2007年12月24日 (月)

お金では得難い「感動」

 ウェブの中をウロウロしていると,時々面白いサイトに出くわすことがある。今日見つけたサイトは,「MyBoo」というブログ解析サイト。自分の書いているブログに「どんな話題」が多いのか,そこには「どんな気分」が現れているのかなどを解析できるという。早速このサイトのURLを入れ解析してみた。結果は,『「感動の様子」がブログににじみ出てます。話題に関しては「本」について多く書かれているみたいです。』とのこと。本についてのエントリーはそれほど多くないと思うが,「感動の様子」と言われれば「当たらずとも遠からず」かもしれない。モータースポーツの世界には,お金では得難い「感動」がであるからである。

 クリスマス休暇真っ最中のF1界。当然,世界に発信されるニュースも多くはない。しかし,そんな中でどうしても探してしまうのが,SAF1に関するニュースである。チームの危機的な財政状況が伝えられる中,先週ダニエレ・オーデット/マネージング・ディレクターは,「我々にはまだふたつの問題がある」と,現状を語っている。二つの問題とは,既に周知の通り,4000万ドル(約45億円)にものぼる金銭的損失と,中々結論の出ないカスタマーシャシーの問題である。カスタマーシャシー問題に関しては,年明けに裁定が行われると言われているが,これらが解決されないことには,来季の計画など立つはずもない。

 鈴木亜久里代表は,現在も複数の企業とスポンサー契約のと話し合いを続けているという。しかし,SAF1の創設以来言われ続けていることが,「日本企業はあまり興味を持ってくれない」ということである。現在日本中を探しても,億単位の広告宣伝費をモータースポーツに使うことのできる企業は限られている。ましてやF1は商標権の問題から,レース映像を広告媒体として使うことは不可能に近い。そうなると,宣伝の為だけではなく,スポンサー同士の「Business to Business」いわゆるBtoBと呼ばれる企業間取引が見いだせなければ,企業側もF1に興味を示してはくれない。しかし,残念ながらプライベーターであるSAF1には,それを推進するノウハウが殆どないのである。

 一方,同じプライベーターでありながら,このBtoBを積極的に取り入れ,多くの企業から支援を受けているチームがある。F1界の古豪ウィリアムズである。ウィリアムズのスポンサーにはAT&Tを始め,レノボ,RBS,ロイター,アリアンツなと,多くの企業が名を連ねている。これらの企業はただスポンサーとしてチームに資金を提供し,マシンにロゴを露出させているだけではなく,互いのビジネスチャンスを拡大できるのである。ウィリアムズのスコット・ギャレット/スポンサーシップ・マネージャーは「2002年以降,我々のパートナー間で5億ドル(約588億円!)に相当するビジネスを促進してきた」とBtoBの成果を語っている。「感動」を得るためには,やっぱりお金も必要だよなぁ。

参照サイト:MyBoo

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2007年2月20日 (火)

2世ドライバーの宿命

 「親の光は七光り」という言葉が示すように,2世に対する世間の風当たりは強い。就職や昇進が本人の実力ではなく,家族や親族の力が大きく関わっているのは,今も昔もさして変わらない。しかし重要なのは,ポジションを得ることではなく,得たポジションをどう生かすかである。F1の2世ドライバーで真っ先に思い浮かぶのは,「F1侍」ジャック・ビルニューブだろう。彼は「偉大なドライバーの子息」としてのプレッシャーをはねのけ,チャンピオンとなった実力の持ち主である。そして今季も,2世ドライバーが話題には事欠かない。ウィリアムズで2年目を迎えるニコ・ロズベルグ。ルノーのテストドライバーとなったネルソン・ピケJr。そして日本期待の新星,中嶋一貴である。

 その一貴は,スペイン・バレンシアで行われた合同テストで,順調な周回を続けているようだ。昨日はレギュラードライバーのアレキサンダー・ブルツが,FW29のセットアップ作業を担当したのに対し,一貴はレース・シミュレーションを実施。初めて乗った新型車で珍しくスピンしたものの,トータル54周を周回している。一貴のテストは,このオフ既に5回目,都合7日間を数える。これは,チーム内での信頼を勝ち取っている証拠に他ならない。特にサム・マイケル/テクニカル・ディレクターは,「彼のように走れるレースドライバーを見つけるのは難しい」と,安定感あるその走りを絶賛している。

 マイケルTDは,今季GP2と重ならないいくつかのレースで,一貴を金曜日に走行させることを明言している。それが言葉通り実行されれば,早ければ開幕戦のオーストラリアから,一貴の走りが見られることとなる。一つ心配なのは,短期間でF1とGP2という異なるカテゴリーを乗り換えるという点である。双方は同じブリヂストンのコントロールタイヤであるが,タイヤの構造自体が大きく異なる為,そのドライビングに修正が必要とされる。GP2で速さを発揮したドライバーが,金曜走行でF1をドライブした場合,その実力を出せずに終わっている。一貴はその逆であり,GP2よりもF1の方が圧倒的に走行距離が長い。今後行われるGP2の合同テストにも,周囲の注目が集まる。

 一貴が将来を嘱望される中で,もうひとりのテストドライバー,ナレイン・カーティケヤンは,完全に存在が霞んでしまった。本人はインドGP実現のため,是が非でもF1に残りたいだろうが,現実的にはA1など他のカテゴリーへ進むしか,道は残されていないだろう。本来ウィリアムズは,これほど一貴が安定した速さを発揮するとは,思っていなかったはずである。一貴のウィリアムズと契約に,トヨタの存在があったことはもちろんなのだが,一貴は得たポジションを着実に自分の物にし始めている。日本人2世ドライバーは,親の七光りなどではなく実力で,F1デビューを果たそうとしている。

参照リンク:@nifty F1通信

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2007年2月 9日 (金)

「重い」フランクの想い

 「重い」という言葉には,様々な意味がある。①目方がある。②気分が晴れ晴れしない。③注意深く,軽々しく行わない。④体の働きや動きがよくない。⑤程度が大きい・・・。このところの私は,明らかに②である。連日のように飛び込んでくる,シャシー問題に対する報道を読んでいると,どうしても憂鬱な気持ちになってくる。昨年,大いなる希望を持って参戦したSAF1は,様々な苦境に直面しながらも,それを乗り越えてF1を戦ってきた。今季は早々と体制を決定し,テストも精力的に行うなど,順調な滑り出しが期待されたものの,このところどうも明るいニュースがない。

 そんな中で,フランク・ウィリアムズ代表が,再度カスタマー・シャシー問題について語っている。これを読んでいると,ウィリアムズ代表がいかに③な人物かが伝わってくる。彼には,「長年にわたりF1を支えてきたのは,自分たち独立チームである」という強い自負がある。それだけに,安易にカスタマー・シャシーに頼ろうとするチームが許せないのだろう。「コンストラクターであるのならば,これまでF1が何十年もしてきたように,自分のレーシングカーを作らなくてはならない。マシンを買うのであればコンストラクターではない」という言葉も,言っていることはスパイカーのコリン・コレス代表と同じなのだが,ウィリアムズ氏が言うからこそ非常に「重い」ものとなる。

 その一方で,ウィリアムズ代表はSAF1とトロ・ロッソに対し,チャンピオンシップ・ポイントなしと,分配金の取り消しを望んでいる。さらに,「彼らが何をするにしろトラックの上で我々を打ち負かすと,我々は配当金がもらえなくなる」と,商業面における非常に現実的な話もしている。カスタマー・シャシーを購入するチームはコンストラクターではないのだから,ポイントも分配金も与えるべきではないというのが,ウィリアムズ代表の主張は理にかなっている。ウィリアムズは,SAF1やトロ・ロッソ,或いは2008年からの参戦を目指すプロドライブに対して,「不公平さ」を露わにしているのだ。

 もう一つの話題が,2008年以降のカスタマー・シャシーについてである。マックス・モズレー会長のBチーム案は,プライベーターの参戦コストを軽減させることで,彼らを救済することが目的だったはずである。しかし彼らの全てが,カスタマー・シャシーを購入するとは限らない。仮にシャシーの購入が認められるようになっても,ウィリアムズだけは頑なに,コンストラクターとしての意地を貫くのだろう。そうなると,同じプライベーターでありながら,参戦コストの桁が一つ違う状況が生まれてくる。F1の伝統を守ろうとする強い信念と,自チームを存続させるための強い意志。それがなければ,F1を戦い続けることなど,とうていできないと言うことか。それにしても,彼の想いは「重い」。

参照リンク:F1通信 beatnicの密かな憂鬱

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2007年1月30日 (火)

頑固者の誇りにかけて

 世の中には,いかなる困難な状況であっても自分のポリシーを曲げず,確固たる信念を持った「頑固者」と,時代の流れに合わせて,最も効果的・効率的な行動をとる「現実主義者」がいる。もちろん人の生き方は千差万別,十人十色であり,どちらの生き方が正しいと言うことはない。人により様々な考え方,生き方があるからこそ,この世界は面白いのである。さて,「頑固者」と「現実主義者」をF1オーナーに例えるなら,前者はウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表であり,後者はトロ・ロッソのゲルハルト・ベルガー/共同オーナーということになるだろう。そしてこの二人は,このオフシーズン最大の懸案事項であるシャシー問題で,激しい火花を散らしている。

 シャシー共有に断固反対の姿勢を示すウィリアムズ代表は,トロ・ロッソとSAF1の新型車について,法的措置に持ち込む用意があることを明らかにしている。それに対しベルガー共同オーナーは「最終的な判断を下すのはFIAであり,ウィリアムズに言われる筋合いはない」と,強烈な反論をしている。ウィリアムズ代表の行動は,昨年からシャシー問題に強硬な姿勢を示してきた,スパイカーのコリン・コレス代表と同じである。しかし,この二人には明らかな信念の違いがある。それはコレス代表が,自チームのポジションを守ろうとしているだけなのに対し,ウィリアムズ代表はコンストラクターとしての意義,そしてF1の伝統を守るために行動を起こしているという点である。

 「車いすの闘将」と称されるウィリアムズ代表は,下半身不随のハンディをモノともせず,長年にわたりF1を戦ってきた生粋のレース人間である。それだけに彼の発言には非常に重みがある。今や完全な商業レースとなってしまったF1に於いて,ウィリアムズ代表は最後のプライベーターとして孤軍奮闘してきた。どんな苦境に陥っても決して大企業の軍門に下ることなく,ウィリアムズは今もレーシング・コンストラクターとしてのプライドを保っている。それは彼の「我々はいわゆる伝統を重んじるチームであり,2つのワールドチャンピオンシップの為に戦っている」という言葉にも表れている。

 そんなウィリアムズ代表にしてみれば,コンストラクターとしての誇りを捨て,安易にカスタマー・シャシー(に近いマシン)を使うことなど,断じて許せないのだろう。誇り高き英国人オーナーの姿勢に,多くのF1関係者は尊敬の念を持っていることも事実である。かつてバーニー・エクレストンFOM会長は,「F1にある4つの宝」を挙げている。それはモナコGPにフェラーリ,そしてマクラーレンとウィリアムズであったという。頑固者の誇りにかけ,大企業の工場進出にたったひとりで立ち向かう町工場の老社長・・・。なんだかしんみりしてきたなぁ。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年11月 9日 (木)

20年の時を経て・・・

 チャンスはどこに落ちているかわからない。チャンスをつかむためには,「適切な時期に,適切なポジションにいることが求められる」と昨日記したばかりだが,それを掴んだ若手がまた一人誕生した。ウィリアムズが来シーズン,中嶋一貴とテストドライバー契約を結んだことを正式発表したのだ。来シーズンのウィリアムズにはトヨタ・エンジンが搭載されるため,トヨタがドライバー人事にも口を出してくることは十分考えられていた。従ってTDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)の一員であり,GP2のテストに参加していた中嶋か平手晃平のどちらかがテストドライバーに起用されるという話は,以前から囁かれていたことだった。

 では,なぜ平手ではなく中嶋が起用されたのだろうか。今シーズン激戦のユーロF3にマノーから参戦していた二人は,共に1勝をあげ平手がシリーズ3位,中嶋がシリーズ7位の成績を収めた。これだけだと平手の方が上位ということになる。しかし,平手がユーロ2年目なのに対し,中嶋はF3経験が豊富なものの今年がユーロF3初参戦。その中で光る走りをしたことが,トヨタ本社サイドの高い評価に繋がったと言われている。中嶋はGP2初テストでもルーキー最上位のタイムを記録し,チーム関係者に好印象を与えた。彼の適応力の高さは,F1をドライブする際も大きな武器となるだろう。

 さて,そのウィリアムズを離脱する,マーク・ウェバーは「ウィリアムズはドライバーの意見を聞く耳を持っていない」と,捨て台詞を残している。自らの技術力に絶対の自信を持っているウィリアムズにおいて,ドライバーはチームの一部分でしかなく,彼らの意見に耳を傾けなかったとしても不思議ではない。確かに1990年代のウィリアムズは「リアクティブ・サスペンション」を搭載したFW14Bなど,革新的なマシンを次々と世に送り出し,ルノーと共にチャンピオンチームとしてF1界に君臨していた。しかし,その自信が自らの過ちを正すことなく突き進む結果となり,BMWやコスワースとの「喧嘩別れ」に繋がってしまった。トヨタの加入でどこまでこの体質が改善されるか・・・。

 ウィリアムズ入りする中嶋は,早ければ今月末のテストからステアリングを握ることになるだろう。チームにはもう一人のテストドライバーであるナレイン・カーティケヤンがいるが,彼の契約にリザーブドライバーは含まれていない。今回の中嶋の契約がリザーブドライバーを含むものであるかは不明だが,もしテストでカーティケヤンを凌ぐタイムを出そうものなら,来シーズンの金曜日には,サーキットを走る中嶋の姿が見られるかもしれない。日本人F1ドライバーのパイオニア,中嶋悟がF1デビューを果たしてからちょうど20年。そのDNAを引き継ぐ息子が,20年の時を経て再びF1に帰ってくる。 

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2006年10月19日 (木)

更なる飛躍を目指して

 チームを移籍することには,常にリクスがつきまとう。上り調子のチームに移籍できればさらなる飛躍が望めるが,行った先で思わぬ落とし穴が待っていることも少なくない。マーク・ウェバーの場合,移籍するタイミングはさほど間違っていなかったはずだ。2004年ののウィリアムズはそこそこの成績を収めていたし,当時所属していたジャガーが買収され翌シーズンの動向が不明瞭だったことも,ウェバーの決断を後押ししていたのだろう。ワークスエンジンを持つ名門チームへの移籍は,誰の目からも「出世街道まっしぐら」に見えた。しかし,彼のマネージャーでもあるフラビオ・ブリアトーレ/ルノー代表は,ウェバーにこの移籍を勧めなかったという。

 ブリアトーレは,ウィリアムズの凋落を予想していたのだろうか。ウィリアムズがよもやこれほどの不振に陥るなど,凡人であれば思いもしないことである。しかしBMWエンジンを失ったウィリアムズは,今シーズンを8位というここ20年で最低の成績で終えようとしている。不振の原因を,何度もトラブルを起こしたコスワースに押しつけるのは簡単である。しかし今シーズンのFW28は,ライバルと比べ空力的にも明らかに劣っていた。そのためチームは,これ以上どこに追加するのだというぼど,毎戦のように空力付加物を追加してきた。時折速さを見せるものの,安定した結果を残せなかった原因は,ウィリアムズのエンジニアリングレベル低下も大きく関与している。

 それとは対照的に,ウェバーが移籍するレッドブルは,来シーズンを飛躍の年にしようと意気込んでいる。今シーズンはじめにマクラーレンから獲得した天才デザイナー,エイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサーの手による「RB3」が登場するのだ。このマシンをウェバーと共に駆るのは,ミハエル・シューマッハなきあと現役最年長ライバーとなるデイビッド・クルサード。彼にとっても来季は進退をかけたシーズンとなる。ウェバーに差をつけられるようであれば,クルサードのF1生活は終わることになる。もっともイギリスには,ルイス・ハミルトンという超新星が誕生しそうだが。

 最後に,正式にトヨタとテストドライバー契約を結んだフランク・モンタニーについて。SAF1の創生期を支えた男が,さらなる飛躍を目指して移籍を決めた。SAF1での確実な仕事ぶりが,トヨタのお眼鏡にかなったと言っていいだろう。しかし,これが即飛躍に繋がるかというと,それはまた別の話である。モンタニーは熟練したテストドライバーであるが故に,リカルド・ゾンタと同じ運命をたどってしまう危険性がある。来シーズンはサードカーを走らせることもないので,テストドライバーは己の速さをアピールする場面が限られる。今はF1流浪人,「いぶし銀」モンタニーの飛躍を願ってやまない。

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2006年8月21日 (月)

目を覚ませフランク!

 同じチームオーナであっても,人が違えば考え方も大きく違うのは当然である。かつてジョーダングランプリを率い,F1において一世代を築いたエディー・ジョーダン氏の発言が面白い。かねてから親交の深かったウィリアムズチームの総帥,フランク・ウィリアムズ氏に対し,来シーズンからエンジン供給を受けるトヨタにチームの株式売却を勧めている。ワークスチーム全盛時代の現代F1において,プライベートチームであるウィリアムズが上位進出する道は険しい。そのためトヨタに株式を売却することで資金をつくり,それによりマシン開発を進め戦闘力を上げるように促している。

 ここで注目したいのが,ジョーダン氏が「トヨタへのチーム売却」を勧めているのではなく,あくまでウィリアムズの復活を望んでいる点である。自身としてはロシアの富豪,アレックス・シュナイダー氏にチームを売却してしまったものの,ウィリアムズ氏にはそれを勧めようとはしていない。今シーズンは不振に喘いでいるウィリアムズも,チームスタッフの技術レベルは高い。開発に必要な資金さえあれば,ワークス勢にも引けをとらない速さを取り戻す考えているのであろう。ウィリアムズ氏をよく知るジョーダン氏だからこその発言といえる。

 ジョーダン氏とウィリアムズ氏のレースに臨む姿勢が大きく異なることを考えれば,これは当然のことである。ジョーダン氏が銀行出身の現金主義者であったのに対し,ウィリアムズ氏はスピードに取り憑かれた根っからのレース人間である。今シーズン,戦闘力低下の大きな要因となったBMWとの決別も,ワークスの軍門に下るくらいだったら潔く清貧の道を歩んだ方がいいという,ウィリアムズ氏の強い意志がさせたものである。その結果今シーズンのウィリアムズは,ここまでの獲得ポイントが僅か10点,この8レースは入賞すらしていない。これは長いウィリアムズの歴史の中でワーストの記録になるというが,これもウィリアムズ氏自身の決断によるものである。

 結論を言えば,ウィリアムズ氏がチーム株式を売却することはないだろう。確かに株式を売却すればある程度の資金は得られるだろうが,同時にトヨタの介入も深くなる。自チームの独立を重んじるウィリアムズ氏がそれを許すとは思えない。これまでも数々の困難を乗り越えてきた「車椅子の闘将」だからこそ,最後の最後までプライベートチームの誇りを重んじると考えられる。だが今シーズンの不振は,これまでと違い出口の見えない長いものとなっている。圧倒的な資金力を誇るトヨタが,その状況を指をくわえて黙って見ているとは考えにくい。「変な意地を張らず,チームの置かれている状況を冷静に分析しろ!」と言うジョーダン氏の助言がどこまで届くのやら・・・。 

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2006年7月28日 (金)

ウィリアムズ・トヨタの不安

 トヨタが来シーズンからウィリアムズにエンジンを供給することが発表された。供給期間は3年間,トヨタワークスと同一スペックのエンジンが供給される。お金には厳しいウィリアムズのこと,一時はレクサスのバッジネームをつけることで無償供給を勝ち取ったとも噂されていたが,結局のところ年間1000万ユーロ程度の有償供給に落ち着いたようである。これにより今シーズントヨタエンジンを使用していたミッドランドは,コスワースエンジンを使用することになると考えられている。

 エンジンの性能は,成績を左右する大きなファクターであることは言うまでもない。ドライバー・シャシー・エンジンがバランスよくかみ合ったとき,好成績を上げられるチャンスがやってくる。ご多分に漏れず,ウィリアムズもエンジンにより成績の浮き沈みがはっきりとしていたチームである。ホンダ・ルノー・BMWなどのワークスエンジンを獲得したときは高い戦闘力を発揮しているが,ワークスを失うとジャッド・メカクローム(スーパーテック)・コスワースなどのカスタマーエンジンでしのぎ,上位浮上のチャンスをうかがってきた。

 そして今回のトヨタエンジン獲得である。自動車メーカーがすべて自チーム(メルセデスはマクラーレンに資本提携)を所有している現在,ワークス供給のエンジンが期待できるわけもない。今回ウィリアムズに供給されるエンジンもワークスと同性能とは言え,カスタマーエンジンであることは変わりない。今シーズンフェラーリエンジンを使用しているレッドブルが,性能調整をされたコスワースV10を搭載するトロ・ロッソとたいして変わらないのもある意味当然である。レッドブルは最新スペックを供給しないフェラーリエンジンを捨て,ルノーエンジンを獲得しようとしているのは周知の事実である。

 ここで不安なのが,来シーズンのウィリアムズ・トヨタで,同じことが起きないかということである。ウィリアムズは高い技術力と抜群のチームワークで長くF1界をリードしてきたトップチームであった。フランク・ウィリアムズ&パトリック・ヘッド&エイドリアン・ニューウィーががっちりとスクラムを組んでいた「常勝」ウィリアムズであれば問題ないが,ここ最近のウィリアムズはチームの成績不振を責任転嫁する傾向がはっきりと見られ,技術力だけでなく統率力の低下も目立っている。BMWと決別したことも,そのチーム力低下を認められない責任転嫁の体質が生み出してしまったものである。もう一度その体質を「カイゼン」し,来シーズンは持ち前の技術力でトヨタワークスを喰ってくれることを期待したい。

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