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2007年9月30日 (日)

雨に濡れた富士決戦

 雨は全てを「無」にする可能性を秘めている。そして30年のF1開催となるぶりとなる富士スピードウェイは,昨日に引き続き今日も雨に濡れている。昨日行われた公式予選では,ルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソのマクラーレン勢がフロントロウを獲得。一方,逆転を狙うフェラーリ勢は,セカンドロウから1コーナーを狙う。日本勢はホンダのジェンソン・バトンが今季ベストとなる7番手を獲得したものの,トヨタは14-16番手と,お膝元で速さを発揮することができなかった。SAF1はアンソニー・デビッドソンが19番手,佐藤琢磨はスパイカーの山本左近と並び,最後尾からサバイバルレースを戦う。荒れたレースになることは必至だろう。 

 午後1時30分,決勝レースはセーフティーカー先導でスタートが切られた。2周目,フェラーリ勢が早くもピットインし,タイヤをエクストリーム・ウエットに履き替える。浅溝でギャンブルに出たフェラーリだったが,正に雨に足下をすくわれる格好となった。レーススタートから10周が過ぎても雨脚は弱まらず,逆に視界はますます悪くなっていく。トヨタのヤルノ・トゥルーリはチーム無線で「レースを中断したほうがいい!」と,悲痛な叫びをあげている。どうやら集団の中でスピンを喫し,ポジションを落としていたようだ。フェラーリのフェリペ・マッサもSCを抜いたとして,ビットストップ・ペナルティの指示が出されている。19周目,SCのライトが消えいよいよレースが本格的にスタートした!

 スタート直後の1コーナーで,BMWザウバーのニック・ハイドフェルドとバトンが接触。バトンはフロント・ウイングを破損。この隙をついて,トロ・ロッソのセバスチャン・ベッテルが3番手に浮上する。更に琢磨もフロントウイングを破損し,緊急ピットイン。給油リグから燃料が漏れ,炎を上げながらピットアウトしていく。コースの至る所で接触やスピンが続出するが,ランオフエリアが広いことが幸いし,リタイアすことなくコースに復帰するマシンが多い。フェルナンド・アロンソはピットストップ後にトロ・ロッソと接触し,右サイドポットを破損。そのまま走行を続けるが,100Rでスピンを喫しタイヤバリアの餌食となった。このクラッシュでコースには再びSCが入る。

 SCラン中に,トップハミルトンの背後につけていたレッドブルのマーク・ウェバーに,あろうことかベッテルが接触してしまい両者共にリタイア。レッドブル・グループは,一気に14ポイントを失うこととなった。48周目にレース再開するが,ウィリアムズのニコ・ロズベルグ,SAF1のデビッドソンと次々にレースを終えていく。トップはハミルトン,その後方でルノーのヘイキ・コバライネンとキミ・ライコネンが激しい2位争いを展開する。最終ラップまで続いた両者の争いは,コバライネンに軍配が上がる。一方のマッサは,最終コーナーまでBMWザウバーのロバート・クビサと壮絶な6位争いを繰り広げた。大混乱のレースであったが,雨に濡れた富士決戦を制したのはハミルトン。史上初のルーキー・チャンピオンが現実のものになろうとしている。

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2007年9月29日 (土)

それぞれの想いを胸にして

 日本のモータースポーツファンにとって,年に一度の「最もエキサイティングな週末」がやってきた。2007F1日本GPは,富士スピードウェイを舞台に3日間の戦いの幕が切って落とされた。マクラーレンが「スパイ疑惑」により,今季のコンストラクターズ・ポイントを剥奪されたことで,ファンの注目はドライバーズタイトル争いの一点に注がれている。ポイントリーダーであるマクラーレンのルイス・ハミルトンを,2点差で追う2年連続王者フェルナンド・アロンソ。そして奇跡の大逆転を信じ,ハミルトンを13点差で追うフェラーリのキミ・ライコネン。3人にとって,富士は絶対に負けられない1戦である。

 全長1475mという,世界屈指の超ロングストレートを持つ富士スピードウェイは,「レスダウンフォース・サーキットを得意とするマクラーレンが有利」という見方が大勢を占めていた。事実,カナダ・ジル・ビルニューブ・サーキットやイタリアのモンツァなどでは,マクラーレンの俊足ぶりにフェラーリは為す術なく敗戦を喫している。しかし,富士はロングストレートを持つ反面,コース終盤には低速のテクニカルセクションがあり,両方のバランスを考慮した難しいセッティングが要求される。1日目のフリー走行では,まだ両チーム共に「探り合い」の状況であり,真の速さが見られるのは,レースシミュレーションを行う明日のフリー走行と言うことになるだろう。

 一方,地元開催でこちらも負けられないトヨタとホンダ。フリー走行2回目では,ヤルノ・トゥルーリが4番手,ラルフ・シューマッハも9番手タイムをマークするなど,トヨタは「お膝元」で順調な仕上がりを見せている。それに対し,「敵地」で今ひとつ波に乗れないのがホンダである。ジェンソン・バトンは淡々とセットアップに励んだものの,ルーベンス・バリチェロは空力バランスを欠き,満足なグリップを得ることができず下位に沈んだ。「朝からアンダートレーまでを含めて何から何まで交換してみたけれど,原因が特定できない」と,中本修平/シニア・テクニカル・ディレクターも頭を抱えている。不確定要素がないかぎり,ホンダの上位進出は難しいのかもしれない。

 最後に2年目の日本GPを迎えたSAF1について。ここ数ヶ月は資金難や買収報道に揺れたチームであったが,日本GPを迎えるに当たり「FOUR LEAF」「Pioneer」など,数社のスポットスポンサーを獲得している。これで今季を乗り切るだけの資金的なメドは立ったが,ライバル達の進歩も著しく,SAF1の戦力が相対的に低下してきている状況に変わりはない。佐藤琢磨は1回目のフリー走行でギアボックストラブルが発生し,予定していたプログラムをキャンセルせざるを得ず,地元で苦しいスタートを切っている。明日以降の巻き返しに期待しよう。ドライバー,チーム,スポンサー,そして世界中のF1ファン・・・。それぞれが様々な想いを胸にして,富士決戦がいよいよ始まった!

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2007年9月16日 (日)

”シロ”が”クロ”に変わるとき

 本当に信じられるものとは,一体この世の中に幾つあるのだろう。長い間”シロ”と思われていたものが,一瞬にして”クロ”に変わってしまうことも,またその逆が起こることも,F1の世界では日常茶飯事である。今週水曜日,今季のF1界最大のスキャンダルと言ってもいい,マクラーレンに対するのスパイ疑惑の判決が,FIA世界モータースポーツ評議会より発表された。その判決内容は,マクラーレンのコンストラクターズ・ポイントを剥奪。更に,1億ドル(約115億円)という巨額の罰金を科すというもの。一度はFIAにより”シロ”の判決を言い渡されていたマクラーレンであったが,急転直下,今度は”クロ”の烙印を押されてしまったのだ。

 コトの発端となったのは,以前「ステップニー・ゲートの結末」にも書いた,フェラーリのナイジェル・ステップニーと,マクラーレンのマイク・コフランによるスパイ疑惑である。今回争点となったのは,フェラーリの機密事項をマクラーレンがどの程度「組織的に」把握していたかであった。前回,7月26日の公聴会に提出された証拠からは,ステップニーとコフランが僅かな接触を試みていたことしか認められなかったため,判決は”シロ”だった。しかし今回は,「コフランの所有していた大量の情報は組織的な方法で受け取ったものであり,チーム内である程度共有され,マクラーレンは彼から競技上のアドバンテージを与えられた」と,裁定文の中で示している。

 マクラーレンがFIAの定めるスポーティング・コードに違反し,不当にフェラーリの技術情報を入手していたのは,紛れもない事実であろう。しかし,それによりマクラーレンが,ライバルチームに対してどれほどのアドバンテージを得ていたのかというと,大いに疑問が残る。ましてやその情報が,彼らのマシンMP4-22に流用された証拠があるわけでもないだろう。ライバルチームの情報を不当に「所持」しているだけで”クロ”となるのであれば,今季始めにスパイカーがレッドブルの設計図を入手していた件はどうなるのであろう。結局彼らには,何のお咎めもなかったのだが・・・。

 FIAが「フェラーリ贔屓」や「ダブル・スタンダード」と非難されるのは,今更始まったことではない。ポール・ストゥダートが「FIAって何の略語だと思う?フェラーリ国際協力機構(Ferrari International Assistance)なんだ」と冗談を言うように,今でも散々フェラーリ有利の判定を下してきた。今回の判決も,フェラーリが絡んでいたから大事になったのであって,下位チームが同じような違反を犯したところで,これほど厳しい裁定を下されることもなかったであろう。唯一の救いは,アロンソ&ハミルトンのドライバーズ・ポイントが剥奪されず,彼らの真剣勝負が政治の犠牲にならなかったこと。その”シロ”が,また”クロ”に変わらないことを祈ろう。 

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2007年9月10日 (月)

「華麗なるレース」を求めて

 台風一過の土曜日,私にとっては年に一度の楽しみである,「GOSPEL NIGHT」という音楽イベントに参加した。場所は東京国際フォーラム ホールA。観客収容人数5000名を数える,日本が誇る巨大音楽ホールのひとつである。そのステージで今回は何と,250名のバックコーラスを従えソロを歌う機会を得た。楽曲はQUEENのブライアン・メイが手がけた「手をとりあって~Let Us Cling Together~」。たった1曲,僅か数分間のステージではあったが,自分の声が巨大ホール中に響き渡る臨場感は正に圧巻。歌い上げた後の感じは,北島康介と同じく「チョー気持ちいい!!」。ちなみにこの楽曲が収録されているQUEENのアルバムタイトルは「華麗なるレース」。こちらも何ともいい感じの響きである。

 昨晩はそんな余韻に浸りながら,イタリアGPを見ようとフジテレビにチャンネルを合わせた。すると,冒頭からトヨタのマシンと共に某アイドルグループの木村くんが現れ,何やら知ったような口ぶりで語っている。初の富士開催に向け,トヨタを前面に押し出したいのは分かるが,どうもあからさま感が否めない。フェラーリをバックにクールに始まったアバンタイトルのBGMも,今回はQUEENの「I WAS BORN TO LOVE YOU」。そこまで木村くん繋がりにしなくてもいいだろうに。肝心のレースでも,トヨタの2台はオープニングラップで順位を落とし,今回も結果を残すことができなかった。トヨタが「華麗なるレース」を見せるためには,まだまだクリアすべき課題が多いようだ。

 さて,先週末のイタリアGPで,一枚の注目すべきリリースがFOMから出された。日本GPが2009年より,鈴鹿サーキットと富士スピードウェイとの隔年開催となることを伝えるものである。これにより,昨年20年に渡るF1開催の歴史に一度ピリオドを打った鈴鹿が,再びF1のカレンダーに復活することが決まった。富士での開催に疑問符を投げかける関係者も多かっただけに,この決定はファンならずとも大いに喜ぶべきものであろう。このニュースを聞いた佐藤琢磨も「隔年開催になれば,ファンにとっても興味深い二つの日本GPになると思うし,両方とも成功させたい」と喜びを語っている。

 現在,F1が同一国で隔年開催されているのは,ドイツGPのニュルブルクリンクとホッケンハイム。バーニー・エクレストンFOM会長の目指す「1国1GP」の趣旨からすれば,今回の富士・鈴鹿隔年開催も,以前から噂されていた開催形態である。「東の富士,西の鈴鹿」という,日本が世界に誇る二つのサーキットでF1が開催されるとなれば,興行的にも長期にわたって安定した収入が期待できる。今回の契約で一体どれくらいのお金が動いたのか,我々は知る由もないが,細かい詮索は無しにしよう。数年後からは東と西で交互に,「華麗なるレース」を見ることができるのだから。

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2007年9月 2日 (日)

F1熱を呼び起こせ!

 夏が終わってしまった。どんなに残暑が厳しかろうと,どんなにセミが鳴いていようとも,9月はもう夏ではないのである。夏という季節は人々を開放的にし,熱い思い出を我々に残してくれる。しかし9月の訪れとともに,その「熱い夏」も終わってしまったのだ。しかし,嘆く事なかれ。F1界では夏が終わろうとも,熱い戦いはまだ続いている。残り5戦となりいよいよ終盤戦となった感のあるチャンピオンシップ争いは,未だ2強4名のドライバーがしのぎを削る,正に群雄割拠の様相を呈している。そしてもうひとつ,私たちF1ファンの興味を掻き立てているのが,来季を見据えた様々な動きである。

 さて,予てより噂に上っていたスパイカーの買収が,いよいよ現実的な話となったようだ。買収するのは,スパイカーのミシェル・モル/マネージング・ディレクターと,インド人実業家であるヴィジャイ・マルヤ氏との共同コンソーシアムである。マルヤ氏は,航空会社としても知られる「キングフィッシャー」ブランドを持つ「ユナイテッド・ブリュワーズ・グループ」の経営者であり,傘下企業であるキングフィッシャー航空は,今季からトヨタのスポンサーとなっている。今回のスパイカー買収額は1億1,000万ドル(約127億6,000万円)と伝えられており,スパイカーがその前身であるミッドランドを買収した時の額,1億ドル(約116億円)を上回るものである。

 この買収劇でクローズアップされてきたのが,現在インド人で唯一のスーパーライセンスを保持する,ナレイン・カーティケヤンである,カーティケヤンは現在,ウィリアムズとテストドライバー契約を結んでおり,来季も残留を希望していると伝えられていた。しかしウィリアムズの首脳陣は,もうひとりのテストドライバーである中嶋一貴を高く評価しており,今季カーティケヤンがテストを担当することは殆どなかった。しかし,ここに来てのスパイカー買収劇。「オール・インドチームを作るのが夢」と語るマルヤ氏がいれば,カーティケヤンのレギュラー復活も現実的な話となるだろう。

 現在,アジアや中東のマーケットは,各国の国際企業が世界戦略を練る上で,決して外すことのできない市場である。F1開催国も,現在行われている日本・マレーシア・中国・バーレーンの4カ国に加え,来季からはシンガポール,2009年からはドバイと韓国が名乗りを上げている。更に「F1予備校」としての地位を確立したGP2では,来季から「GP2アジアシリーズ」をスタートさせせ,積極的にアジア及び中東のドライバーを起用することを打ち出している。インド人実業家によるスパイカー買収劇が,今後はインドのF1熱を盛り上げることになるのだろうか。それにしても,これだけ世界がアジアに注目するなかで中で,今ひとつ盛り上がりに欠けるのが日本なんだよなぁ・・・。 

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