2007年2月14日 (水)

嵐を呼ぶ?STR2

 テストとは,今まで机上で計算してきた理論を実践の場で試すことにより,様々な問題点を洗い出し,来るべき本番に備えるものである。テストならばいくら間違いを犯そうが,まだ修正が効く。本番ではなかなかチャレンジできないことでも,テストならばトライすることもできる。毎年オフシーズンは,非常にに多くの合同テストが行われるが,今季ほど混戦を予感させるテストはないだろう。ワンメイクとなったタイヤの影響もあり,各マシンのタイムが非常に拮抗していることもそうだが,どのチームも信頼性を確保しきっていないことが,単純な速さだけでは予想できない状況を生み出している。

 さて,このオフシーズンの話題を独占していた,SAF1とトロ・ロッソのシャシー問題だが,ついにその一つであるトロ・ロッソが,ライバルのひしめくスペイン・バルセロナで,「疑惑の新型車」STR2を公開した。姿を現したSTR2は大方の予想通り,外見からはレッドブルRB3とどこが異なるのか全く分からないほど,瓜二つのマシンとなっている。このSTR2は走りではなく論争で,嵐を呼ぶことになるのは間違いないだろう。もちろん搭載しているエンジンの違いもあり,細部には異なる部分を見つけられるのだろうが,それを以て「STR2とRB3は,同じマシンではない」とゲルハルト・ベルガ/共同オーナーがいくら主張しても,周囲が納得できるものではないだろう。

 新型車の公開と併せて,トロ・ロッソは,今季のドライバーとしてヴィタントニオ・リウッツィを起用することを明らかにしている。トロ・ロッソで2年目のシーズンを戦うリウッツィは,早速STR2のシェイクダウンを行う予定であったが,テスト終了直前にコックピットに乗り込んだものの赤旗が出てしまい,結局初走行は明日にお預けとなっている。一方で,もうひとりのドライバーは,依然として未定とされている。しかし,チームと交渉をしていた前スパイカーのティアゴ・モンテイロが,「残念だけど,僕が今季F1で走る場所はなくなった」とシート獲得競争に白旗宣言をしたことから,契約交渉が大詰めとなっている,スコット・スピードの続投が最有力と見られている。

 トロ・ロッソがSTR2をデビューさせたことにより,問題視されている「カスタマー・シャシー」に対して,「実物を見てから,調停に持ち込むか否かを決める」としていたスパイカー&ウィリアムズの反応が気になるところである。今後トロ・ロッソは,ライバルチームの厳しい批判にさらされるだろうから,それに対し「引き返したくても引き返せないところまで進んでしまった」と,開き直りの境地に達しているベルガー氏が,どのように反論してくるのかも興味がある。これで新型車を発表していないのは,SAF1を残すのみ。今更じたばたしても仕方ないだろうから,大人しく成り行きを見守るしかないか。

参照リンク:@nifty F1通信 

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2007年2月 8日 (木)

ベルガーの自信は何処から?

 ルールに対して従順である者と,そうでない者がいることは,どの世界にも共通することだろう。いくらルールを決めても,その内容をお互いが都合のいいように解釈すれば,同じ文言を巡って全く正反対の議論をすることになる。昨日も書いたが,コンコルド協定は,全ての署名者の共通認識を得ているわけではないようだ。SAF1とトロ・ロッソのシャシーを巡り,スパイカーやウィリアムズがまだ見ぬ「カスタマー・シャシー」の違法性を訴えている。その中にあって,未だに来季の体制を決めかねているトロ・ロッソのゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは,自チームの合法性を確信しているようだ。

 ベルガー氏は,「法的側面やFIAの側面,コンコルド協定の言い回しも慎重にチェックした」と語り,規約の範囲内でマシン製作を進めていることを主張している。「規約の条文に従わないところは少しもない」と,あくまで強気の姿勢を示すベルガー氏だが,果たして彼の自信は,何処から出てくるのだろうか。コンコルド協定の規約に抵触しないよう,SAF1がかなり複雑な製造方法を採っているのに対し,トロ・ロッソの新型車STR2は,レッドブルのRB3を,フェラーリ・エンジンの搭載に合わせて改造したものであると言われている。もし,スパイカーのコリン・コレス代表が言うように,コンコルド協定が知的所有権の共有を禁じているとすれば,このマシンは完全に違法となる。

 いくらレッドブル・テクノロジーズという「独立企業」を立ち上げても,RB3と同じ基本設計のSTR2を走らせることはできない。それは理解できるのだが,ここで大きな疑問が生まれてくる。そもそもコンコルド協定が知的所有権の共有を禁じ,第3者企業が製造したマシンでの参戦ができないと言うのであれば,「独立企業」が製造したシャシーを使ってるレッドブルの参戦も,違法であると主張すべきではないだろうか。しかし,コレス代表の目は,レッドブルには向けられていない。「コンストラクターは単数形,すなわち知的所有権は共有できない」というコレス代表の発言は,コンストラクターの定義に対する彼なりの解釈であるのだが,それ故大いなる矛盾を孕んでいるとも言える。

 一方,SAF1の鈴木亜久里代表は,「ホンダの手を借りているが,新型車は100%SAF1」とし,佐藤琢磨も,「マシンをチームで製造しなければならないことは知っている」と語っていることからも,SAF1は第3者企業の製造したシャシーによる参戦が,違法であることを十分認識しているようだ。これが,「独立企業」レッドブル・テクノロジーズを介してマシンを製造している,トロ・ロッソと大きく異なる点である。ベルガー氏の強気発言が,彼なりのコンコルド協定解釈に基づくものだとすれば,コレス代表を黙らせるほど説得力のあるものでなければならない。見解の相違では済まされないぞ。

参照リンク:@nifty F1通信 

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2007年1月12日 (金)

シャシー問題へのアプローチ

 どんなに議論を重ねても,お互いの主張が食い違ったままでは,いつまでたっても問題が解決することはない。そのため多くの場合は,一方或いは両方が歩み寄り,妥協案を出すことで解決への道を模索するととになる。2007年シーズン開幕まで2ヶ月に迫った段階で,F1シーンにも未だに解決されていない問題がある。トロ・ロッソとSAF1のシャシー問題である。12月8日にモナコで行われた代表者会議では,最終的な結論が出ず,スパイカーを始めとする反対チームは,場合によっては調停持ち込む姿勢のままである。これに対するFIAからの公式な見解は,未だ示されていない。

 この問題に対する両チームのアプローチは,微妙に異なっている。まずSAF1は,本田技研が所有するRA106のデータを元に,栃木研究所が製造したと思われるインテリムカーを,昨年末からオフシーズンテストに投入している。しかし新車SA07は,デザインを「PeeJayUU」というポール・ホワイト氏が率いる企業に委託し,栃木研究所の協力を得た上で製作する手法をとっている。これは165人という少数で構成されるSAF1が,独立したデザインチームを持っていないことを考えれば妥当なことである。最大のポイントは,SA07がRA106ベースでないことを明らかにすることだが,我々がその詳細を知るには新車発表を待たなければならない。

 一方のトロ・ロッソは,もっと直接的なアプローチを採っている。天才デザイナー,エイドリアン・ニューウェイ氏の所属するレッドブル・テクノロジーズという独立企業により製作されたマシンを,兄弟チームのレッド・ブルと共に走らせようと目論んでいるのだ。チームの主張は,「レッドブル・テクノロジーズはコンコルド協定に含まれていない独立したコンストラクターであり,そこで製造されたマシンを複数のチームが使用することは,何ら問題がない」というものである。ゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは,この計画がFIAにより承認されることに自信を持っているようだが,コンコルド協定の行間を読んだこの「裏技」を,FIAやライバルチームがそう簡単に承認するとは思えない。

 一部海外メディアは,「ホンダ陣営もレッドブル陣営と同じ手法を採っている」と報道している。しかし,レッドブル陣営のやり方をホンダに置き換えるのなら「本田技研の製造したシャシーを,ホンダとSAF1が使用する」と言うことになる。ホンダ陣営はここまで直接的な手法を採ってはいない。万が一に備え,「マーク・プレストン/テクニカル・ディレクターがSA06Bを改良している」という話もあるが,どこまで信用できる情報かは怪しい。トロ・ロッソのSTR2も製作が遅れているようだが,遅くとも2月上旬にはデビューすることになるだろう。今更ダメと言われても,どうしようもないだろうなぁ。

参照リンク:@nifty F1通信

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2006年12月12日 (火)

井出有治の居場所

 完成された出来合いのものには,それほど愛着が湧くことはない。しかし,自ら手間暇かけてつくりあげたものには,人には理解できないほどの深い愛着が湧く。「出来の悪い子ほどかわいい」とは,よく言ったものである。さて,F1のオーナーにとって,ドライバーとはどんな存在なのだろうか。そのドライバーが誰であるかにもよるのだが,「数多くある歯車のうちの一つ」と考える者もいれば,「チームにとって欠かせない存在」と考える者もいるだろう。差詰めウィリアムズのフランク・ウィリアムズ代表などは前者で,フェラーリのジャン・トッドCEO兼マネージング・ディレクターなどは後者だろう。

 その中に於いて,トロ・ロッソのゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは,どうやら前者にならざるを得ないようだ。来季も継続と見られていたビタントニオ・リウッツィ&スコット・スピードのシートが,流動的になっている。その原因はベルガー氏がレッドブル側から,独自のスポンサーを獲得するように圧力をかけられている事にある。そのため,ナレイン・カーティケヤン,ティアゴ・モンテイロ,ロバート・ドーンボスら,リウッツィ&スピードより多くの持参金を持ち込んでくれるドライバーとも交渉を継続していると見られてる。さらに,3年連続チャンプカー王者のセバスチャン・ボーデにテストの機会を与えるなど,トロ・ロッソは「ドライバー=歯車」の色合いが強くなってきている。

 一方でSAF1の鈴木亜久里代表は,佐藤琢磨を「チームにとって欠かせない精神的支柱」と評することからも,間違いなく後者だろう。琢磨も自身のHPで「全員が結束力を持って頑張ることができた」と,チームリーダーとして激動の1年を振り返っている。しかし,亜久里代表の井出有治に対する「将来F1ドライバーに成長すると期待している」という考えには,些か疑問を感じざるを得ない。F3で結果の残せなかった井出にFDのシートを与えるなど,井出は亜久里代表が以前から目をかけてきたドライバーである。亜久里代表自身,F3で実に9年間の足踏みをした経験があり,思うような結果を残せなかった井出に,自らの過去を重ね合わせていたのかもしれない。

 その亜久里代表が未だに井出を庇い続けるのは,彼に対して「申し訳ない」と思う気持ちが強いからだろう。「井出をF1に昇格させるのは少し時期尚早だったと思う」と言う発言からも,その想いが伝わってくる。満足にテストもできずF1に飛び込んだ井出には,同情の声も多かった。しかし,与えられた環境の中で結果が残せなければ,F1ドライバーとしての未来はない。「お膳立てを整えてもらわなかったから実力を発揮できなかった」のならば,それこそが井出最大の弱点である。確固たる地位を築いた琢磨と,将来性のある山本左近がSAF1にいる以上,井出の居場所はもうないだろうなぁ。

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2006年12月 9日 (土)

5年先より気になる来年

 よく「来年のことを言うと鬼が笑う」と言われるが,広辞苑によるとそれは,「実現性のないことや予想のつかないことを言った時にからかう言葉」とされている。従って,実現可能な事項に対して,この言葉が使われることはない。8日にモナコで行われたF1代表者会議で,今後5年間に渡る検討課題が話し合われた。日進月歩のF1界に於いて,来年どころか5年先のことまで議論することは容易なことではない。コスト削減,地球環境への配慮,新しい技術への挑戦など,F1が抱える課題も多い。しかし,長期的な視点でその在り方を議論していかなければ,F1の生き残る道がなくなってしまう。

 とは言え私などの凡人は,5年先のことより来年のことの方が,どうしても気になってしまう。各チームの代表が集まったこの会議では,渦中のカスタマーシャシー問題も討議された。スパイカーのコリン・コレス代表が提案したこの件については,3時間以上もの議論がなされたという。その結果やはり複数のチームが,トロ・ロッソとSAF1のやり方に難色を示したようだ。最終的な解決策は出なかったものの,両チームに対しては検討すべき妥協案が提示されたという。その詳細は不明だが,英AUTO SPORTは,「来季のコンストラクターズ・チャンピオンシップのポイントや,FOMからのテレビ収入と旅費の放棄に同意することであると」であると伝えている。

 特に上位チームの首脳陣は,SAF1よりもトロ・ロッソの姿勢に懸念を抱いているという。それはそうだろう。ゲルハルト・ベルガー/共同オーナーは否定するものの,トロ・ロッソが来季走らせようとしているSTR2は,レッドブルのエイドリアン・ニューウェイ/チーフ・テクニカル・オフィサーがデザインした来季用マシンRB3のリアエンドを,フェラーリ・エンジンが搭載できるように改造したものであると言われている。このマシンはどう考えても「型落ちシャシーの流用」などではなく,より競争力のある「新型シャシーの流用」になる。これは他チームに警戒されて当然だろう。

 この問題をより複雑なものにしているのが,マシンの「知的所有権」である。しかし,それ以上に大切なことは,「そのマシンを誰がデザインしたのか」をFIAに対して明らかにすることだという。2004年にザウバーが,フェラーリF2003-GAそっくりのC23を走らせ「青いフェラーリ」と揶揄された。しかし,彼らはFIAに資料を提出し設計者を明らかにすることで,この問題を解決している。そしてそれと同じ事を,トロ・ロッソも行おうとしているのだろう。レッドブル&トロ・ロッソが,FIA&FOMと深いつながりを持っているのは公然の秘密である。そうなると残るはSAF1。何だか雲行きが怪しくなってきたなぁ。

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