渉も,結局まとまることはなかった。そんな窮地のSAF1を救ったのが,謎の企業「SS UNITED」であった。しかし,活動実態がほとんどないこの企業との契約を疑問視する声は,開幕当初から数多く挙がっていた。

 そして案の定起こってしまった,スポンサー料の未払い。ダニエレ・オーデット/マネージング・ディレクターは,1回目の支払い以降一向にスポンサー料を支払わないSS UNITEDに対し,告訴をも視野に入れているという。併せてオーデット氏は,「確かにわれわれにパートナーが必要なのは確か」と,資金難に陥っている現状は認めながらも,チーム経営権を譲渡する50%以上の売却は否定しており,今後も「日本のSAF1」は継続される見通しである。しかし,何が起こるか分からないのがF1界。いずれ消えてしまう花火ではなく,誰に踏みつけられても生き続ける雑草のように,SAF1にはどんな形であれサーキットで生き残ってもらいたい。

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2007年8月12日 (日)

SAF1に何が起きている!?

 「金は天下の回りもの」と言うが,それが回ってきた試しがない庶民は,諺の意味をどう理解すればよいのだろうか。バブル景気に沸いた時代ならいざ知らず,ガソリンの平均価格が150円に迫る勢いを見せている今日,1円でも無駄にできないと考えている人は多いだろう。しかし,金がなくて困っているのは,何も我々庶民だけではない。2年目の今季,ホンダワークスを上回る活躍を見せているSAF1も,現在明日をも知れぬその日暮らしの戦いを強いられているのだ。先週行われたハンガリーGPのパドックでは,SAF1が深刻な資金難に陥っているという噂が駆けめぐった。

 SAF1は開幕直前,香港に拠点を置く「SS UNITED」という石油会社とスポンサー契約を結んだ。しかし7月以降,この企業がスポンサー料の支払いを滞っており,その影響によりチームは,活動規模を縮小せざるを得ない状況だという。現在SS UNITEDのHPはリニューアル中で閉鎖状態にあり,関係者とも連絡がとれない状況だという。この企業については,F1のスポンサーに名乗り出た割には経営実態がほとんどないなど,当初から怪しげな雰囲気が漂っていた。亜久里代表も,資金不足については常々口にしていたことだが,スペイン人実業家とチーム株式の売却交渉をスタートさせたとの話もあり,いよいよSAF1は深刻な状況に陥ってしまっているようだ。

 更にもう一つ,SAF1に関する不可解な話がある。チームは現在,イギリス・リーフィールドにあるファクトリーを拠点にしているが,このファクトリーの更新契約を結んでいないというのである。元々このファクトリーは,TWR率いるアロウズが使用していたものだが,アロウズ消滅後はメナードの手に渡り,現在はSAF1がメナードから賃貸しているものである。SAF1の参戦当初,「リーフィールドの賃貸契約は3年であり,その間にホンダの拠点であるブラックレー近くにファクトリーを建設する」という話もあった。しかし,資金難に喘ぐチームに,ファクトリーを建設できる余裕があるはずもない。もしかするとこれも,チーム株式売却と何らかの関係があるのかも知れない。

 だが,亜久里代表はハンガリーGPで,「2008年は独自にマシンを製造する」という注目すべき発言をしている。そもそもSAF1は,来季からホンダの現行型シャシーであるRA107,或いは来季型のRA108を購入するものと思われていたので,この亜久里代表の発言は驚きを持って捉えられている。亜久里代表は集まった記者団に,「チームの準備は整っているという自信がある」と述べたようだが,チームの現状を考えると,にわかには信じがたい話である。資金難&株式売却報道,ファクトリー契約未更新,そして独自マシン製造発言・・・。全くかみ合わない話であるが故に,余計に「何か」を感じてしまう。一体SAF1に何が起きているのか?事態が明確になるには,もうしばらく時間が必要になるだろう。

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2007年8月 6日 (月)

表彰台を見つめる思い

 月日の経つのは本当に早い。昨年のハンガリーGPは,タイトルを争っていたフェルナンド・アロンソとミハエル・シューマッハに,相次いでペナルティが科せられたが,あれから早1年が過ぎようとしている。そして今年のハンガリーGPもまた,昨年同様「ペナルティ合戦」の様相を呈してきている。昨日行われた公式予選で,アロンソが起こした「停車事件」。ハンガリーGPのスチュワードは,アロンソにグリッド5番手降格の処分,更にマクラーレンに対しては,コンストラクターズ・ポイントを与えないという処分を下している。アロンソにとっては,2年連続となるペナルティとなった。彼が初優勝を飾ったのは2003年のハンガリーGPなのだが,どうもここ数年はあまり相性が良くない。

 ちょうど1年前も「一貫性のない判定」で述べたが,1年経っても相変わらずスチュワードの判定は一貫性がない。ルノーのジャンカルロ・フィジケラは,このレースからF1復帰を果たしたスパイカーの山本左近の予選アタックを不用意に妨害したとして,アロンソと同じくグリッド5番手降格のペナルティを科せられた。しかし,アロンソとフィジケラとでは,違反を犯した状況がまるで異なる。にもかかわらず,両者は同じペナルティを受けている。ちなみに昨年,アロンソとミハエルに与えられたペナルティは,「1度の違反に対し,予選タイムに1秒加算」というもの。どうも腑に落ちないことが多い。

 さて,こんな予期せぬ出来事の多いGPは,レースも荒れるものであるが,序盤は大きな波乱もなく淡々と周回が続く。SAF1の佐藤琢磨は,得意のスタートでポジションを上げ,フェラーリのフェリペ・マッサを抑え15番手を走行。マッサは予選で,燃料の入れ忘れというフェラーリらしからぬミスのため14番手に沈んだが,レースではマッサ自身のペースが上がらない。どうやら今度は,相当燃料を搭載しているようだ。一方スパイカーの左近は,単独スピンで早々にリタイアを喫している。レース中盤,この日2台目のリタイヤは,ホンダのジェンソン・バトン。スタートで後方に埋もれ,次に映し出されたのはリタイアの映像。これが昨年のウィナーの姿だと思うと何とも悲しい。

 レース終盤,トップのハミルトンは2番手ライコネンと,3番手BMWザウバーのニック・ハイドフェルドはアロンソと,それぞれ1秒以内で激しい攻防を繰り広げる。しかし,追い抜きの難しいハンガロリンクでは,距離を詰めてもオーバーテイクまでは至らず,結局このままの順位でチェッカーを受けた。レース後の表彰台では,ハミルトンが満面の笑みでトロフィーを受け取る一方,本来チームトロフィーを受け取るマクラーレン関係者の姿はなかった。この表彰台を,ロン・デニス代表はどんな思いで見つめているのだろう。ハミルトンの勝利が素直に受け入れられない,何とも複雑な表彰台であった。

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2007年8月 5日 (日)

「子どもたち」の教育は・・・

 「子どものケンカに親が口を出すな」と言われるように,本来子ども同士の諍いは,子ども達だけで解決すべきであり,またそうしてきた過去がある。子どもには子どもなりの世界観と価値観があり,それに対しやたらと親が介入すべきではないと考えられてきたからであろう。しかし現代は,子どものケンカに親が口を出すことなど,日常的に行われていることである。自己中心的な人間が増えた現代社会では,子どもの教育もい古からの言い伝え通りにはいかないようだ。だが,これはどうやら身近な世界だけの話ではないらしい。F1界に於いても,「子どもたち」の教育は大変なようだ。

 F1第11戦ハンガリーGP予選,熾烈なタイムアタックが繰り広げられるQ3の終了直前に,「子どもたち」による事件は起こった。最後のアタックに備え,ピットインしていたマクラーレンのフェルナンド・アロンソが,ロリポップが上がったにもかかわらず,暫くスタートしなかったのだ。これだけならさして問題もないのだが,彼の後ろには順番待ちをするチームメイト,ルイス・ハミルトンのマシンがあった。わずか10秒弱のロスではあったが,この「駐車」により,ハミルトンの最終アタック前にQ3終了のチェッカーが出てしまう。一方のアロンソは,きっちりとPPを獲得。両者明暗が分かれた。

 実はQ3序盤,チームからハミルトンに対し「燃料を多く搭載しているアロンソを先行させるように」と無線指示が出ていた。しかし彼は,フェラーリのキミ・ライコネンが近づいていることを理由にこれを拒否したという。それに対し,今度はアロンソが意図的にピットアウトを遅らせる・・・。それは,予選終了後にデニス代表がアロンソの個人トレーナーであるファブリツィオ・ボッラを捕まえる姿が,国際映像に映し出されたことからも推測できた。チームからの指示を無視し続けたハミルトンも問題だが,それに対して報復措置をとったアロンソは論外。デニス代表が激昂するのも無理ないだろう。

 予選終了後,レーススチュワードに呼ばれたデニス代表と両ドライバーは,一部始終をスチュワードに報告している。その中でアロンソは,ロリポップが上がってからすぐにスタートしなかったことについて,「マシンに正しいタイヤが装着されているかどうかを確認していたから」。さらに,なぜそれを20秒の停車時間中に行わなかったのかについては,「カウントダウンが始まっていたので,無線で通信することは不可能だった」とのこと。結局アロンソにはグリッド5番降格のペナルティが科せられ,PPはハミルトンの手に戻ったが,これで両者に新たな火種ができてしまったことだけは間違いないだろう。血の気が多い兄と,優等生だが策士の弟。完璧主義の父親としては,やんちゃな子どもたちの躾も楽ではない・・・。

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