科学では予想できないもの
久しぶりに映画館に足を運んだ。鑑賞した映画は,ヒュー・ジャックマン,クリスチャン・ベール主演の「プレステージ」。19世紀末のロンドンを舞台にした「マジック」映画かと思ったら,途中から「科学」が結びつき,何とも意外な結末を向かえる。肝心の作品評価は・・・人それぞれであろう。さて,その科学をもってしても,予測不可能な事態は避けられない。カナダGPでBMWザウバーのロバート・クビサが壮絶なクラッシュから奇跡の生還を果たしたことは,現代F1マシンの安全性が確認された出来事だった。しかし,その「鉄人」クビサも,今週末のアメリカGPに出場することはできなかった。
科学でマシンへのダメージを測定することはできても,人間へのダメージを正確に測定することは難しい。クビサはクラッシュ時,一時的に脳震盪を起こしており,これをFIAのドクター陣は重く見たようだ。前にドイツ人医師のベルント・カベルカ博士は,「インディアナポリスで再び脳震盪を起こせば,死の危険がある」と語り,短期間に同じようなクラッシュを起こした場合,命の保証はないとコメントしている。ましてやアメリカGPの舞台は,F1屈指のハイスピード・サーキットであるインディアナポリス。リスクを最小限に抑えるためには,適切な判断であったと考える。
そのクビサに代わって,急遽BMWザウバーのカー№10をドライブするのは,弱冠19歳のセバスチャン・ベッテル。同チームのサードドライバーとして,昨年のトルコGP金曜フリー走行に出場すると,いきなりトップタイムを叩きだし周囲をあっと言わせた若者である。今季は同チームのリザーブ&テストドライバーを務めながら,ワールドシリーズ・バイ・ルノーにイギリスのカーリンから参戦。第4戦終了の現時点で,ポイントランキング堂々のトップをひた走っている。突然舞い込んできた朗報に「F1デビューを楽しみにしているよ。でも,この状況はもっと違った形で迎えたかったね」と,戸惑い隠せないベッテルだが,チームも好調なだけに,いきなりの好成績も十分考えられる。
さて,このベッテル起用に最も警戒感を表しているのは,シートを譲る形になったクビサではないだろう。以前から「フランスGPでベッテルと交替か?」と囁かれてきた,トロ・ロッソのスコット・スピードである。本来ベッテルはレッドブル傘下のドライバーであり,BMWザウバーにレンタルされているのは周知の事実。一向に向上する気配のないスピードのパフォーマンスに対し,業を煮やしているというゲルハルト・ベツガー/トロ・ロッソ共同オーナーが,今回のベッテルF1デビューを皮切りに,ドライバーの交代を実行可能性も捨てきれない。それを実行するかしないかは,その人の心次第。これも科学では,予測できないよなぁ。
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