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2007年9月16日 (日)

”シロ”が”クロ”に変わるとき

 本当に信じられるものとは,一体この世の中に幾つあるのだろう。長い間”シロ”と思われていたものが,一瞬にして”クロ”に変わってしまうことも,またその逆が起こることも,F1の世界では日常茶飯事である。今週水曜日,今季のF1界最大のスキャンダルと言ってもいい,マクラーレンに対するのスパイ疑惑の判決が,FIA世界モータースポーツ評議会より発表された。その判決内容は,マクラーレンのコンストラクターズ・ポイントを剥奪。更に,1億ドル(約115億円)という巨額の罰金を科すというもの。一度はFIAにより”シロ”の判決を言い渡されていたマクラーレンであったが,急転直下,今度は”クロ”の烙印を押されてしまったのだ。

 コトの発端となったのは,以前「ステップニー・ゲートの結末」にも書いた,フェラーリのナイジェル・ステップニーと,マクラーレンのマイク・コフランによるスパイ疑惑である。今回争点となったのは,フェラーリの機密事項をマクラーレンがどの程度「組織的に」把握していたかであった。前回,7月26日の公聴会に提出された証拠からは,ステップニーとコフランが僅かな接触を試みていたことしか認められなかったため,判決は”シロ”だった。しかし今回は,「コフランの所有していた大量の情報は組織的な方法で受け取ったものであり,チーム内である程度共有され,マクラーレンは彼から競技上のアドバンテージを与えられた」と,裁定文の中で示している。

 マクラーレンがFIAの定めるスポーティング・コードに違反し,不当にフェラーリの技術情報を入手していたのは,紛れもない事実であろう。しかし,それによりマクラーレンが,ライバルチームに対してどれほどのアドバンテージを得ていたのかというと,大いに疑問が残る。ましてやその情報が,彼らのマシンMP4-22に流用された証拠があるわけでもないだろう。ライバルチームの情報を不当に「所持」しているだけで”クロ”となるのであれば,今季始めにスパイカーがレッドブルの設計図を入手していた件はどうなるのであろう。結局彼らには,何のお咎めもなかったのだが・・・。

 FIAが「フェラーリ贔屓」や「ダブル・スタンダード」と非難されるのは,今更始まったことではない。ポール・ストゥダートが「FIAって何の略語だと思う?フェラーリ国際協力機構(Ferrari International Assistance)なんだ」と冗談を言うように,今でも散々フェラーリ有利の判定を下してきた。今回の判決も,フェラーリが絡んでいたから大事になったのであって,下位チームが同じような違反を犯したところで,これほど厳しい裁定を下されることもなかったであろう。唯一の救いは,アロンソ&ハミルトンのドライバーズ・ポイントが剥奪されず,彼らの真剣勝負が政治の犠牲にならなかったこと。その”シロ”が,また”クロ”に変わらないことを祈ろう。 

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コメント

 こんばんは!
 出ましたねぇ~
 一昨日の夜(朝?)は酔っぱらった状態でエントリー上げましたが、落ち着いてリリース全文を読むと、周到に練られたマクラーレン包囲網と思えます。
 マクラーレンにもデータを利用した弱みはありますが、少なくともマシン性能に大きな影響を与えたとは思いませんし、、、
 罰金の1億ドルやコンストラクターズポイントの剥奪ですが、これはマクラーレンの懐具合を見つつムリのない範囲を設定し、かつチャンピオンシップの注目を削がない決定ですが、インパクトは十分なので世間の目はこちらに集まります。しかし、それより来期マシンに嵌められた足カセの方が痛いですね。ヘタしたら長期にわたって影響が出そうです。

 なんとも絶妙です。
 来年もシリーズはフェラーリのものでしょうね。

投稿: mar | 2007年9月17日 (月) 02時21分

こんにちは
ドライバーのポイントがそのまま、と言うのもスッキリしないんですよね。
違法なマシンでのポイント獲得が合法とは…へりくつを言えば、車検を通過したマシンなので、レース参加と結果は有効…で、マシン製作・開発過程に違法性があるからコンストラクターズポイントだけ剥奪。
理屈は通るかも知れませんが、納得は…
 そもそも、未だに事件の全貌が明らかになったわけではないので、それが一番の問題かも知れません。

投稿: ビートニク | 2007年9月17日 (月) 14時12分

 marさん,こんばんは!
 仰るとおり,完全なマクラーレン包囲網ですね。史上最高額の1億ドルという罰金には驚きましたが,マクラーレンの規模を考えれば妥当?なのかと。罰金というには,あまりにも天文学的金額ですが(^^;)
 今回の決定で,マクラーレンは来季に関しても執行猶予の身となってしまいましたね。実際にフェラーリの情報を来季マシンに投入するなんてコトはしないでしょうし,する必要性もないんですが,逆に技術的に思い切ったことができなくなりそうで。 うーん,ストゥダートの言葉が全てを物語ってる・・・(--;)ではでは!

投稿: KAZ | 2007年9月17日 (月) 23時56分

 ビートニクさん,こんばんは!
 何だかすっきりしないのは,私も同感です。ドライバーズ・ポイントを剥奪しなかったのは,2強4人のタイトル争いを終わらせないためでしょうが,理屈は合っていても,おかしなところは満載ですね(^^;)
 2005年のB.A.Rの燃料タンク事件では,何の非もないドライバーが,車検を通過したマシンで獲得したポイントを剥奪され,更に2戦出場停止処分が下りましたからねぇ。ダブルスタンダードもいいころです(--#)今更始まったコトじゃないですが・・・。
ではでは!

投稿: KAZ | 2007年9月18日 (火) 00時14分

こんにちは。
「またか…」って感じです。マクラーレンにも否はあるのでしょうが、どうしてフェラーリが得する結果ばかりなんでしょう?FIAって何なんでしょう?国連におけるアメリカみたいなものでしょうか?正義はどこにあるのでしょう?誰かがどこかで利益を得ているのでしょうか?ファンの気持ちなどお構い無しなんですかね?F1を目指す子供達にどんな説明をするんでしょうか?
…きりが無いのでこの辺で止めておきます。
でもこのままではスポーツと言うよりもエンターテーメントに成り下がるでしょうね。

投稿: touran | 2007年9月18日 (火) 10時07分

 touranさん,こんばんは!
 確かに「またか」って感じですね(--;)仮に同じ違反をマクラーレンではなくフェラーリが犯していたとしたら,彼らにマクラーレンと同じ判定が下されたでしょうか?おそらくもっと軽いペナルティで済んでいたでしょうね。
 一時検討されたドライバーズ・ポイントの剥奪は,バーニー御大らが阻止したと語っています。昨年アロンソが口にした,「F1はもはやスポーツでなくなった」という言葉が今年も空しく響きますね・・・。ではでは!

投稿: KAZ | 2007年9月18日 (火) 21時47分

こんばんは!

今回の裁定ですが、ドライバーズ・ポイントが剥奪されなかったのが何よりでした。
とはいうものの、ドライバーは全く関与していないものと思っていたら、判決文に、しっかりとアロンソの名前が出てきていたのには、少なからず驚きました。ドライバーは、証拠を提出する代わりに免責という話のようなのですが、ハミルトンは、終始一貫して「知らぬ存ぜぬ」で通したみたいですので、ここのあたり、ドライバーのチームへの忠誠度がわかって面白かったです。
ただ、今回の一件で、一番気掛かりなのは、アロンソがこのままチームに居残ることができるのか?、ということでしょうか。記事で読むかぎりでは、今回のアロンソの対応は、どうもチームへの「腹いせ」という感じがしてしまいます。また実際に、アロンソが今季限りでマクラーレンを離脱するのでは?という話も出てきているようですね。
しかしながら、私の中における、アロンソの人間としての信用度はガタ落ちといった感じです。やはり「子供」な部分を感じてしまうのですが・・・。はたして彼は、今後どのような運命をたどるのでしょうか?

投稿: Tommi-TAG | 2007年9月19日 (水) 20時15分

 Tommi-TAGさん,こんばんは!
 アロンソとデ・ラ・ロサは,いわゆる司法取引のようなものですね。免責になったのはいいのですが,この一件で,アロンソとロン・デニスとの仲は完全に修復不能なものとなったようですね(・・;)
 となると,アロンソ移籍が現実のものとして考えられてきます。ルノーがイタリアGPで発表すると言われていた来季のラインナップを発表しないのも,アロンソ待ちなのでしょう。他にもフェラーリやレッドブルまで名前の挙がる始末。仮にアロンソの移籍が現実のものとなれば,ストーブリーグは大混乱になりますね(^^;)
 ダブルチャンピオンとは言え,アロンソはまだまだ26歳の青二才。子どもの部分も多くあります。あまりにも若くして成功してしまいましたからねぇ・・・。ではでは!

投稿: KAZ | 2007年9月21日 (金) 00時52分

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