2007年6月17日 (日)

勢いを取り戻せ!

 アメリカという国は,色々な意味で「分かりやすい国」であると言われる。そこで成功した者は人々の拍手喝采を浴び,逆に失敗した者は,容赦なくブーイングを浴びせられる。2004年,この地で3位表彰台を獲得した佐藤琢磨は,今もアメリカのF1ファンに大人気であるという。ましてや今年は,前戦で「チャンピオン・アロンソ」をオーバーテイクしての6位入賞を果たしているだけに尚更である。先日「SPEED chanell」というトーク番組にアンソニー・デビッドソンと出演した琢磨は,「今話題沸騰のチーム、スーパー・アグリのお二人!」と紹介され,終始ご機嫌だったという。

 さて,アメリカGPの舞台であるインディアナポリスで,一人の日本人ドライバーが新たな歴史を作った。IRLの下部カテゴリーである,インディプロシリーズに参戦中の武藤英紀である。武藤の所属するチームは,SAF1の鈴木亜久里代表が率いる,スーパーアグリ・パンサーレーシング。今回はその亜久里代表が見守る中,武藤は自身初となるPPから安定した走りを見せ,2位に大差をつけてのうれしい初優勝を飾っている。亜久里代表も「日本人だから,カテゴリーが何でも君が代を聞くのは気持ちがいいね」と,F1より一足先に上がった日の丸に,喜びを隠せないようである。

 一方,難しい立場に立たされているのが,武藤の「兄貴分」にあたる松浦孝亮である。レースを観戦した松浦は「拍手するよりされる立場になりたい」と語り,武藤の初優勝を複雑な思いで見つめていたという。現在IRLにパンサーから参戦している松浦は,1年目こそ新人賞を獲得するなど活躍したが,その後は成績が低迷。4年目となる今季は背水の陣で臨んでいるものの,度重なるアクシデントに加え自身やチームのミスもあり,ここまで満足な成績を残すことができないでいる。そして,ここに来ての武藤初優勝。素直に喜べるはずもないだろう。先週武藤がIRLのマシンをテスト,チーム代表が太鼓判を押す走りをしたことも,松浦の心境をより複雑なものにしている。

 レースに限らず,物事には全て「勢い」というものがある。松浦と武藤を比べた場合,開幕から常にトップ争いを繰り広げ,ついにはポール・トゥ・ウィンを果たした武藤にはそれがある。一方で松浦は,開幕戦,第2戦と続けてアクシデントに見舞われた上,上昇気流に乗りたかった第3戦では,まさかの1周リタイア。その後もチームとの連携ミスで上位フィニッシュを逃すなど,完全に負の流れに乗ってしまっている。これを覆すには,兎にも角にも「結果」を残す必要がある。ここ数戦,松浦の成績も徐々に上昇してきており,先日行われた第7戦では,今季最高位の9位でフィニッシュしている。ドライバー人生の分岐点を前に,失った勢いを取り戻すべく,松浦の奮闘が続く。

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2006年11月14日 (火)

厳しきアメリカン・ドリーム

 アメリカは「人種のるつぼ」と言われる。そこでは多種多様の民族が暮らし,様々な文化を築いている。多くの移民を受け入れてきた国であるが故に争いも絶えなかったが,そこで実力が認められれば,どんな人種であっても成功への階段を駆け上がることができる。「アメリカン・ドリーム」と言われる所以であろう。モータースポーツの世界でも,成功を夢見て多くの人々がアメリカに渡った。かつてアメリカ以外は中南米からの参戦がわずかにあったCART(現IRL&チャンプカー)にも,ヨーロッパや日本からの挑戦者が増え,今ではすっかり国際的なカテゴリーとなった。無論,勝者より敗者の方が多いが。

 しかし,アメリカン・モータースポーツの中で最も人気のあるカテゴリーは,なんと言ってもNASCARである。その人気はMLB(野球),NBA(バスケットボール)と並び,NFL(フットボール)やNHL(アイスホッケー)を凌ぐ勢いだという。そのNASCARでも最も権威のあるネクステル・カップへ,一人の元F1ドライバーが参戦する。今シーズン途中でF1を電撃引退した,ファン-パブロ・モントーヤである。チップガナッシは最終戦ホームステッドに,モントーヤをエントリーしたことを明らかにした。しかし実際にレース出場するかは,今のところ未定という情報もある。もし出場した場合,後方グリッドから「コロンビアの暴れん坊」がどこまで戦えるかに注目が集まる。

 その一方で同じくNASCAR参戦が噂されていたジャック・ビルニューブは,来シーズンの行き先が不透明になっている。ブッシュシリーズに参戦するラウシュ・レーシングと契約交渉をしていると言うが,来季の参戦は難しい状況だ。CART時代の古巣であるチップ・ガナッシと契約したモントーヤとは異なり,NASCARへの足がかりがないビルニューブにとって,契約交渉は思いの外難しいものなのかもしれない。NASCARは他に類を見ないある種独特のカテゴリーである。仮に参戦できたとしても,CARTやF1でチャンピオンとなったビルニューブでも,そう簡単に成功するとは限らない。

 最後にアメリカン・モータースポーツに挑戦する日本人ドライバーの話を。現在チャンプカー・NASCARに参戦している日本人ドライバーはいないが,IRLにはスーパーアグリ・フェルナンデスレーシングから出場し今年で3年目を終えた松浦孝亮が,唯一レギュラードライバーとして激戦を戦っている。4年目となる来季は,2001-02年のチャンピオンチームであるパンサーとスーパーアグリがジョイントした,スーパーアグリ・パンサーレーシングからのエントリーとなる。速さは見せるもののなかなか結果に結びつかなかった松浦も来季は正念場。新体制となっても結果を残せないようなら,ARTAも次のドライバーを捜すことになるだろう。F1も厳しいが,アメリカン・ドリームも厳しい・・・。

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