2007年12月 2日 (日)

HONDAに纏わるエトセトラ

 26歳という若さでこの世を去った童謡詩人,金子みすゞの代表作「私と小鳥と鈴と」に「鈴と,小鳥と,それから私 みんな違ってみんないい」という部分がある。このフレーズは,個性重視の現代社会を象徴する言葉としてよく耳にするが,多少解釈が曲げられている気がしてならない。本来「みんな違ってみんないい」とは,何でもかんでも許されると言う意味ではない。集団の中で「個性」が生きてこそ,初めて「みんな違ってみんないい」なのだ。今季のマクラーレンを例に挙げるまでもなく,いくら優秀な人物が集まろうとも,各が好き勝手をやっていたのでは良い結果が得られるはずもない。

 では,個性的な人物が不必要なのかというと,決してそう言うわけではない。組織によっては,強力な個性を求めているところもあるだろう。そのひとつであり,今季大不振に陥ったホンダは,元フェラーリのテクニカル・ディレクターであったロス・ブラウン氏を,チーム代表として迎え入れている。和田康裕チェアマンによると,ブラウン代表の担当する領域は「モノづくりも含めて,マシン開発,レース運営全て」とのことであり,いわゆるテクニカル・ディレクターの仕事を含むチーム代表と言うことになる。長らく不在だった技術部門を束ねる人物が誕生したことで,マシン開発はもちろん,ホンダの苦手分野であった戦略面でも,ブラウン代表の手腕が発揮されることになるだろう。

 そしてもう一人,ホンダ加入の噂が上がっているのが,マクラーレンを僅か1年で飛び出したフェルナンド・アロンソである。もっともこれは,ルノーやレッドブルとの交渉を有利に進めるため,アロンソサイドがリークした情報との見方が強い。複数年契約を持ちかけているルノーやレッドブルに対し,1年契約を希望するアロンソ側と話し合いが平行線をたどっているが,自身の選択肢を増やすためにも,1年契約はアロンソにとって譲れない「絶対条件」だろう。当初ホンダは,アロンソ騒動とは無関係と思われていたが,ルーベンス・バリチェロがロスブラウンと共にSAF1のファクトリーを訪れたという報道もあり,ここにきて動きが慌ただしくなってきている。

 そして気になるのが,もう一つの「HONDA」ブランド,SAF1である。今週のへレステストには,まだ来季の去就を明らかにしていない佐藤琢磨が,テストドライバーのジェームス・ロシターと共に参加する見通しである。使用するマシンは前回のバルセロナテストと同じく,SA07-5Bと呼ばれるRA107であると考えられる。カスタマーシャシー問題が未解決のため,来季体制も不確定なSAF1だが,少なくともSA07を来季も使い続けることはないだろう。最も可能性が高いのが,RA107を栃木研究所のバックアップの元,改修して使用するパターン。果たしてそれが琢磨の言う「納得できるパッケージ」なのかは不明だが・・・。HONDAに纏わるエトセトラは,まだまだ続きそうだ。

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2007年6月23日 (土)

真夏はホンダの正念場

 「病は気から」という言葉が示すように,人間の心理状態は,時として体にも変調を来す。気力が充実していれば,多少困難な状態でも自らを奮い立たせ乗り切ることができるだろうが,それが低下しているときは,同じ事をするにも膨大なエネルギーが必要になる。今シーズン,チームの大黒柱として獅子奮迅の活躍を見せるSAF1の佐藤琢磨は,気力体力共に充実していると言っていいだろう。その一方で,走らないマシンに嫌気がさし,モチベーションの低下が見られるのが,ホンダのプリンス,ジェンソン・バトンである。先週行われたアメリカGPの走りは,トラブルを抱えていたということを差し引いても,明らかに集中力を欠いたものであった。

 そのひとつが,2周目のバトンの行動である。琢磨の言葉を借りれば,「彼はおそらく最初気づかずに行動を始めたんだけど,僕に並んだ頃にイエローに気づき,そしてポジションを元に戻した」というものである。もしそれが本当であれば,ペナルティを受けるべきなのは琢磨ではなくバトンの方である。しかし,実際に黄旗追い越しのペナルティを課せられたのは琢磨であった。更に琢磨は,ペナルティストップ前にリタイアしたことにより,フランスGPでの10番グリッド降格が決定している。一度出てしまったFIAの決定が覆ることはまずない。後方からのスタートを余儀なくされるが,ここは琢磨にアデレードヘアピンでのオーバーテイクショーを期待したい。

 さて,そのSAF1は,スペイン・へレスでホンダとの合同テストを実施した。主としてヨーロッパラウンドから投入するエアロダイナミクスやサスペンションのテスト,更にフランスGPを見据えたセットアップに精を出したようである。一方のホンダは,シーズン中としては異例の,報道陣完全シャットアウトの極秘テストとなった。チームの地元イギリスを離れわざわざスペインでテストを行ったのは,見られたくない秘密があるからに他ならない。これは,ホンダの中本修平/シニア・テクニカルディレクターも認めていることであり,今回のテストをいかにチームが重要視しているかが伺える。

 ホンダがスペインで極秘テストをしたのは,開幕から不振にあえいでいるRA107を大幅に改良したRA107"B"であると言われている。既にモナコGPでマシンに大きな変更を施したことに加え,北米2連戦にはルーフの形状が以前のものとは異なるモノコックを投入するなど,その開発ペースはトップクラスである。残念ながらトラブルやアクシデントにより,結果にこそ結びついてはいないが,開幕直後の低迷を抜け出しつつあることは明らかである。それだけにRA107Bの投入が吉と出ればいいが,逆にこれでもパフォーマンスの改善が見られない場合,チーム体制に再びメスが入れられる可能性もある。ホンダにとってここ数戦が,真夏の正念場となりそうだ。

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2007年4月11日 (水)

ホンダに忍び寄る陰

 新しい環境におかれていると,時間の経つのが異様に早い。その環境に慣れていないせいもあるのだが,ただ単純に「やるべき仕事が増えた」ということもある。こうなってくると,さすがに毎日のようにエントリーを書くことはできないが,こればっかりは誰に急かされるわけでもないのだから,ゆっくりのんびり,気のむくままに書いていこうと思う。さて,マクラーレンの1-2フィッシュで幕を閉じたマレーシアGPから3日。ここ数日は,日本人F1ファンにとって,非常に気になるニュースが世界を駆けめぐった。今季2戦を終え,最悪のスタートを切ってしまったホンダについてである。

 ホンダのニック・フライ代表は,現在イギリスと日本とが共同して行っているマシン開発を,イギリス主導で行えるよう,チームの組織改革を考えているようだ。両国間にある分裂が,マシン開発の妨げとなっていると考えるフライ代表は,この状況を打破するために,チームを再編成を目論んでいる。同時にフライ代表は,長年フェラーリでテクニカル・ディレクターを努め,現在は「長期休暇中」であるロス・ブラウン氏をホンダに迎え入れようと,水面下で動き出していると伝えられている。これに対しフェラーリ側は,「彼が将来の計画を決める前に,まず我々と話すという紳士協定がある」と述べ,優先交渉権はフェラーリが有していることを主張している。

 開幕戦オーストラリアGPに続き,マレーシアGPでもポイント獲得はおろか,トップ10フィニッシュさえできなかったホンダ。まだ今季は始まったばかりではあるのだが,ワークスチームで唯一のノーポイントという現実は,彼らがおかれている状況の厳しさを物語っている。昨年型RA106をドラスティックに進化させたRA107は,ブレーキング時の挙動に問題を抱えていたが,ピーキーな性格は依然として解消されていない。その為,一発の速さもロングランのベースも,中段以降に低迷してしまっている。もっとも,序盤戦で苦戦するであろう事は,開幕前から十分予想できたことではあるが,よもやこれほど深刻な事になるとは,思ってもみなかったことである。

 ホンダは第6戦カナダGPを目処に,空力を中心としたマシンの大幅なバージョンアップを予定している。一部では「現行のRA107を完全に廃し,全くのニューマシンを投入する」という話もあるが,時間的に考えてもRA107をベースに,各部をモディファイしたものになるだろう。また,これに合わせ責任者の入れ替えも検討されているとも言われており,中本修平/シニア・テクニカル・ディレクターの状況も気になる。しかし,これらは全て,フライ代表の独断で行われていることであり,それを日本のホンダサイドが易々と見逃すわけがない。ホンダに今年も,「内戦」の陰が忍び寄ってきた。

参照リンク:FMotersports F1  F1通信

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2007年3月 9日 (金)

チャンスを生かすのも実力

 年度末は人事異動の盛んな時期である。3月下旬になると新聞各紙には,官庁や公務員の異動者名が掲載され,新規採用者を迎える4月までに,新体制を整えておく必要がある。しかし同時に,「どうしてこの人が,このポジションに?」と,疑問を抱かざるを得ない人事異動が行われる。どの世界にも実力以外の要素によって,ポジションを勝ち取る人間はいる。それはF1に於いても同じ事。むしろF1では,実力プラスαの要素によってシートを得るドライバーの方が多いのかもしれない。しかし,きっかけは何であれ,そのチャンスを生かすことができるかが,本当の実力ではないだろうか。

 さて,昨日興味深い新人の起用が,ホンダから発表された。ホンダは昨年のイギリスF3チャンピオンであるマイク・コンウェイとテストドライバー契約を結んだことを明らかにしている。コンウェイは昨シーズン,イギリスF3にライコネン・ロバートソン・レーシングから参戦。シーズン10勝を挙げ,見事タイトルを獲得している。さらに11月に行われた「F3統一戦」マカオGPでは,ユーロF3王者のポール・ディ・レスタや,同シリーズ2位で,カーリンから出走したセバスチャン・ベッテルなど,並み居る強豪を抑え優勝を果たしたしている。荒れた展開のレースであったが,下馬評では不利と言われていたイギリスF3勢の中で唯一気を吐き勝利を得たことは,彼の実力を証明しているだろう。

 B.A.R.時代からホンダは,アンソニー・デビッドソンやジェームス・ロシターなど,イギリスF3上がりの若手ドライバーを起用することが多い。今回のコンウェイ起用には,彼をマネージメントしている「2MB」からの,強い売り込みがあったようである。2MBは,元F1ドライバーであるマーティン・ブランドルとマーク・ブランデルの会社であり,イギリスの若手ドライバーを積極的にバックアップしていることで知られている。ホンダは既にロシターに加え,昨年末に元レッドブルのクリスチャン・クリエンともテストドライバー契約を交わしており,コンウェイが早急に必要なわけではない。実際彼がRA107をドライブするのは,シーズン後半になってからだという。

 ではなぜこの時期に,テストドライバー契約を結ぶ必要があったのだろうか。言うまでもなくF1では,ドライバーの低年齢化が加速しており,レギュラードライバーでさえ20代前半というのは珍しくも何ともない。ましてやテストドライバーともなれば,更に低年齢となる。昨年のトルコGPでBMWザウバーのサードドライバーに抜擢されたベッテルは,当時弱冠19歳であった。金の卵はどこに潜んでいるわからないのだから,なるべく早い段階で優秀な人材を確保しておきたいと思うのは当然のことである。個人的には,日本の若手ドライバーにもチャンスを与えてほしいが,まだ少々実力不足かなぁ。

参照リンク:FMotersports.nifty F1通信

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2007年3月 8日 (木)

ヒル先輩からの忠告

 「結婚は人生最大の賭」という言葉を聞いたことがある。確かに結婚は,多くの場合人生に於いて,ターニングポイントとなる出来事である。しかし,全ての結婚がお互いを幸せにするとは限らない。時にはその賭に,失敗してしまうこともあるだろう。F1ドライバーにとっても,どのチームで走るのかは,結婚と同じような要素があるのかもしれない。F1ドライバーなら誰しもチャンピオンを目指して戦うのは当然のことであるが,いくら自分自身にその能力があろうとも,F1はドライバーの能力だけで勝てるカテゴリーではない。チャンピオンになるためには,勝てるマシンを手に入れなければならないのだ。そのためには時として,冷酷な決断を下すことも必要とされる。

 ホンダのジェンソン・バトンが昨年のハンガリーGPで,113戦目のF1初優勝を飾ったことは記憶に新しい。バトンは今季も,ホンダRA107を駆り,チャンピオンを目指して戦うことになる。しかし,元ワールドチャンピオンであるデイモン・ヒル氏は,「バトンがF1のトップを目指したいのであればホンダを離れるべき」と考えているようだ。ヒル氏は「ホンダには何かが欠けている。ホンダがチャンピオンシップで優勝するようなチームにはならないと思う」とした上で,「どうやって常にトップを走るF1マシンを手に入れるか真剣に考えた方がいい」と,母国の後輩ドライバーに忠告している。

 「ジェンソンはホンダに全てを賭けてしまった」と嘆くヒル氏だが,当のバトン本人は現状を楽観視しているように見える。だからこそヒル氏は,バトンの将来が不安なのだろう。過去にチャンピオンとなったドライバー,例えばアイルトン・セナやミハエル・シューマッハからは,勝利に対する強烈な執着心が感じられた。しかし,バトンからはその執着心があまり感じられないのだ。それは「バトンにはもう少し悲壮感がほしい」と,ホンダ首脳陣も認めていることである。また,非常にスムーズでミスも少ない代わりに,強烈な速さを印象づけることはない彼のドライビング・スタイルも,「バトンの走りには華がない」というイメージに繋がってしまっている。

 ヒル氏がバトンの行く末を案じる理由に,マクラーレンからデビューする大型新人,ルイス・ハミルトンの存在がある。ヒル氏がデビューイヤーに3勝を挙げたように,ハミルトンが今季中に勝利を挙げると,F1ファンの注目は完全にバトンから離れることになる。イギリス期待の新人として,20歳でデビューしたバトンも,今年でもう27歳。「時間はどんどん経っていく。グランプリ・ドライバーには旬の時期がある」という言葉は,ヒル氏自信が32歳という非常に遅咲きのF1デビューであっただけに説得力がある。しかしながらヒル先輩からの忠告,超楽観主義者のジェンソン君に,果たして届くかどうか。

参照リンク:F1通信

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2007年2月27日 (火)

世界最速の「地球」

 グーグル・アースの画像を見ていると,改めて地球の緑が少なくなっていることを感じる。そこに映し出されているのは,青い海と緑の大地に覆われた星ではなく,至る所で砂漠化が進み,赤茶けた大地が点在する星である。1997年に地球温暖化防止京都会議が開催され,二酸化炭素削減に向け各国の目標を数値化した「京都議定書」が結ばれてからも,CO2は減るどころかますます増え続けている。大量の化石燃料を消費し,排気ガスを撒き散らしながらサーキットを走り回るマシンなど,環境保護とは対極に位置する存在として見られてしまう。F1が時代にそぐわない恐竜となるのも,時間の問題であった。

 しかし,環境をテーマにしたホンダの新コンセプトは,このイメージを払拭するきっかけになるかもしれない。スポンサーロゴの露出を廃し,地球をイメージした新しいマシンカラーリング。パートナー企業に対する,マシン&ロゴ使用のライセンス化とマーケティングツールとしての活用。ウェブサイト上で,マシンのピクセルを購入することにより参加できる,環境チャリティー。サイモン・フラー氏の19エンターテイメント社が提案したこれらのビジネスモデルは,どれも今までにない斬新なマーケティング戦略であり,全世界で注目されているF1だからこそできる,環境問題への新たな取り組みである。

 最も注目されたのは,マシンのカラーリングであった。当初は,マシンのカラーリングが環境をテーマにグリーンになると聞いても,何らかの企業イメージは残るものと考えていた。しかし,発表されたマシンには,青い海と緑の大地が描かれているのみであった。このコンセプトに賛同し,新たにホンダと契約した企業はまだしも,F1マシン=スポンサー・ロゴという固定観念がある既存のスポンサーに理解を求めることは,なかなか難しかったと思われる。ホンダのニック・フライ代表も「ほとんどの人の反応は,最初はショックそのものだった」と話している。しかし,最終的には昨年のスポンサー31社のほどんどが,この先進的な手法に協力してくれたという。

 ホンダが「環境の大切さ」という至極当たり前の,それでいてなかなか実現の難しいストーリーを伝えるために,F1というツールを選ぶことは,ごく自然な発想と言える。「燃費性能こそ環境性能」というコピーが示すように,ホンダは長らく環境問題に積極的に取り組んできた。更に,タバコという人体にも環境にも,決して無害とは言えないブランドがチーム去ったことも,このコンセプトを推し進めるきっかけとなったのだろう。環境問題に取り組むことにより,今までF1に関心を寄せていなかった企業から,新たなパートナーシップを得ることもできる。青い海と緑の大地を身に纏った,世界最速の「地球」キャンペーン・マシンは,間もなくサーキットを走り出す。

参照リンク:FMotresports.nifty F1通信

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2007年2月21日 (水)

SA07の独自性と類似性

 本当に強い者は,自分の弱点を知っている。それが自分自身で分からなければ,人が向上することはない。弱点を見つけ,自分自身を強くしようと努力するからこそ,人は成長できるのである。少し前の話になるが,先日都内で2007年のホンダ・レーシング体制発表記者会見が行われた。この中でホンダの中本修平/シニア・テクニカル・ディレクターは,オフシーズンテストでタイムの伸びない新型車RA107について,「テストタイムが速くないように,正直余りいい状態ではない」と,厳しい現状を素直に語っている。しかし,弱点が分かっているからこそ,対策も立てやすい。ホンダイズムが浸透しつつあるブラックレーでは,開幕に向け急ピッチで作業が進められているようだ。

 さて,もう一つ気になるのが,デビューが待たれるSAF1の新型車SA07である。体制発表会の中で,SAF1の鈴木亜久里代表は「見てもらえば分かる。ボクらはボクらのクルマを作っている」と力強く発言し,SA07がライバルチームから指摘されているような,カスタマー・シャシーではないことを強調している。また,ホンダのニック・フライ代表はSPEEDtv.comに対し,「彼らのマシンはホンダの昨年のマシンと違っている」としながらも,SAF1にはホンダ出身のスタッフも多いため,両チームのマシンに,いくつかの類似性があることは仕方がないことも認めている。

 一般的にSA07は,ホンダの昨年型マシン,RA106の発展系と考えられている。これは,オフシーズンテストでSAF1が走らせてきたインテリムカーが,RA106そっくりであることから予想されていることである。先週トロ・ロッソが,レッドブルRB3と瓜二つのSTR2をデビューさせたことから,「SAF1もRA107そっくりのマシンを投入するのではないか」とも噂されている。しかし,亜久里代表は以前AUTO SPORT誌の取材に対し,SA07を「去年のウチのマシン(SA06)に似ているよ」と語っており,少なくとも外観はRA106とは異なる,SAF1独自のマシンが投入されるようである。

 では,SA07はどの程度「独自性」のあるマシンなのだろうか。各チームともシーズンオフ最大の目的は,ブリヂストンタイヤに最も適した,サスペンション・セッティングを探ることだった。だからこそ,SAF1も旧型車ではなくインテリムカーで,データを取り続けていたのである。そしてこのデータは,ホンダにも提供されていることから,SA07のサスペンションも,RA107と同仕様であると予想される。従ってモノコックも,インテリムカーとほぼ同一であると考えられるのである。そして,ポール・ホワイト氏の率いるPJUUがボディーワークを担当したことで,外観上はRA106とは異なるマシンとなるのだろう。SAF1の独自性とホンダとの類似性。さてさて,どんなマシンが出てくるやら・・・。

参照リンク:F1通信 AUTO SPORT WEB

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2007年1月26日 (金)

発進!真のオールホンダ

 欧米人から見ると,独特の文化を持つ日本人の考え方は,なかなか理解できないものらしい。国際的なスポーツであるF1にも,今でこそ多くの日本人が関わっているが,40年以上も前,ヨーロッパ主体で行われているこのスポーツに,日本人が挑むことは並大抵のことではなかっただろう。ホンダの第1期F1参戦は,技術的な部分だけではなく,精神的な部分での苦労も耐えなかったと言われている。自動車後進国の日本生まれのF1マシンなどとうてい勝てる代物ではないと,最初は誰もが鼻で笑っていたのだろう。それ故ホンダのメキシコGP初優勝は,驚きを持って世界に伝えられた。そして昨日,RA301以来実に39年ぶりのオールホンダマシンとなる,RA107が誕生した。

 かねてからの情報通り,今回の発表は技術的な部分だけであり,発表はスペイン・バルセロナでの記者会見のみと,非常にシンプルなものとなった。マクラーレンが総額15億円とも言われる大発表会を行ったのとは対照的である。もっともカラーリングを含めた正式発表は2月中旬に予定されているので,そちらは大々的なものになるかもしれないが。さて,記者会見と前後して,チームは同サーキットで新型車を走行させている。オフシーズン定番のブラック・カラーのままのRA107は,ルーベンス・バリチェロの手により約40周を走行。その後ジェンソン・バトンの手に託されたものの,ギア・ボックスのセンサートラブルに見舞われ,この走行は1周もできずに終了している。

 さて,RA107は漆黒のカラーリングのため,マシン各部の詳細は不明だが,フロントノーズが細くなり,サイドポットも低く細く絞り込まれたことで,RA106より全体的にシャープになった印象を受ける。そのRA106でホンダが火をつけ,他チームがこぞって導入したカーリーフィンはさらに大型化され,ホンダのオリジナリティを保っている。昨年既に19000回転を突破し,2万回転に迫る勢いだったエンジンは,ホンダご自慢のシームレスシフトと合わせ抜群の性能を誇っている。唯一の不安はタイヤとのマッチングたが,これもSAF1とのデータ共有を進めており,大きな問題はないだろう。

 ニック・フライ代表は「英国と日本にあるホンダ施設間の素晴らしい協力の成果を発表できて誇りに思う」とコメント。同時に「RA107は二国のチーム,世界をまたにかけた絶え間ないコミュニケーション,強力なチームワーク,素晴らしいチーム・スピリットの賜物である」と語り,日英の協力体制の結晶が新型車であることをアピールした。また,体制変更がほとんどない点にもふれ,チームの安定性が成績向上につながることを主張している。チームワークと勤勉さを兼ね備えたチームが,どれほどの成績を残せるのか。真のオールホンダがいよいよ発進した。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月13日 (水)

ホンダが挑む環境性能

 人間が視覚に頼る割合は多い。そのため不特定多数の人に存在をアピールするためには,視覚に訴えることが最も効果的である。人であれ物であれ,最初の判断材料は外見でしかないからだ。それ故,人は自分を少しでも美しく見せようと着飾る。第一印象は非常に重要な要素であるから,これを怠るとその魅力は半減してしまう。全世界で何十億人もの人々が注目するF1もまた同じである。言うまでもなくF1チームは,スポンサーの資金によって運営されており,巨大なキャンバスであるF1マシンのボディーは,スポンサーにとって絶好のアピールスペースとなっている。その外見をどれだけ印象的にするかは,大きなマーケティング戦略であった。

 しかし,来季のホンダはこのスペースを,スポンサーとは別の目的で使用するようだ。ニック・フライ代表は,「マシンはホンダのロゴで覆われるのではない。もっと違ったものになる」と,来シーズンのカラーリングが大幅に変更されることを示唆している。当初ホンダは,タバコ広告規制に伴い今シーズン限りでスポンサーを撤退したラッキー・ストライクに変わる,新たなタイトルスポンサーを探していた。しかし,マクラーレンのスポンサーであったエミレーツ航空と交渉を行ったものの,スポンサー額の折り合いがつかず,結局この話は破談になっている。従って来季のホンダに,タイトルスポンサーは存在しない。このことが新たなマーケティング戦略を始めるきっかけとなった。

 フライ代表の言う「新たなマーケティング戦略」とは,一体どのようなものなのだろうか。一説によれば,それは環境に視点を置いたものであるという。ホンダは自動車メーカーとして,早くから環境問題に取り組んできた企業である。1972年に誕生したCVCCエンジン搭載の初代シビックは,当時最も厳しいとされていた排出ガス規制であったアメリカのマスキー法をクリアーし,全世界の自動車メーカーから注目を集めた。以降今日に至るまでホンダは環境性能を重視してきた。折しもFIAから今後5年間の方向性が示され,今後はよりいっそう環境問題に対する取り組みが重要視される。

 来季のホンダにスポンサースペースはなく,そのスペースを利用してホンダの企業理念を伝えることになる。これは自社のアイデンティティーをアピールする,絶好の機会である。しかし本音を言えば,スポンサーも獲得したかっただろう。いくらホンダが「F1は走る実験室」としてレースをするために自動車を作っており,その運営資金がマーケティング費用ではなく自社の研究開発費から捻出されていてもである。年間数百億が消費される現代F1に於いて,資金はいくらあっても足りることはないだろう。注目の新カラーリング発表は3月の開幕戦直前。来年の楽しみがまたひとつ増えた。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年9月19日 (火)

裏方達の就職活動

 優秀なハードを開発するには,「裏方」による努力が欠かせない。来シーズンのドライバーラインナップが続々と決まる中,F1チームの裏方であるテストドライバーの就職活動も忙しくなってきた。チームにとっても,優秀なテストドライバーの確保は重要な問題であり,金の卵を発掘する眼力が求められる。ヘイキ・コバライネンのレギュラー昇格が決まっているルノーは,現トヨタのテストドライバーであるリカルド・ゾンタと,今シーズンGP2ランキング2位のネルソン・ピケJrを就任を発表した。フェラーリ&マクラーレンは,今シーズンと大きく変動することはないと思われるが,中堅以降のチームのラインナップはこれから本格化することになる。

 まず注目されるのはトヨタである。昨日,長年裏方としてチームを支えていた,オリビエ・パニスの引退が発表された。ゾンタもチームを離れるので,トヨタのテストドライバーは現在空席の状態にある。そこに名前が浮上しているのが,現SAF1のサードドライバーを務めるフランク・モンタニーがである。テスト経験豊富なモンタニーの加入は,トヨタとしても歓迎するものであろう。TDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)の一員で,現在ユーロF3を戦っている,平手晃平,中島一貴,小林可夢偉の日本人トリオも,来シーズン中に一度はテストドライブのチャンスを与えてもらいたいものである。

 ホンダは依然として見えてこない。現在第3ドライバーを務めているアンソニー・デビッドソンは,来シーズンSAF1への加入が以前から噂されている。ニック・フライ代表も,「アンソニーにはSAF1でドライブしてほしい」と,移籍に前向きな発言をしており,実現の可能性は高い。そうなるとジェームス・ロシターが後任候補となるだろうが,トップチームのドライバーと比較すると若干見劣りする。トヨタもそうだが,ホンダもF3やGP2を戦う有望株を積極的に起用し,育成しようとは考えないのだろうか。デビッドソンに6年間もテストドラーバーを任せっきりにし,次世代のドライバーを育成しなかったツケを払わされるときが来るかもしれない。

 そう考えると,先見の明を持ってテストドライバーを起用しているのは,旧ザウバー時代から新人発掘に秀でているBMWザウバーであろう。今季はロバート・クビサという超新星を発掘したが,その後任がまたも驚異的な能力を発揮しているセバスチャン・ベッテルである。ミッドランド~スパイカーも,積極的に若手を起用している。今シーズンも3人の第3ドライバーを起用したが,印象的な走りを披露していたエイドリアン・スティールを日本GPで再起用。さらに中国GPではGP2ランキング3位のアレクサンドレ・プレマを,最終戦ブラジルGPでは,同6位ののアーネスト・ビソを,第3ドライバーとして起用することを予定している。SAF1もこれに続いてほしいが,まずは生き残ることが先決かなぁ。

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