崇高なる跳ね馬の行方
世の中に崇高なものは数限りなくあるが,レースの世界となると,それぞれの価値観によって崇高さは異なってくる。しかし「フェラーリ」という名は,世界中どの国に行っても,ある種独特の響きと世界観を感じさせてくれるものだろう。以前,旅行でイタリアを訪れた際,ミラノのとあるレストランで食事をしたことがある。F1ドライバーも訪れるというそのレストランの壁面には,歴代フェラーリF1の写真が数多くディスプレイされていた。そして,私が座った席の真横には,「カヴァッリーノ・ランパンテ」のエンブレムが,誇らしげに飾られていた。フェラーリ信者でもない私でも,思わず手を合わせてしまいたくなるような,そんな崇高さを感じた思い出がある。
さて,キミ・ライコネンによる大逆転劇で幕を閉じた2007年シーズンだが,チャンピオンチームとなったフェラーリの来季体制は,まだ不透明な点が多い。一時はマクラーレンのフェルナンド・アロンソが移籍することも噂されたが,少なくとも2008年に関しては,ライコネン&マッサのラインアップに変更はなさそうである。スペインで行なわれたアストゥリアス皇太子賞の授与式に参加しミハエル・シューマッハも,「フェルナンドのファンをがっかりさせたくはないけど,今のところフェラーリのシートは埋まっている。マッサとライコネンは長期契約をしているから,現時点ではどうしようもない。僕たちは2人のドライバーに満足しているからね」と,アロンソのフェラーリ入りを否定している。
そうなると問題は,誰が代表の座に就くかという点であろう。フェラーリの総帥であるルカ・ディ・モンテゼモロ/フィアット会長は,来季の体制はクリスマス前までには発表することを明らかにしたが,これが一筋縄ではいきそうにない。一時はジャン・トッド代表がダブル・タイトルを花道に一線を退き,代わって現在長期休暇中のロス・ブラウン/元テクニカル・ディレクターが代表の座に就くと目されていた。しかし,フェリペ・マッサが,2010年まで契約を延長したことで,情勢は微妙に変化している。そしてそこには,ミハエル,バーンを従えるモンテゼモロ会長と,息子でありマッサのマネージャーでもあるニコラスを擁するトッド代表との権力抗争が見え隠れする。
元来トッド代表は,モンテゼモロ会長自身がスポーティング・ディレクターに任命した人物である。就任当初は中々結果の出なかったトッド体制であったが,ミハエル&バーンを獲得し,1999年から実に6年連続コンストラクターズ・タイトル獲得という黄金期を築き上げた。しかし,そのシューマッハが引退した現在,二人の関係は微妙に変化してきている。今後もフェラーリF1に影響力を残したいモンテゼモロ会長と,現在の立場を維持しつつ,いずれ息子のニコラス・トッド氏をフェラーリの代表に就かせたいトッド代表。「シューマッハ以降」の崇高なる跳ね馬は,その行方を決めかねている。
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