2007年9月 2日 (日)

F1熱を呼び起こせ!

 夏が終わってしまった。どんなに残暑が厳しかろうと,どんなにセミが鳴いていようとも,9月はもう夏ではないのである。夏という季節は人々を開放的にし,熱い思い出を我々に残してくれる。しかし9月の訪れとともに,その「熱い夏」も終わってしまったのだ。しかし,嘆く事なかれ。F1界では夏が終わろうとも,熱い戦いはまだ続いている。残り5戦となりいよいよ終盤戦となった感のあるチャンピオンシップ争いは,未だ2強4名のドライバーがしのぎを削る,正に群雄割拠の様相を呈している。そしてもうひとつ,私たちF1ファンの興味を掻き立てているのが,来季を見据えた様々な動きである。

 さて,予てより噂に上っていたスパイカーの買収が,いよいよ現実的な話となったようだ。買収するのは,スパイカーのミシェル・モル/マネージング・ディレクターと,インド人実業家であるヴィジャイ・マルヤ氏との共同コンソーシアムである。マルヤ氏は,航空会社としても知られる「キングフィッシャー」ブランドを持つ「ユナイテッド・ブリュワーズ・グループ」の経営者であり,傘下企業であるキングフィッシャー航空は,今季からトヨタのスポンサーとなっている。今回のスパイカー買収額は1億1,000万ドル(約127億6,000万円)と伝えられており,スパイカーがその前身であるミッドランドを買収した時の額,1億ドル(約116億円)を上回るものである。

 この買収劇でクローズアップされてきたのが,現在インド人で唯一のスーパーライセンスを保持する,ナレイン・カーティケヤンである,カーティケヤンは現在,ウィリアムズとテストドライバー契約を結んでおり,来季も残留を希望していると伝えられていた。しかしウィリアムズの首脳陣は,もうひとりのテストドライバーである中嶋一貴を高く評価しており,今季カーティケヤンがテストを担当することは殆どなかった。しかし,ここに来てのスパイカー買収劇。「オール・インドチームを作るのが夢」と語るマルヤ氏がいれば,カーティケヤンのレギュラー復活も現実的な話となるだろう。

 現在,アジアや中東のマーケットは,各国の国際企業が世界戦略を練る上で,決して外すことのできない市場である。F1開催国も,現在行われている日本・マレーシア・中国・バーレーンの4カ国に加え,来季からはシンガポール,2009年からはドバイと韓国が名乗りを上げている。更に「F1予備校」としての地位を確立したGP2では,来季から「GP2アジアシリーズ」をスタートさせせ,積極的にアジア及び中東のドライバーを起用することを打ち出している。インド人実業家によるスパイカー買収劇が,今後はインドのF1熱を盛り上げることになるのだろうか。それにしても,これだけ世界がアジアに注目するなかで中で,今ひとつ盛り上がりに欠けるのが日本なんだよなぁ・・・。 

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2007年7月28日 (土)

左近よ,チャンスを生かせ!

 日本人が転職を繰り返した場合,大抵「節操がない」と批判的な目で見られることとなる。しかし海外では,自分自身のキャリアのために転職をするのは当然のこととされる。F1の世界に於いてもチーム間を渡り歩くことなど,至極当たり前のことである。ドライバーはもちろんのこと,エンジニアやメカニックなどのスタッフも,短い期間で移籍を繰り返す者が多い。先日もホンダがBMWザウバーからチーフ・デザイナーのヨルグ・ザンダーを,ウィリアムズからエアロダイナミシストのロイ・ビゴワを獲得したが,彼らの行動を非難する者など,F1関係者はもとよりファンの中にもいないだろう。

 しかしこと日本人ドライバーとなると,少々話は変わってくる。ましてやそれが,日本チームからライバルチームへの移籍であれば尚更である。先日,山本左近のスパイカー移籍が発表されたが,この電撃移籍には様々な反応があった。スパイカーのコリン・コレス代表は,残り7戦のシートは未確定であると述べていたが,事前にテストドライブをしていたクリスチャン・クリエンが有力ではないかと目されていた。しかし,実際にそのシートを獲得したのは,噂にも上らなかった左近であった。左近本人も「GP2レース,日曜日の第2戦が終わった後突然オファーが来たので,僕は真剣に受け取ることができませんでした」と,自身も驚く移籍話であったことを認めている。

 左近は今季BCNコンペティションからGP2に参戦しているが,SAF1のセカンド・テストドライバーでもあった。しかし,シーズン中のテストは二人のレギュラードライバーと,途中からSAF1に加わったテストドライバーのジェームス・ロシターが担当しており,左近は一度もF1のテストを行う機会を得られないでいた。そもそも昨年末に,現スパイカーのギド・ヴァン・デル・ガルデがテストドライバーに起用された時点で,左近はSAF1でのポジションを失っていたと言っていいだろう。来季も佐藤琢磨&アンソニー・デビッドソンの残留が濃厚なSAF1にこのままに居続けても,左近のF1復帰は難しい。であるならば,新しい可能性に賭けてみるのは,レーサーであれば当然の結論でもある。

 左近は日本人ドライバーには珍しく,メーカーの枠にとらわれることなくステップアップを繰り返してきたドライバーである。それ故彼の行動に対し,「節操がない」と非難する声があるのも事実である。確かに「義理と人情」は日本人の美しき文化であるが,それによりせっかくのチャンスを棒に振ってしまうケースも後を絶たない。以前「移籍のタイミング」でも語ったように,かつての日本人ドライバーはそのしがらみに捉えられ,チャンスを生かせないままF1を去っていった。しかしそれでは,彼の夢であるF1ドライバーは遠のいていくばかりである。F1学校への入り方は人それぞれ。大切なのは「どうやってチャンスを得たのではなく,得たチャンスをどう生かしていくか」なのだから。

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2007年2月 6日 (火)

Double Dutchなスパイカー

 日本とオランダの関わりは深い。400年近く前,江戸時代の鎖国政策の中にあっても,貿易が続けられた西洋の国はオランダだけであった。したがって江戸時代末期に開国するまで,日本人にとっての西洋はオランダであった。しかし,F1における日本とオランダの関係はあまり思わしくない。真の日本チームであるSAF1と,今季一層オランダ色を強めたスパイカーの争いが,白熱しているからである。昨年末からくすぶり続けてきたシャシー問題に加え,先週発覚したギド・ヴァン・デル・ガルデの二重契約問題と,レースを離れてもこの2チームはライバルとして激しい火花を散らせている。

 そのスパイカーは,新型車F8-Ⅶを発表した。マシン名称としては珍しい,ローマ数字を持つことについては,スパイカーが航空機メーカーだったことを示すものとされている。ジェームス・キー/テクニカル・ディレクターの手により設計されたF8-Ⅶは,昨年型M16の正常進化型となっている。小さなツインキールだったロアアームのマウント部はほぼゼロキール化され,サイドポッドのくびれも現代的な仕上がりとなった。一方で昨年終盤にチームに加わった,マイク・ガスコイン/チーフ・テクノロジー・オフィサーが設計するマシンは,トルコGPから投入される見込みとされている。

 新型車発表会の中で,スパイカーのコリン・コレス代表は,「トロ・ロッソとSAF1が今季カスタマー・シャシーで参戦した場合,コンストラクター・ポイントを与えるべきではない」と述べ,両チームに対し再度警告を発している。これは同じくカスタマー・シャシーに対して反対の姿勢を示している,ウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表と,パトリック・ヘッド氏と同じ見解である。しかし両者の姿勢には,若干の違いも見られる。コレス代表が「場合によっては開幕戦で9チームしか走らないことも覚悟した方がいい」と,両チームを強く牽制しているのに対し,ヘッド氏は,「参戦を阻止するような差し止め命令が,メルボルンで出されるようなことは望んでいない」と述べている。

 さて,SAF1とスパイカーを巡るもう一つの問題は,未だ解決の方向性が見えていない。新型車発表会に参加したヴァン・デル・ガルデは,「SAF1とはいくつかの問題があった。」と,移籍が契約上の問題であったことを認めている。この件の解決は,契約承認委員会の判決に委ねられることになるだろうが,仮にヴァン・デル・ガルデの移籍が認められなくとも,彼がSAF1に復帰する可能性は限りなく低いだろう。まだ見ぬSA07をカスタマー・シャシーと決めつけ,強気の発言を繰り返すコレス代表と,「契約とかそういったことと僕は無関係だ」と,自分の契約問題すらさして関心のないヴァン・デル・ガルデ。まさに「Double Dutch=ちんぷんかんぷん」なスパイカーである。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年7月31日 (月)

ミッドランドとの距離

 ミッドランドがドイツGP決勝で,禁止されている「フレキシブルウイング」を使用していたとして失格処分を受けた。リアウイングが過度のフレキシブル構造になっていると,レース終了後の車両車検で判定されたためである。これによりミッドランドのクリスチャン・アルバースとティアゴ・モンテイロは,それぞれ13位・14位のポジションを失うこととなった。ちなみに今シーズン,フレキシブルウイング使用に関して,レースリザルトの除外を言い渡されたのは今回が初めてのケースとなるが,ミッドランドはこの裁定に対して控訴しないことを発表している。

 フレキシブルウイングについては,シーズン序盤戦にフェラーリやBMWザウバーの使用していたものについて「高速走行時にたわみを発生させ最高速度を上げている」と他チームからクレームが出たにより,その存在がクローズアップされた。実際にどこまでが許容範囲でどこからがフレキシブルなのかの判定は微妙だが,レギュレーションのグレーゾーンをついて使用していたチームは少なくなかった。そのためFIAはこのウイングについての規定を厳密にし,レース後の車両車検を行っていた。これに今回ミッドランドが引っかかってしまったわけである。

 以前からたびたび言われてきたことだが,ミッドランドの周辺からはレースに対する情熱のようなものが感じられない。オーナーのアレックス・シュナイダー氏がチームを投資目的として所有しているのは明らかであるし,コリン・コレスチーム代表の運営もお世辞にも上手とは言えない。若手育成プログラムとして昨シーズンはユーロF3に参戦するもテールエンダーの常連。挙げ句の果てに今シーズンはDTMに2年落ちのアウディで参戦するなど,F1以外のカテゴリーでも怪しげな雰囲気を十二分に発揮している。SAF1が純然たるF1プライベーターとして,パドックで温かく見守られていることとは対照的である。

 そのSAF1はドイツGPからニューマシンSA06を新規投入したことで,ライバルチームであるミッドランドとの距離を着実に縮めてきている。ミッドランドとしてもサスペンションテストを繰り返すなどパフォーマンスアップには余念がなかったが,今回の失格騒動はミッドランドの焦りが現れたものとして受け止められてしまうだろう。とはいえ予選はともかく,レースペースではまだミッドランドの方が一枚上手。信頼性については言わずもがなである。ミッドランドとの距離をどれだけ早く縮められるか。どん底から這い上がるSAF1を見守っていきたい。

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