2010年1月27日 (水)

命とは・・・

 「命とは残された時間である」という言葉を,最近読んだ本の中に見つけた。限りある命とどう向かい合っていくか。そして,自分に残された時間を,どのように生きていくのか?いつ訪れるともしれない「死」の恐怖に戦くよりも,生きているという喜びをかみしめながら,残された時間を精一杯生きることが,自分の命に真っ正面から向き合うということなのだと。そしてその本の筆者は,こうも記していた。「命を,自分のためだけでなく,人のために使ってあげてほしい・・・」と。自分に残された時間は,自分自身のためだけにあるのではない。自分の愛する人,自分を支えてくれる人,自分を信じてくれている人・・・。自分に残された時間,すなわち命は,そんな人たちのためにも使われるべきなのであろう。

 最後にこのブログを書いた2007年のクリスマス・イブから,2年以上の年月が流れた。中途半端に,何の前触れもなく更新を止めてしまったのは,新しい命と向き合うことになったからである。2008年1月27日,ちょうど2年前の今日,最愛の娘が誕生した。一時は切迫早産の危険性もあった妻が,9ヶ月近く大切に育んできた命を,この世に誕生させたのだ。それからというもの,私の生活は一変した。自分の時間を好きなように,ほぼ自分自身のためだけに使ってきていた私が,自分よりも遙かに幼く,無力で,小さな命のために,自分の「命」を使うようになったのだ。そしてそれは,「親」として至極当然のことであった。

 1度止めてしまった流れを取り戻すには,それ相応のエネルギーがいる。広げた風呂敷を閉じるため,最後にもう1度筆を執るのに,2年という月日を費やした。その間にも,世界は一瞬たりとも止まることなく動き続けている。それは,「日進月歩」どころか,「秒進分歩」のF1界にとっても同じこと。この2年の間に,SAF1が,ホンダが,そしてトヨタがF1を去り,佐藤琢磨,山本左近,中嶋一貴の日本人ドライバーも,もはや「過去のドライバー」になろうとしている。2010年を最後にブリヂストンがタイヤ供給から撤退すると,「F1から日本がなくなる」という,一時期では考えられないような事態が,現実に起ころうとしていたのである。

 そんな中で唯一の希望は,このブログでも以前から注目していた,小林可夢偉の存在であった。昨年11月に行われた「モータースポーツフェスティバル2009」で,幸運にもその可夢偉からサインをもらう機会に恵まれた。「可夢偉選手,干支と誕生日同じですよね?」と,私が差し出した運転免許証を見て,「あ,ホンマや!」と言いながら,気さくにサインをしてくれた可夢偉。その翌日に舞い込んだF1デビューの知らせを聞いたとき,どんなにうれしかったことか。その後の活躍と,トヨタ撤退のどん底から実力で勝ち取ったBMWザウバーのレギュラーシートは,これからの可夢偉の活躍を予感させるに十分なものだろう。

 新しい時代の幕開けが,刻一刻と迫っている。そんなF1を一人のファンとして,これからも見守り続けるだろう。このブログを始めたのは,弟の誕生日。自分と同じ誕生日の可夢偉の活躍を祈りながら,娘の誕生日の今日,ここに筆を置こうと思う。

最愛の妻みゆきと,娘みずほのために,この「命」を捧げながら・・・。 KAZ

 

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2007年12月16日 (日)

マネージャー達の東奔西走

 世間は何かと慌ただしい師走を向かえているが,走り回っているのは何も坊主ばかりではない。年内最後の合同テストを終え,束の間のクリスマス休暇に入ったF1界にも,東奔西走している人々がいる。チームやドライバーの契約を司るマネージャー達である。オフシーズンは,チームやドライバーの将来を左右する重要な時間である。特にドライバーのマネージャーは腕の見せどころ。自分の担当するドライバーの将来はもちろんだが,その契約金の何割かは自身の懐に入るのだから真剣そのものである。従ってこの時期は少しでも有利な条件の契約を結ぼうと,マネージャー達は分厚い契約書と格闘していることだろう。

 F1ドライバーの契約は,非常に複雑かつ強固であると言われている。その契約書には契約金や契約年数はもちろんのこと,契約延長や破棄に関するオプション事項,チームメイトに対する優先権,プロモーション活動の取り決め,更には家族の移動旅費から友人に対するパドックバスの支給枚数に至るまで,実に多岐に渡り記されている。仕事場であるサーキットからプライベートに至るまで事細かに記された契約書は,ドライバーによっては数百ページに及ぶと言われるのも納得ができる。先日,来季の去就が注目されていたフェルナンド・アロンソが,古巣ルノーと来季以降のドライバー契約を結んだが,その契約書にも膨大な「附帯事項」が記されているに違いない。

 その一方で,「F1の契約はあってなきようなもの」とも言われている。いくら強固な契約を結ぼうとも,双方が合意の上であれは途中で契約解除となる場合もあるし,成績が振るわなければ,一方的に解雇される場合もある。そうでなくても,金の力である程度は何とかなるのがF1界。バトンゲートを例に出すまでもなく,違約金を払って移籍するドライバーなどいくらでもいるのが現実である。下位チームなどはそれを逆手に取り,将来有望な若手をトップチームに契約ごと売りつけることで,過酷なF1界で生き残ってきた歴史がある。ジャンカルロ・ミナルディやエディー・ジョーダン,ペーター・ザウバーといったかつてのチーム代表らは,若手発掘には定評のあった人物である。

 しかし現代では,下位チームで実力を認められ,トップチームへとステップアップする例は少なくなってきている。GP2が「F1予備校」の地位を完全に確立した今日は,GP2上がりの新人ドライバーがいきなり,或いはテストドライバーを経て,トップチームからデビューする時代である。既に来季も,ティモ・グロックがトヨタの,ネルソン・ピケJr.がルノーのレースシートを射止めている。ルイス・ハミルトン&ヘイキ・コバライネンのマクラーレン,ニコ・ロズベルグ&中嶋一貴のウィリアムズは,共にGP2卒業生同士のラインアップとなる。それだけに若手ドライバーのマネージャー達もGP2 のシートに狙いを定め,F1関係者の目に触れる機会を増やそうとしているのだ。マネージャー達の東奔西走は今日も続く…


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2007年12月10日 (月)

平均年齢を上げるのは?

 日本で一般的に「定年」というと,60歳前後を指すものだろう。日本では,戦後の高度経済成長を支えてきた「団塊の世代」が定年退職を迎えているが,F1界に於いてもここ数年,世代交代の波が押し寄せている。20歳そこそこの若手が次々と台頭する中,長年で戦ってきたベテラン・ドライバーの行き先が不透明になってきているのだ。先日フォース・インディアでテストを行った,ジャンカルロ・フィジケラとラルフ・シューマッハのふたりである。34歳のフィジケラ,32歳のラルフ。一般社会の中では,まだまだこれからの年齢であるが,低年齢化が進むF1界では,30代はもう大ベテランということなのだろうか。

 90年代初めまでは,F1ドライバーの平均年齢も,現在ほど低くはなかったはずである。ふと気になって,F1ドライバーの平均年齢を調べてみた。今から20年前,日本人初のフルタイムF1ドライバー中嶋悟がデビューを飾った,1987年の開幕戦ブラジルGP。最年長34歳ネルソン・ピケから,最年少22歳のアレックス・カフィまで,総勢23名の平均年齢は,29.2歳となっている。5年後の1992年開幕戦南アフリカGPでも,その年齢はほとんど変わっていない。しかし,それから僅か5年後の1997年開幕戦時には28.1歳と1歳近く若返り,今季開幕戦時は27.6歳まで低年齢化は進んでいる。20年前と比べ,実に1.6歳も若くなっているのだ。

 更に調べていくと,面白いデータが出てきた。2007年最終戦ブラジルGPに参戦したドライバーの平均年齢は27.5歳。ほぼ全員が1歳年を重ねているにもかかわらず,何と今季開幕戦時よりも0.1歳若くなっているのだ!これは,ウィリアムズのベテラン,33歳のアレックス・ブルツが引退し,22歳の中嶋一貴がデビューしたこと。27歳のクリスチャン・アルバースに代わり25歳の山本左近。更にスコット・スピードに代わり,弱冠20歳のセバスチャン・ベッテルが参戦していることなどが原因となっている。交代させられたスピードも,まだ24歳と十分若いのだが・・・。

 その一方で,若手に負けじと現役続投に意欲を燃やすドライバーもいる。現役最年長36歳のデイビッド・クルサードは,来季もレッドブルで参戦する見通しであるし,参戦15年目となるホンダのルーベンス・バリチェロも,最多参戦記録更新を射程に入れている。更にここに来て,36歳のペドロ・デ・ラ・ロサがマクラーレンから復帰する可能性も出てきている。弟に「もうF1で走るべきではない」と,引退を勧めたミハエル・シューマッハも,38歳の年齢を感じさせることなく,テストではトップレベルのタイムを連発するなどまだまだ元気がいい。ベテランと若手がしのぎを削ってこそ,F1のレベルも上がるというもの。来季,平均年齢を上げるのは,果たして誰になるのだろうか。

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2007年11月 4日 (日)

アロンソよ,何処へ行く・・・。

 職場に於いて,最も重要なことは一体どのようなことだろう。職務に対する専門知識,上司やクライアントを満足させる成果,時間と費用に対する効率のよさ,スムーズに仕事を進めるための環境・・・。そのどれもが,重要であるには違いない。しかし,最も忘れてはならないのが「全ては人間が行っていること」という点である。つまり職場に於いて最も重要なことは,仕事を気持ちよく進めることができる人間関係が構築できているかという点である。いくら環境が優れていても,そこで働く者同士が信頼関係で結ばれていなければ,成果が上がることなどない。

 先日,フェルナンド・アロンソがマクラーレンを離脱するというニュースが,全世界を駆けめぐった。今季,ダブル・チャンピオンの肩書きをひっさげ,意気揚々とマクラーレンに移籍したアロンソであったが,当の本人もまさか1年で離脱することになろうとは,夢にも思わなかったことだろう。もちろん,ルイス・ハミルトンという強烈な存在がなければ,このような事態は起こらなかったのかもしれない。しかし,ハミルトンがデビューイヤーからアロンソを脅かす存在になることなど,誰一人として予想していなかったのだろうから,彼を責めることなどできない。

 あえて理由を挙げるとするならば,マクラーレンという職場の雰囲気が,アロンソには合わなかったということなのだろう。スペイン人らしく,ラテン気質で言いたいことははっきり言うアロンソにとって,マクラーレンは少々窮屈だったのかもしれない。移籍当初こそ優等生発言をしていたアロンソだが,シーズンが進むにつれチーム内での居心地は悪くなっていった。イギリスチームの中で,イギリス人スタッフに囲まれ,イギリス人のチームメイトを持ったことで,「自分は孤立している」と,最後は半ば疑心暗鬼になっていたようにも思える。それほどアロンソは,追いつめられた状況にあったのだろう。

 何はともあれ,アロンソがマクラーレンを離れることは決定事項である。そしてアロンソは,彼を招き入れてくれる家を探さなくてはならないのだが,これが簡単なことではない。今季は惜しくもランキング3位に甘んじたとは言え,現役最多19勝を数える2度の王者を満足させるだけの戦闘力を有し,かつ高額な年俸を支払えるチームとなると限られてくる。これをクリアできそうなフェラーリやBMWザウバーは,既に来季のドライバーを確定している。古巣ルノーは歓迎の意向を示しているが,契約年数で揉めている。となると,豊富な資金力を誇るトヨタやレッド・ブルという可能性もあるが,こちらはお世辞にも優勝を狙えるチームとは言えない。さてさて,アロンソよ,何処へ行く・・・。

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2007年10月21日 (日)

決着!混迷のタイトル争い

 物事に始まりがあれば,必ず終わりも存在する。3月18日のオーストラリアGPを皮切りに,世界十数カ国を転戦してきたF1サーカスも,最終決戦の地であるブラジル・インテルラゴスで幕を閉じようとしている。今季は稀に見る混迷のタイトル争いとなったが,それも神童ルイス・ハミルトンの存在なくしては語れないだろう。10年以上に渡ってF1をリードしてきた皇帝ミハエル・シューマッハ引退後,F1界はフェルナンド・アロンソとキミ・ライコネンの時代に突入すると思われたが,ハミルトンのデビューがF1のパワーバランスを著しく変化させた。その戦いも,後数時間後に決着することとなる。

 昨日行われた公式予選では,地元で気合いの入るフェリペ・マッサが,昨年に引き続き見事PPを獲得している。ポイントリーダーのハミルトンもフロント・ロウを確保。3番手ライコネン,4番手アロンソを従え,まずは好位置を確保した。引退の危機に直面しているルノーのジャンカルロ・フィジケラと,トヨタのラルフ・シューマッハは,それぞれ12番手と15番手からのスタート。このGPが,彼らの引退レースとならないことを祈ろう。一方,このレースでウィリアムズから念願のF1デビューを果たした中嶋一貴は18番手。17番手にSAF1の佐藤琢磨,22番手にスパイカーの山本左近と,日本勢は後方から追い上げを図る。

 現地時間午後2時,いよいよ決勝レースが始まった。スタートは混乱なく,各マシン綺麗なスタートを決める。抜群のスタートを決めたライコネンが,ハミルトンをパスし2位に上がる。更に2コーナーでは,4位のアロンソがハミルトンに襲いかかり3位に浮上。ハミルトンもこれを迎撃するが,コースアウトを喫し8位に後退する。すぐに7番手に上がるものの,9周目に何とスローダウン!一気に18位まで後退してしまう。どうやらシフト関連のトラブルが断続的に起きているらしく,12周目に再びスローダウン。これでハミルトンのタイトル獲得は,非常に厳しいものになってきた。それでもハミルトンは,後方から必死の追い上げを図る。

 レースも半分を過ぎたところで,ルノーのヘイキ・コバライネンがクラッシュ,更に地元のホンダ,ルーベンス・バリチェロもエンジンブロー。バリチェロは,今シーズンノーポイントに終わる。50周目,マッサが2度目のピットストップ,この間にライコネンはスーパーアタックを連発,ピットストップでマッサを逆転し,ついにトップに躍り出る。3位にはアロンソ,ハミルトンもポイント圏内7位まで上がってくるがこれが精一杯。最終ラップ,2位にマッサを従え,ライコネンが堂々のチャンピオン・ラン。そして,そのままチェッカー!最大26ポイントという絶対不可能と思われた大逆転で,見事に初のワールドチャンピオンとなった。混戦のタイトル争いを制したのは,フェラーリの新しい皇帝であった。おめでとう!アイスマン,キミ・ライコネン!!

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2007年10月14日 (日)

戦いはこれからだ!

 「レースは人生そのものである」と言うように,チェッカーフラッグを受けるまで,何が起きても不思議ではないのがレースである。2007年のドライバーズ・タイトルは,九分九厘マクラーレンのルイス・ハミルトンが手中にしたと思われた。今季15戦を終え,リタイヤ0,表彰台獲得率80%を誇るハミルトンであれば,そう思うのも当然のことだろう。しかし,富士に引き続き上海も,雨に翻弄されたレースとなった。ハミルトンはピット入り口のグラベルにつかまり,今季初のリタイア。カーカスまでもが目視できるほど消耗していたタイヤを,なぜすぐに交換しなかったのか。ロン・デニス代表の「我々はキミとレースしていたのではなかった。基本的にフェルナンドとレースをしていたのだ」という発言が,その答えとなった。

 この結果,ドライバーズ・ポイントは,ハミルトン107,フェルナンド・アロンソ103,キミ・ライコネン100となり,最終戦では三つ巴のタイトル争いが展開される。三つ巴の最終戦となるのは,1986年のナイジェル・マンセル,アラン・プロスト,ネルソン・ピケ以来21年ぶりのこととなる。このときは,マンセルのタイヤがバーストし,プロストが逆転王者に輝いている。追われる者より追う者の方が精神的に有利な状況にあることは,歴史が証明している。三つ巴のまま最終戦までもつれ込んだことは過去に8回あるが,そのうちリードしていた者がチャンピオンになったのは,僅か3回だけである。

 最終戦の舞台ブラジル・インテルラゴスは,縁石がそれほど高くなく,フェラーリ向きのコースであると言われている。昨年は,フェリペ・マッサがPPから完璧な走りで優勝を飾っているだけに,彼が三つ巴のタイトル争いにどう絡んでくるのかも注目される。マッサは,「最終戦は勝ちに行く」と明言しているが,ライコネンにタイトル獲得の望みがある以上,何らかのサポートをしていく必要はあるだろう。もちろんその場合,マクラーレンの二人を封じることが,マッサに与えられる最大の使命となる。地元でマッサがのような走りを見せるのか。彼がタイトル争いのキーマンとなるかもしれない。

 もう一つの注目は,2年連続チャンピオンのプライドをハミルトン&デニスにズタズタにされ,怒りに震えるアロンソの去就である。もはやアロンソとチームの関係は修復不可能とされており,仮に逆転でタイトルを獲得したとしても,彼が来季もマクラーレンで走るとは考えにくい。アロンソ自身も地元スペインのメディアに「自分の移籍候補は10チーム」と語っており,マクラーレン離脱は決定事項として報道されている。もちろん,マクラーレンと3年契約を結んでいるアロンソの移籍には,莫大な違約金が必要となるため,そうすんなりコトが運ぶとないだろうが・・・。最終戦を前に,混迷を極めるタイトル争いと移籍市場。今季最後ににして最大の戦いが,幕を開けようとしている。

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2007年9月30日 (日)

雨に濡れた富士決戦

 雨は全てを「無」にする可能性を秘めている。そして30年のF1開催となるぶりとなる富士スピードウェイは,昨日に引き続き今日も雨に濡れている。昨日行われた公式予選では,ルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソのマクラーレン勢がフロントロウを獲得。一方,逆転を狙うフェラーリ勢は,セカンドロウから1コーナーを狙う。日本勢はホンダのジェンソン・バトンが今季ベストとなる7番手を獲得したものの,トヨタは14-16番手と,お膝元で速さを発揮することができなかった。SAF1はアンソニー・デビッドソンが19番手,佐藤琢磨はスパイカーの山本左近と並び,最後尾からサバイバルレースを戦う。荒れたレースになることは必至だろう。 

 午後1時30分,決勝レースはセーフティーカー先導でスタートが切られた。2周目,フェラーリ勢が早くもピットインし,タイヤをエクストリーム・ウエットに履き替える。浅溝でギャンブルに出たフェラーリだったが,正に雨に足下をすくわれる格好となった。レーススタートから10周が過ぎても雨脚は弱まらず,逆に視界はますます悪くなっていく。トヨタのヤルノ・トゥルーリはチーム無線で「レースを中断したほうがいい!」と,悲痛な叫びをあげている。どうやら集団の中でスピンを喫し,ポジションを落としていたようだ。フェラーリのフェリペ・マッサもSCを抜いたとして,ビットストップ・ペナルティの指示が出されている。19周目,SCのライトが消えいよいよレースが本格的にスタートした!

 スタート直後の1コーナーで,BMWザウバーのニック・ハイドフェルドとバトンが接触。バトンはフロント・ウイングを破損。この隙をついて,トロ・ロッソのセバスチャン・ベッテルが3番手に浮上する。更に琢磨もフロントウイングを破損し,緊急ピットイン。給油リグから燃料が漏れ,炎を上げながらピットアウトしていく。コースの至る所で接触やスピンが続出するが,ランオフエリアが広いことが幸いし,リタイアすことなくコースに復帰するマシンが多い。フェルナンド・アロンソはピットストップ後にトロ・ロッソと接触し,右サイドポットを破損。そのまま走行を続けるが,100Rでスピンを喫しタイヤバリアの餌食となった。このクラッシュでコースには再びSCが入る。

 SCラン中に,トップハミルトンの背後につけていたレッドブルのマーク・ウェバーに,あろうことかベッテルが接触してしまい両者共にリタイア。レッドブル・グループは,一気に14ポイントを失うこととなった。48周目にレース再開するが,ウィリアムズのニコ・ロズベルグ,SAF1のデビッドソンと次々にレースを終えていく。トップはハミルトン,その後方でルノーのヘイキ・コバライネンとキミ・ライコネンが激しい2位争いを展開する。最終ラップまで続いた両者の争いは,コバライネンに軍配が上がる。一方のマッサは,最終コーナーまでBMWザウバーのロバート・クビサと壮絶な6位争いを繰り広げた。大混乱のレースであったが,雨に濡れた富士決戦を制したのはハミルトン。史上初のルーキー・チャンピオンが現実のものになろうとしている。

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2007年9月29日 (土)

それぞれの想いを胸にして

 日本のモータースポーツファンにとって,年に一度の「最もエキサイティングな週末」がやってきた。2007F1日本GPは,富士スピードウェイを舞台に3日間の戦いの幕が切って落とされた。マクラーレンが「スパイ疑惑」により,今季のコンストラクターズ・ポイントを剥奪されたことで,ファンの注目はドライバーズタイトル争いの一点に注がれている。ポイントリーダーであるマクラーレンのルイス・ハミルトンを,2点差で追う2年連続王者フェルナンド・アロンソ。そして奇跡の大逆転を信じ,ハミルトンを13点差で追うフェラーリのキミ・ライコネン。3人にとって,富士は絶対に負けられない1戦である。

 全長1475mという,世界屈指の超ロングストレートを持つ富士スピードウェイは,「レスダウンフォース・サーキットを得意とするマクラーレンが有利」という見方が大勢を占めていた。事実,カナダ・ジル・ビルニューブ・サーキットやイタリアのモンツァなどでは,マクラーレンの俊足ぶりにフェラーリは為す術なく敗戦を喫している。しかし,富士はロングストレートを持つ反面,コース終盤には低速のテクニカルセクションがあり,両方のバランスを考慮した難しいセッティングが要求される。1日目のフリー走行では,まだ両チーム共に「探り合い」の状況であり,真の速さが見られるのは,レースシミュレーションを行う明日のフリー走行と言うことになるだろう。

 一方,地元開催でこちらも負けられないトヨタとホンダ。フリー走行2回目では,ヤルノ・トゥルーリが4番手,ラルフ・シューマッハも9番手タイムをマークするなど,トヨタは「お膝元」で順調な仕上がりを見せている。それに対し,「敵地」で今ひとつ波に乗れないのがホンダである。ジェンソン・バトンは淡々とセットアップに励んだものの,ルーベンス・バリチェロは空力バランスを欠き,満足なグリップを得ることができず下位に沈んだ。「朝からアンダートレーまでを含めて何から何まで交換してみたけれど,原因が特定できない」と,中本修平/シニア・テクニカル・ディレクターも頭を抱えている。不確定要素がないかぎり,ホンダの上位進出は難しいのかもしれない。

 最後に2年目の日本GPを迎えたSAF1について。ここ数ヶ月は資金難や買収報道に揺れたチームであったが,日本GPを迎えるに当たり「FOUR LEAF」「Pioneer」など,数社のスポットスポンサーを獲得している。これで今季を乗り切るだけの資金的なメドは立ったが,ライバル達の進歩も著しく,SAF1の戦力が相対的に低下してきている状況に変わりはない。佐藤琢磨は1回目のフリー走行でギアボックストラブルが発生し,予定していたプログラムをキャンセルせざるを得ず,地元で苦しいスタートを切っている。明日以降の巻き返しに期待しよう。ドライバー,チーム,スポンサー,そして世界中のF1ファン・・・。それぞれが様々な想いを胸にして,富士決戦がいよいよ始まった!

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2007年9月10日 (月)

「華麗なるレース」を求めて

 台風一過の土曜日,私にとっては年に一度の楽しみである,「GOSPEL NIGHT」という音楽イベントに参加した。場所は東京国際フォーラム ホールA。観客収容人数5000名を数える,日本が誇る巨大音楽ホールのひとつである。そのステージで今回は何と,250名のバックコーラスを従えソロを歌う機会を得た。楽曲はQUEENのブライアン・メイが手がけた「手をとりあって~Let Us Cling Together~」。たった1曲,僅か数分間のステージではあったが,自分の声が巨大ホール中に響き渡る臨場感は正に圧巻。歌い上げた後の感じは,北島康介と同じく「チョー気持ちいい!!」。ちなみにこの楽曲が収録されているQUEENのアルバムタイトルは「華麗なるレース」。こちらも何ともいい感じの響きである。

 昨晩はそんな余韻に浸りながら,イタリアGPを見ようとフジテレビにチャンネルを合わせた。すると,冒頭からトヨタのマシンと共に某アイドルグループの木村くんが現れ,何やら知ったような口ぶりで語っている。初の富士開催に向け,トヨタを前面に押し出したいのは分かるが,どうもあからさま感が否めない。フェラーリをバックにクールに始まったアバンタイトルのBGMも,今回はQUEENの「I WAS BORN TO LOVE YOU」。そこまで木村くん繋がりにしなくてもいいだろうに。肝心のレースでも,トヨタの2台はオープニングラップで順位を落とし,今回も結果を残すことができなかった。トヨタが「華麗なるレース」を見せるためには,まだまだクリアすべき課題が多いようだ。

 さて,先週末のイタリアGPで,一枚の注目すべきリリースがFOMから出された。日本GPが2009年より,鈴鹿サーキットと富士スピードウェイとの隔年開催となることを伝えるものである。これにより,昨年20年に渡るF1開催の歴史に一度ピリオドを打った鈴鹿が,再びF1のカレンダーに復活することが決まった。富士での開催に疑問符を投げかける関係者も多かっただけに,この決定はファンならずとも大いに喜ぶべきものであろう。このニュースを聞いた佐藤琢磨も「隔年開催になれば,ファンにとっても興味深い二つの日本GPになると思うし,両方とも成功させたい」と喜びを語っている。

 現在,F1が同一国で隔年開催されているのは,ドイツGPのニュルブルクリンクとホッケンハイム。バーニー・エクレストンFOM会長の目指す「1国1GP」の趣旨からすれば,今回の富士・鈴鹿隔年開催も,以前から噂されていた開催形態である。「東の富士,西の鈴鹿」という,日本が世界に誇る二つのサーキットでF1が開催されるとなれば,興行的にも長期にわたって安定した収入が期待できる。今回の契約で一体どれくらいのお金が動いたのか,我々は知る由もないが,細かい詮索は無しにしよう。数年後からは東と西で交互に,「華麗なるレース」を見ることができるのだから。

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2007年8月 6日 (月)

表彰台を見つめる思い

 月日の経つのは本当に早い。昨年のハンガリーGPは,タイトルを争っていたフェルナンド・アロンソとミハエル・シューマッハに,相次いでペナルティが科せられたが,あれから早1年が過ぎようとしている。そして今年のハンガリーGPもまた,昨年同様「ペナルティ合戦」の様相を呈してきている。昨日行われた公式予選で,アロンソが起こした「停車事件」。ハンガリーGPのスチュワードは,アロンソにグリッド5番手降格の処分,更にマクラーレンに対しては,コンストラクターズ・ポイントを与えないという処分を下している。アロンソにとっては,2年連続となるペナルティとなった。彼が初優勝を飾ったのは2003年のハンガリーGPなのだが,どうもここ数年はあまり相性が良くない。

 ちょうど1年前も「一貫性のない判定」で述べたが,1年経っても相変わらずスチュワードの判定は一貫性がない。ルノーのジャンカルロ・フィジケラは,このレースからF1復帰を果たしたスパイカーの山本左近の予選アタックを不用意に妨害したとして,アロンソと同じくグリッド5番手降格のペナルティを科せられた。しかし,アロンソとフィジケラとでは,違反を犯した状況がまるで異なる。にもかかわらず,両者は同じペナルティを受けている。ちなみに昨年,アロンソとミハエルに与えられたペナルティは,「1度の違反に対し,予選タイムに1秒加算」というもの。どうも腑に落ちないことが多い。

 さて,こんな予期せぬ出来事の多いGPは,レースも荒れるものであるが,序盤は大きな波乱もなく淡々と周回が続く。SAF1の佐藤琢磨は,得意のスタートでポジションを上げ,フェラーリのフェリペ・マッサを抑え15番手を走行。マッサは予選で,燃料の入れ忘れというフェラーリらしからぬミスのため14番手に沈んだが,レースではマッサ自身のペースが上がらない。どうやら今度は,相当燃料を搭載しているようだ。一方スパイカーの左近は,単独スピンで早々にリタイアを喫している。レース中盤,この日2台目のリタイヤは,ホンダのジェンソン・バトン。スタートで後方に埋もれ,次に映し出されたのはリタイアの映像。これが昨年のウィナーの姿だと思うと何とも悲しい。

 レース終盤,トップのハミルトンは2番手ライコネンと,3番手BMWザウバーのニック・ハイドフェルドはアロンソと,それぞれ1秒以内で激しい攻防を繰り広げる。しかし,追い抜きの難しいハンガロリンクでは,距離を詰めてもオーバーテイクまでは至らず,結局このままの順位でチェッカーを受けた。レース後の表彰台では,ハミルトンが満面の笑みでトロフィーを受け取る一方,本来チームトロフィーを受け取るマクラーレン関係者の姿はなかった。この表彰台を,ロン・デニス代表はどんな思いで見つめているのだろう。ハミルトンの勝利が素直に受け入れられない,何とも複雑な表彰台であった。

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