消え去る者の運命
移り変わりの激しい現代に於いて,人の記憶に長く留まることはなかなか難しいものだ。スポットライトが当たっているうちはいいが,それが消えればあっという間に忘れ去られてしまう。ロバート・クビサにシートを譲る形でF1引退に追い込まれたジャック・ビルニューブも,やがて人々から忘れ去られる運命にあるのだろうか。長年ビルニューブのマネージャーを務めてきたクレイグ・ポロックは,BMWチームの政治的な方針によってF1引退に追い込まれたと主張している。確かにこれは事実であろうが,もしビルニューブにかつての速さがあれば,チームもこうした判断を下すことはなかっただろう。
日本のモータースポーツ界でも,先日ひとつの活動に終止符が打たれた。先週末に鈴鹿サーキットで行われた,スーパーGT第6戦鈴鹿1000kmを最後に,ディレクシブ・モータースポーツが全てのカテゴリーから姿を消した。このレースでディレクシブは70kgのウエイトハンデを課せられながらも2位入賞を果たし,現在GT300のランキングトップを維持している。今後は同体制を引き継ぐR&Dスポーツからのエントリーとなるが,資金的には依然厳しい状況にあるという。フォーミュラ出身の密山祥吾とハコ出身の谷口信輝という異色のコンビが,逆境を乗り越えてタイトルを獲れるか注目される。
今回のディレクシブ撤退は,彼らを資金的に支えていたアキヤマ・ホールディングスが,「F1参戦」という目先の利益だけを追い求めた結果の悲劇である。そう考えるとディレクシブのドライバーやチームスタッフはもちろんのこと,芳賀美里代表もまた被害者の一人であると言える。彼女のレースに対する真摯な姿勢は多くの関係者の認めるところであったし,その熱意に多くのファンがエールを送っていたことも事実だ。爽やかなディレクシブ・ブルーをまとったマシンはサーキットから消えるが,まだ若い芳賀代表はまたいつかサーキットに舞い戻る日が来るかもしれない。
さて,この鈴鹿1000kmで最も情けなかったのが井出有治であろう。ザナヴィニスモZの助っ人ドライバーに抜擢された井出だったが,他車と接触した上にドライブスルーペナルティの表示を見落として周回を重ね,最後は黒旗失格という最悪の結末を迎えた。ボーナスポイントの付く鈴鹿1000kmには,どのチームの必勝態勢で臨んでくる。そのための井出起用だったが,チームの期待に応えられなかったばかりか,自身の評価をも下げてしまった。無線の故障など様々な不運が重なったこともあるが,失格という結果には変わりない。このような走りをしていたのでは,F1復帰はおろかドライバーとしてもフェードアウトしてしまう。F1復帰を応援する多くのファンのためにも,井出にはもう一度自分の足下を見直してもらいたい。
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