2007年1月29日 (月)

RB3にかかる将来

 同じものを作るにしても,作者が違えばその形も異なるものである。しかし,作者が同じであった場合は,違う物を作っても,過去の作品と似通ってしまうのは仕方のないことだろう。そしてそれが,「誰某らしさ」というような,作者個人の持つアイデンティティーとなる。従って,先日発表されたレッドブルの新型車RB3が,過去数年間のマクラーレンと似ていても何ら驚くことはない。どちらも稀代の天才デザイナーである,エイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサーのデザインであるからだ。ニューウェイ氏自身も,「RB3がいくらか”マクラーレンっぽい”ことは疑いようのない事実だ」と,過去に自らがデザインしたマクラーレンとの関連性を認めている。

 レッドブルRB3を見ると「青いマクラーレン」と表現される部分は多く見つかる。平たく低い位置に垂れ下がったフロントノーズ,ゼロキールとなったサスペンションの取り付け,下部が大きくえぐれたエントリーダクトと,それに続く曲線的なサイドポッド・・・。しかしRB3には,それらニューウェイの経験が生かされたものだけでなく,レッドブルの経験から生まれたもの,そして全く新しいアイディアも含まれているという。また,搭載エンジンの決定が遅れたことについては,「設計の段階においてはそう大きな影響を与えなかった」と,ルノーであれフェラーリであれV8エンジンである以上,大幅な変更を強いられたわけではないことを強調している。

 さて,レッドブル期待の新車RB3をドライブするのは,チーム3年目となる大ベテランのデイビッド・クルサードと,ウィリアムズで本人曰く「不遇の2年間」を過ごした,マーク・ウェバーである。特にクルサードは,このRB3を待ち望んでいたことだろう。クルサードとニューウェイというコンビは,ウィリアムズ,マクラーレンに続き3チーム目となる。数々のチャンピオン・マシンを世に送り出してきたニューウェイの最新作に,クルサードが期待をするのも無理はない。一方のウェバーも,自らの存在感をもう一度示すためにも,クルサードを引退に追いやるような速さを見せつける必要がある。

 様々なアイディアを詰め込んだニューウェイの最新作に,チャンピオンエンジンのルノーが搭載される。これだけを考えても,RB3にかかる期待は否応にも大きなものになる。しかし,それだけでトップチーム並みの速さが発揮できるかというと,F1はそう簡単なものではない。ニューウェイ自身も,「最初はエアロダイナミクスの面で,トラックでは遅いかもしれない」と,周囲の過度な期待を牽制している。2008年以降,レッドブルがコンストラクターとして参戦するのか,それともカスタマーシャシーを購入することになるのか。チームの将来は,新型車RB3にかかっている。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月11日 (月)

言い訳無用のレッドブル

 人はまだ見知らぬ未来の訪れを,様々な期待や不安を抱きながら待っている。先のことは誰にもわからないが,自分の行く先に前途洋々たる未来がある者は,その時が来るのを今か今かと待ちわびているだろう。不安に思っていても,いざその事実に直面してみると,意外にうまくいったりする「うれしい誤算」もあったりする。しかし,全ての未来がそういった明るいものであるとは限らない。明らかに上昇気流に乗っていると思っていたものが躓くことは,最も辛いことである。さて,レッドブルに移籍したマーク・ウェバーは,来季が待ちきれない様子のようが,果たして彼の未来はどちらだろうか。

 バルセロナ,へレスと,レッドブルで2度のテストを経験したウェバーは「早くルノー・エンジンを搭載した新型車に乗りたい」と,今の心境を語っている。レッドブルの新型車RB3は,今シーズン始めにマクラーレンから移籍した天才デザイナー,エイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサー指揮の下で開発される。そのためにレッドブルは,シーズン終盤の開発をストップし,早い段階からRB3へ開発の方向をシフトしてきた。モナコGPでデイビッド・クルサードがチーム初となる3位表彰台を獲得するなど,シーズン中盤まではそこそこの戦闘力を発揮したRB2も,終盤は格下のトロ・ロッソやスパイカー,更にはSAF1にまで追いかけられる始末だった。

 そうは言っても今季のレッドブルは,コンストラクターズ・ランキング7位。つまり,プライベーターの中では最も好成績を残したチームである。従って次なる目標は,ワークス勢を喰うことにある。その中で登場するウェバー期待のRB3だが,果たしてどれほどの実力を発揮することができるのだろうか。ニューウェイが稀代の天才デザイナーであることは紛れものない事実だが,現代F1は一人のデザイナーの力だけで,優れたマシンが誕生することはない。そして,彼が在籍してきたウィリアムズやマクラーレンには,ニューウェイのアイディアを具現化できる,技術力を持ったスタッフが揃っていた。

 ニューウェイはパワー勝負だったF1へ,空力という新たな開発分野を持ち込み,「空力の奇才」と評されたデザイナーである。しかし,彼のデザインするマシンは空力面の性能を追求するあまり,非常に扱いづらいピーキーな特性になることが多かった。それを中和していたのが,エンジニアリング部門の技術力だったわけである。しかし,レッドブルにそれだけの技術力があるかというと,疑問符を付けざるを得ない。ニューウェイが何度も同じ轍を踏むことないと思うが,周囲の期待が大きいだけに,ハズレた時のショックも大きい。来季レッドブルは,背水の陣でシーズンに臨むだろう。「ウィリアムズへの移籍は失敗だった」と語るウェバーに,また同じ事を言われないためにも。

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2006年10月19日 (木)

更なる飛躍を目指して

 チームを移籍することには,常にリクスがつきまとう。上り調子のチームに移籍できればさらなる飛躍が望めるが,行った先で思わぬ落とし穴が待っていることも少なくない。マーク・ウェバーの場合,移籍するタイミングはさほど間違っていなかったはずだ。2004年ののウィリアムズはそこそこの成績を収めていたし,当時所属していたジャガーが買収され翌シーズンの動向が不明瞭だったことも,ウェバーの決断を後押ししていたのだろう。ワークスエンジンを持つ名門チームへの移籍は,誰の目からも「出世街道まっしぐら」に見えた。しかし,彼のマネージャーでもあるフラビオ・ブリアトーレ/ルノー代表は,ウェバーにこの移籍を勧めなかったという。

 ブリアトーレは,ウィリアムズの凋落を予想していたのだろうか。ウィリアムズがよもやこれほどの不振に陥るなど,凡人であれば思いもしないことである。しかしBMWエンジンを失ったウィリアムズは,今シーズンを8位というここ20年で最低の成績で終えようとしている。不振の原因を,何度もトラブルを起こしたコスワースに押しつけるのは簡単である。しかし今シーズンのFW28は,ライバルと比べ空力的にも明らかに劣っていた。そのためチームは,これ以上どこに追加するのだというぼど,毎戦のように空力付加物を追加してきた。時折速さを見せるものの,安定した結果を残せなかった原因は,ウィリアムズのエンジニアリングレベル低下も大きく関与している。

 それとは対照的に,ウェバーが移籍するレッドブルは,来シーズンを飛躍の年にしようと意気込んでいる。今シーズンはじめにマクラーレンから獲得した天才デザイナー,エイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサーの手による「RB3」が登場するのだ。このマシンをウェバーと共に駆るのは,ミハエル・シューマッハなきあと現役最年長ライバーとなるデイビッド・クルサード。彼にとっても来季は進退をかけたシーズンとなる。ウェバーに差をつけられるようであれば,クルサードのF1生活は終わることになる。もっともイギリスには,ルイス・ハミルトンという超新星が誕生しそうだが。

 最後に,正式にトヨタとテストドライバー契約を結んだフランク・モンタニーについて。SAF1の創生期を支えた男が,さらなる飛躍を目指して移籍を決めた。SAF1での確実な仕事ぶりが,トヨタのお眼鏡にかなったと言っていいだろう。しかし,これが即飛躍に繋がるかというと,それはまた別の話である。モンタニーは熟練したテストドライバーであるが故に,リカルド・ゾンタと同じ運命をたどってしまう危険性がある。来シーズンはサードカーを走らせることもないので,テストドライバーは己の速さをアピールする場面が限られる。今はF1流浪人,「いぶし銀」モンタニーの飛躍を願ってやまない。

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2006年9月 7日 (木)

恐るべき!20円ドリンク

 「金は天下の回りもの」と言うが,果たしてどうだろうか?住む世界にもよるが,金にかかわらずどんな物でも,あるところにはあるというのが本当のところだろう。レッドブル・グループのオーナーであるディードリッヒ・マテシス氏が,F1界のボス,バーニー・エクレストン氏を上回る資産家であることが報じられた。レッドブル・グループは,エネルギードリンクの「レッドブル」を,日本を含む世界100ヶ国以上で,年間10億本以上販売している。日本での販売価格は275円だが,原価は20円ほどと言われているから恐ろしい。作れば作るほど儲かるのだから,オーナーの笑いも止まらないだろう。

 莫大な利益をどこにつぎ込むかも企業の大きな選択だが,レッドブル・グループはモータースポーツをメインの広告媒体としている。その参戦カテゴリーは多岐にわたり,F1はもちろん,GP2やF3などのミドルフォーミュラ,WRC,パリダカ,ロードレース等々,枚挙に暇がない。今や世界中のサーキットで,「レッドブル」のロゴを見ない場所はないと思えるほどの勢いである。レッドブルはチーム運営だけでなく,積極的なドライバー育成をしている点でも注目されている。当初はアメリカの若手を発掘する目的で始まったが,スコット・スピードがF1参戦を果たしたことにより当初の目的を達し,現在はヨーロッパ中心に若手をサポートしている。

 このサポートドライバーの中で,今最も注目されているのがセバスチャン・ベッテルであろう。ベッテルはレッドブル・ジュニアチームの一員でありながら,BMWザウバーのサードドライバーを務めたことで,今後の身の振り方が注目されていた。これについてはマテシスオーナーの発言から,BMWザウバーへ2年間レンタルしたことが明らかになった。この契約が成立した背景には,いずれ自チームでデビューさせるベッテルに,F1経験を積ませたいレッドブルと,ロバート・クビサの後任として優秀なリザーブ・ドライバーを確保したいBMWザウバーの利害が一致したことにある。

 レッドブル・グループは今後も長期に渡り,モータースポーツに投資していくつもりなのであろう。そうでなければ,これだけ広範囲に手を広げるはずはない。一時は来季もフェラーリエンジンを搭載するとされていたレッドブルも,ここにきてトロ・ロッソにその契約を委譲し,ルノーエンジンを搭載するという噂が再燃している。その莫大な資金力はそう簡単に衰えることはないだろうし,現状を見る限り将来に対して何の不安もない。しかし,「金は天下の回りもの」である。いずれレッドブル・グループにも,暗い影が忍び寄るかもしれない。それまでは20円ドリンクの資金力も,ご自慢の「エナジーステーション」も大きくなり続けるのだろう。 

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